さむらいペンギン 14 発破文踏み

(2012.04.23)

◆14 「発破文踏み」

+++秋。
それは、地獄の季節。

「ええっ、僕!
 留年なんですかぁ!?
  アレハンドロ先生!!」

「 前期の試験、全て落第。
なのに、夏休みの補習にはこない。
夏休みの宿題もしてこない」

「僕、勇者になるために、修行して
たんです!」

「良かったですね。
モーパッサン、留年をしたくなかっ
たら、次の試験で全科目60点以上
を取ることです」

「ろ、六十点……っ」

「あっ、そうそう。
成績には直接関係ないですが、
先日の南極共通実力試験で、
モーパッサン。
あなたは二番目でしたよ」

「えっ、 ほんまに!
      やったー!!」

「下から……
   下から……二番目」

「上から……上から……二番目」
プチ高の悩めるスィートハート——
それが俺、シゲロウ。

 
 先日の南極共通実力試験では、
残念ながら二番に甘んじた。
 だが……
ほぼ全ての超一流大学でA判定。
そう、この知性が俺の悩み。
来年、どこの大学に進学するかで
悩んでいるのだ。
 ハーバード、オックスフォードは
意外とペンギン枠が少ない……
やはり、ペンギンエリートを目指す
なら、南極究極大学……かぁ。

う〜む……兄、シゲールが昔住んで
いた、日本も興味深い。
それなら、東京大学のペンギン枠
も……はっ、 日本といえば京都。
最近、京都大学ではペンギン枠が
大幅に拡張されたと聞く……
放課後に祇園でパァーッと、それも
ありだ、キラーン。

 しかし、なんだぁ……
どの超一流大学に進学するかで迷っ
ている、この詰め込み教育の申し子、
シゲロウ様を差し置いて!
南極共通実力試験で一番になった
野郎は……一体何ペンだぁ?

 「あっ、ナタリーちゃん!」

ピョコり。

「はぁ……
南極全土の高2ペンギンの中で、
二番目にアホなペンギンやなんて。
まあ、俺よりアホなペンギンがいる
だけましか… 」

そこにデェマが、飄々と現れた。
「モーパッサン、今日は元気がない
の。どうしたんじゃ?」

「デェマ師匠〜
  聞いてくださ〜い!!」

 モーパッサンの話を聞いた
デェマは——
「ブハッハッハ!
下から、にぃ、二番目!
アレハンドロ先生も、エグいのぉ」

「師匠、ほんまに深刻なんや。
も、もう…
勇者の修行もできへんかも…
…ウ、ウウ、ウワァーン(泣)」

「ウ、ウザいのぉ……パッサン。
本当の勇者は、文武両道のタイム
マネージメントも出来んといかん
のじゃ」

「タ、タイムマ…シーン?
えっ、なんですか? それ?」

「いろんな意味で……
    ツッコミにくいじぇ!
まあ…聞くんじゃ。
ユーは、”桜吹雪斬り” “百海斬り”
をマスターし、竹刀を振る事は出来
るようになったじぇ。
だが、それだけでは本当に”斬る”
とはいえん!
モーパッサン、少し下がってみぃ。
そう、そこじゃ。
そこからワシを米闘勉で打ち据えて
みるんじぇ!」

「えっ、師匠……イイんですか?」

「前にも言うたじゃろ、ワシはこの
四十年間、負けたことがないと」

「ほな、思い切っていくでぇ!」

    ブーン!
  

ペシ!

        「イテっ!」
     

「いちぇちぇ……
デェマ師匠、なんで簡単によけれ
たんですか?」

「その動きでは、ワシじゃなくても
よけれるじぇ。
ユーの振りは、かなりのもんじゃ!
しかし、身体が浮いとる。
これでは斬る威力もスピードも半減。
動きはじめる動作も大袈裟じゃ。
“もしもし、モーパッサンでっせ。
ほな、今から攻撃しまーす!”と、
相手に教えているようなもんじぇ。
てなわけでぇ……
モーパッサン、試験で60点以上を
取るまで、米闘勉を没収じゃ」

「えーっ!
師匠、じゃ次の修行はどないするん
ですか?」

デェマは、秘伝の書”楽しい剣道”を
取り出すと、
「勇者の秘技〜その参
    ”発破文踏み”じゃ」

「はっぱ…ふみふみ?」

果たして!
モーパッサンは進級出来るのか!?
そして!
新たな修行”発破文踏み”とは!?