Magazinehouse Digital Gallery vol. 18 1988年6月『Hanako』 創刊号より
その2 リージョナル情報

(2011.08.15)

前回は『Hanako』がキャリアOLをターゲットにしていたことを中心に書いたが、今回はもうひとつの大きな特徴、リージョナル(地域)情報誌としての『Hanako』にフォーカスを当ててみたい。創刊編集長・椎根和の『銀座を変えた雑誌Hanako !』によれば、「リージョナル」という着想は、当時副社長だった木滑良久によるものだったという。当時のマガジンハウスの雑誌の売れ行きを見ると『POPEYE』『BRUTUS』『Olive』は首都圏での売上げが突出し、3誌とも6〜7割を占めていた。また、ロンドンには『Time Out』、ニューヨークには『New York』、パリには『Paris』など、世界の大都市にはレストランやコンサート情報が売り物の情報誌が存在するということ。さらに、バブル経済で首都圏の若いビジネスマンの所得がアメリカのそれを上回ったという時代背景。『Hanako』は、そうした事情から、首都圏限定の情報誌というコンセプトを導き出した。

ではそのリージョナル情報を創刊号ではどのように扱っていたのか。こうした情報はその後キラーコンテンツになるが、この時点ではまだその実感はないようだ。拾ってきた情報を週刊誌のように、1〜2p単位の記事として取り上げている。この号で『Hanako』がピックアップしたのは、まず舞浜のホテルのオープン。ここではニュースとして見開きで紹介しているが、いまなら少なくとも8ページ以上のボリュームで「舞浜のホテル完全ガイド」として、何から何まで写真で見せるだろう。次に「デパ地下」情報。この号では、お弁当のケータリングとサラダ、「ジョアン」のパン。「自分の住んでる街を愛してんだ」という企画は、街の小ネタ集。このコラム構成で見開き5〜6店のレストラン情報を収納するスタイルは、後の『Hanako』の代表的なデザインフォーマットになった。また「今夜はココで食べる、明日は……。」というページは海外のリージョナル誌に倣ったレストランの広告企画だった。こんな形で『Hanako』は、「ホテル」「デパ地下」「パン」「グルメ」などを、得意分野として扱っていく。

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Magazinehouse Digital Gallery 過去の名企画をライブラリーから

1945年創刊の『平凡』に始まり、『週刊平凡』、『平凡パンチ』、1970年代になると『anan』、『POPEYE』、そして『BRUTUS』『Olive』『Hanako』、最近では2011年3月創刊の『Lips』まで、マガジンハウスは時代とともに歩み、時代にあった雑誌を作り続けてきました。その間、それぞれの雑誌ライフスタイルを体現した読者たちは「みゆき族」「アンノン族」「ポパイ少年」「ハナコ族」などと呼ばれ、時代を象徴する存在となりました。『Magazinehouse Digital Gallery』は、マガジンハウスの豊富なライブラリーの中から、過去の雑誌の名企画を拾い出し、資料画像として限定公開する企画です。すでに入手困難となった創刊号、また世間を騒がせた名企画など、興味深い企画を順次公開していく予定です。