さむらいペンギン 02 ペンギンやん

(2012.01.23)

◆02「ペンギンやん」

ドボォーン!

失恋のショックで、海に飛びんだ
モーパッサン。彼は沈みながら、
「100回もフラれるなんて…
俺なんか死ねばいいねん」

沈む。
沈む、モーパッサン。
「あぁ…身体が沈んでく…」

沈む。
まだ沈む、モーパッサン。
「あぁ…心も沈んで行く…」

沈む。
さらに沈む、モーパッサン。
今までのペンギン人生が、走馬灯の
ように駆け巡る…

「まだ…死なへんな…」

「あっ…」

「そういえば…」

「そういえばっ…」

「そういえば、俺…」

「ペンギンやん…」

「そら死なんで…」
そう言うと、己のアホさに涙を流す
モーパッサン。

キラリ!

 モーパッサンの涙が光ったわけで
はない。
海の遥か先で何かが光ったのだ。
モーパッサンは涙を拭って、目を凝
らした…
すると暗い海の奥から、何かがこち
らに近づいて来るではないか。

「あ…」

「いっ」

「うっ!えぉ!!」

 
 なんと、見たこともないような超
巨大メカジキが、これまた超巨大な
吻で襲いかかる!
「チャンス!
    これで死ねるやん!」
目の前に、巨大な吻が迫りくる!!

「助けてぇー!」

どうやら彼に、死ぬ気はないらしい。
その背後から、

ジャキン!
   
巨大な吻が、モーパッサンの頬をか
すめる!

「ホンマに死ぬやんか!」

 必死に逃げるモーパッサン。
時速100キロで泳ぐメカジキから逃
げることは不可能。
だが、氷壁に小さな隙間を見つけ
ると、すぐさまそこに飛び込んだ。
ジャキンー!
間髪のところで、メカジキの吻をか
わす。
 モーパッサンは、隙間の奥に身を
潜めた。
隙間が狭いために、巨大なメカジキ
は入ってこられないようだ。

「ふーっ、
  永遠の16歳になるとこやった…」

安堵の息をもらすモーパッサン。

ガタンっ!

何かを蹴
飛ばした。
「なんやこれ…」
「これ…
人間の頭ぁ!!」

ジュルルルルルッ。
「ウッソーん!」
メカジキが隙間に!
無理やり入り込んできたぁ!!!

ガシュ!!

巨大な吻が、
モーパッサンに突き刺ささ
る!!!