さむらいペンギン 34 行方不明

(2012.10.22)

校長室の椅子に座る謎の老紳士…
一体、彼は何者なのか!?

「ワシ…か?
ワシは…プチプチ高校の……
  ジェローム校長じゃ」

「えっ! プチ高の校長は、
  デェマ校長やでぇ!?」

「そのデェマ校長なんじゃが……
      行方不明なんじゃ」

「ホンマですかぁ!!」

ゴホン。
ジェローム校長は咳をひとつ払うと、
「そのデェマ校長。
何か手違いで、ワシより半年以上先
にプチプチ高校に来たみたいじゃな。
じゃが、本当はワシが!
春からプチプチ高校の校長に
なる予定だったんじゃ!!

そうそう、ワシと同じ船でこの島
に来たえらいデカイペンギン。
船首が傾くほどデカイ奴で……
スナニモ……スナジオ…」

「それ、スナギモとちゃいます!」
と、モーパッサン。

「そうそうスナギモ。
そいつもデェマ校長を探しに来た
ようじゃ。
そのスナギモとやらは2週間後——
次の連絡線で日本に帰るようじゃ
から、それまでにデェマに会って、
いろいろ用事を済ますとか……
なんとかいうてたな。

 

そもそも、そのデェマ校長——
校長かどうかも良くわからない
怪しいペン物みたいじゃ。
まあワシも、そのデェマに会って
いろいろと聞きたいことがあるん
じゃが……
今、一体どこにいるのやら?
自宅も、もぬけのからじゃったから
な…

あっ!

君は……
モーパッサンというペンギンを
知っとるかの?」

「ぼ、ぼくがモーパッサンです…
  どないしたんですか?」

「これは奇遇じゃ!
デェマの自宅に、唯一残されて
いたのが…この本なんじゃ。

で、一緒に添えてあったメモに——
モーパッサンに返してくれ、
と書かれておったんじゃ」

 モーパッサンは興奮のあまり、
しばらく声が出なかった。
そして、ようやく口を開いた。

「た…楽しい…剣道。
こ、これをぼくが…
ぼくがもらって…良いんですか?」

「ふむ?
それは…君が……
貸していたのではないの…かな?」

「えっ!
あっ、ハイそうです!!
はは…じつは僕、
この本を受け取りにきたんです…」

「それなら良かった。
君…もしデェマを見かけたら、
私にも教えてくれよ」

「は…はい……」

モーパッサンは”楽しい剣道”を
受け取ると、
校長室から足早に出て行った。

”楽しい剣道”を抱えて、廊下を歩く
モパッサン——
デェマ師匠、どこにいるんやろう。
なんで?
スナギモがデェマ師匠に用事が…
心配や……
せやけど……
せやけど……
今は、まずこれや!
デェマ師匠が、絶対に見せてくれ
へんかった秘伝の書!
”楽しい剣道”が!
この僕の手にあるや−ん!!
うわぁぁぁ!!!

落ち着け落ち着けモーパッサン。
落ち着くんや……
落ち着くんや…
落ち着くんや…
落ち着くんや…
落ち着くんや…
落ち着くんや…
落ち着くんや…
落ち着くんや…
落ち着くんや…

フーッ。

モーパッサンは、煌めく海を見つ
め深呼吸をついた。

 少し気持ちが落ち着いたパッサン。
”楽しい剣道”に挟まれているメモを、
取り出し、開いてみた。

「 この本は、モーパッサンに
  返して下さい。

 
  親愛なるモーパッサンへ——
  

 とんでもない運命の
  ジャジャジャ♪
    ジャアーン!!
 
 そんな時でも楽しめ。
 それが真の勇者じぇ。

      デェマ師匠より  」

きょとんとするモーパッサン。

「とんでもない運命の…
ジャジャジャジャーン…
楽しめ…それが…
真の勇者じぇ……
なんや…わけわからんで……
わからん…
わからん…
わからん…
わからん…

でも…
このわからんわからんを…
この”楽しい剣道”が!
きっと…教えてくれるはずや!!」

そう言うと、”楽しい剣道”の封を
解いて、恐る恐る…
門外不出の秘伝の書!
”楽しい剣道”を、

開いた!!