さむらいペンギン 50 101回目の告白

(2013.07.04)

◆ 50話 「101回目の告白」

大晦日のモーパッサンとスナギモ
の死闘から一週間がたった。

 スナギモは達磨斬りでうけた傷が
癒えるとネギマ、八郎、九兵衛、
三平を連れ、日本へと帰って行った。

こうして、プチプチ島に平穏な
日々がもどった。

 

モーパッサンは一匹、
氷の頂の上で、
遠く南極大陸を見つめていた。

ハァー。
彼はため息をひとつつくと、

「何やってんやろう……
むっちゃ一生懸命に修行して…
スナギモに勝って…
勇者になったんやけど……
俺…
一年前とあんまり変わって
へんやん……
結局、ナタリーちゃんには…」

昨夜の回想——

満天の星空のもと、
見つめあうモーパッサンと
ナタリーちゃん。

「モーパッサン…
     体の方は大丈夫なの?」

「ナタリーちゃん! 全然平気!
ムッチャ元気やで!!
ナタリーちゃん…
その…
あの…僕…勇者にもなれたし、
今日は!
101回目の告白や!!

ナタリーちゃん…
   好きやねん!!」

「無理!!」

「えっ!!!!!
なんでなーーーーん!!??
僕、スナギモに勝って!
勇者になったやん!!!!」

「そうね。
あの時のモーパッサンは素敵!
結婚してもイイって思ったけど……
もうすぐ私たち、
高校三年生でしょ。
受験だし…
あなたと付き合ったら…
きっと……きっと…
うっとうしい!!
…と思うの」

昨夜の回想、終わる——

「ほんま女の子って…
      酷いわ……」

モーパッサンは涙を拭くと、
「はぁ?明日から試験や。
留年せえへんように…
      頑張ろう!」

数日後、再び氷の頂き——

モーパッサンは氷の頂の上で、
遠く南極大陸を見つめていた。

ハァー。
ため息をつくと、

「あかん!!
試験…
全然出来んかったーやーん!
このままやとホンマに、
去年と変わらへん…
また高校二年生や……
もう…
俺に残されている道は…
ひとつだけ……
 運命のジャジャ
  ジャジャーンだけや!!」

さらに数日後、プチプチ港——

ジャジャジャ♪
     ジャーン? 

「僕、モーパッサンは!
この連絡船に乗って!!
南極大陸に!
修行の旅に出まーす!!」

「モーパッサン、元気で!!」

「モーパッサン、
南極からママに手紙を頂戴ね!」

「モーパッサン!
来年、あたしも南極の大学に入試を
受けに行くから、
その時に会いましょう!!」

「このシゲロウ!
手取り足取りナタリーちゃの
個人授業をしてやるから、
心配御無用!! ゴム無用!!」

「モーパッサン、
勇者に疲れたら戻って来いよ!」

「モーパッサン…先日のテストで、
ギリギリ留年がまぬがれたという
のに…残念です!」

モーパッサンは別れの悲しさと…
このタイミングで!
留年をまぬがれていた事実
を知ったものの後には引けない
状況に——

「さよならー!!!!
  物凄い勇者になって!
   帰ってくるでぇ!!!」

と言いつつ、涙した。

ボボボボ……

ボボボボ……

ボボボボ……

南極連絡船の甲板——

「とは言ったものの……
南極に着いたら…何しよ。
何も考えてへんかった。
とりあえず…
とりあえず…バイトかな?」

 「相変わらずじゃな、
      モーパッサン」

「えっと、誰…ですか?」

「わしじぇ、わし!

  デェマ師匠じぇ」

「あっ!!
  デェマ師匠!!
いやぁ!!
  デェマかせ野郎!!!」

「キツイ言い方するのう……
それよりじゃ!
今、南極大陸が大変なことになって
おるんじゃ。
モーパッサンよ…
ワシに質問したい事は山ほど
あるじゃろうが…モーパッサン。
ワシと一緒に!
南極大陸を救いに、
   いこうじぇ!!!
真の勇者の力
    が必要なんじぇ!!」

「えっ! いっ?
あっ…!?
    う? うん!! 
おおおっ……
おおっ!  
デェマ師匠!
僕は真の勇者になるために!!

南極大陸を!
救いに行きまーす!!!」

こうして——
ペンギン勇者モーパッサンの
新たな旅が始まったのである。

 「さむらいペンギン」
   第一章 完