さむらいペンギン 03 ボタペン

(2012.01.30)

03 「ボタペン」

メカジキは小腹を空かせ——
夜食にありつきたいぜ!
そんな事を思っていたら、目の前に
モーパッサンが沈んできたのだ。
まさに、棚からボタペン。
そのボタペンはメカジキの一撃で!

永遠の十六歳に、
なってしまったようだ……

 メカジキは、そのボタペン
を三枚におろしてしてやろうと、
フン!
フン!
吻を抜こうとしたが——
あれ?
俺様の吻が抜けないじゃねーか?
このペンギン、カチカチじゃねーか!
フン!
フン!
怒ったぞ!
もっと、強く! 激しくいく!
おら!
強引に吻を引き抜く、

メキベキっ!

 なんとその音で!
永遠の十六歳、モーパッサンの目が
明いたではないか!
彼は、朦朧とした意識の中で——
天国……やないな。
ほな……
ここは何処……や?
私は誰……や?
うわぁ!
なんや!
目の前で、メカジキが悶えとるやん。
ムッチャ、大迫力!
おっ!
よう見たら、あのでっかい吻!
くの字に曲がっとるやん!
どうやら……
永遠の十六歳になってへんみたいや。
こいつのおかげや!

そう、さっき蹴飛ばしたこいつ。
こいつの硬い部分で、メカジキの
一撃を……

受け止めたんや!
でも、そん時の衝撃で、気を失って
もうてんけどな。

 せやけど、どうしよう……
まだ、アイツは悶えとるなぁ。
むっちゃ怖いねんけど……

ソロリ。
ソロリ。

メカジキのヤツ、まだ気いついてへ
ん、いける!
このまま……
このまま……

   ジャキン!

曲った吻が頬をかすめた。

 うわぁ!!
もう、あかん!
こうなったら!
こうなったら!!

バコーン!

殴ぐったった!
もう無茶苦茶や!
鉄の硬い部分で殴りつけたんや!
メカジキも必死に暴れよるが、
狭いから身動きがとれへん。

「1!」バコン!

「2!」バコン!

もう、死ぬ気で殴ったった。
100回フラれたんや!
せやから、100回殴ったるねん!

「24!」……
「49!」……
「78!」……
なんでか……
ぶん殴りながら、親父の事を思い出
した。
「89!」……「92!」……
銛一本だけで、巨大クジラを追って
海に消えた伝説の漁師なんでか……
ぶん殴りながら、親父の事を思い出
していた。
「89!」……「92!」……
銛一本だけで、巨大クジラを追って
海に消えた伝説の漁師
”ムーパッサン”

親父の……親父の……
「クジラに比べたら……97」

「お前なんか! 98!」

「 お前なんかぁ! 99!」

「ちっこいでぇ!!!」
バコォォーン!

こいつで100回目やぁ!

 メカジキは痙攣すると……
バジュリリリ!

くねくねと逃げて行った。

「ハァハァ、やったでぇ!」
バタン。
モーパッサンは、ぶっ倒れた。
身体はパンパン。
もう、動けない。
そんなモーパッサンだが、
「あーっ、しんどい。せやけど、
せやけど……せやけどな」

「この話!
明日、ナタリーちゃんに
    話せるやぁーん!」

「ほな、
 帰ろう」

ボタペン、
モーパッサン。
食えない男である。