さむらいペンギン 39 ハーペンダッツ

(2012.12.11)

◆39 「ハーペンダッツ」

27日——

プルプル……

俺はイケメン剣道コーチ兼、
みんなのスーパアイドル!
シゲロウだ!!

なぜ俺が!!
プルプルしてるかと言うと……

achiのリーダードン・スナギモを
スパイしているからだ!
なぜなら!!
大晦日に行われる
”モーパッサンvsスナギモ”の試合で、
俺は大穴のモーパッサンに、
貯金のすべてを賭けたからだ!!

えっ、何だって?

何でイケメンで天才のシゲ様に、
そんなお金がいるのかって?

だって……俺。
  来年受験だし!

ウチは両親いない。
兄貴は雇われ店長。
大学の授業料なんて払えないっス。

だが!
モーパッサンが勝てば!!
俺様の貯金は3000ペン銀貨が、
60000ペン銀貨になる!!!!

60000ペン銀貨あれば大学の授業料
は工面出来るし、
高級マンションで連れ込み放題の
トレンンディカリスマ大学生に!
なることも可能じゃねーの!!

うひょー!!!

どれどれ、双眼鏡を——

あれ?
スナギモ……
なんか痩せたんじゃねーか…

…いや……アザラシか。
もっと下だな。

もうチョイ引いて
おっこれはこれは〜

昼間っからジャブジャブと、
立ち泳ぎ居酒屋かよ!
呑んだくれ野郎共が!!

まあいい。
ここは兄貴シゲール特製の集音機
”ジゴクイヤー”を使って、
呑んだ暮れのたわ言から、
勝利につながる情報を……

チュミーン〜
      ガッガガ
ガッ…ガッ…

「スナギモの兄さん?
やっぱり?デェマは?
どこにもいないようです?
八郎も九兵衛も三平も?
プチプチ島をくまなく捜索しまし
たが?
何の手がかりもありやせんでした?」

「ネギマよ?
ここらの海は沖まで行くとぉ……
凶暴なメカジキやシャチが多い
と聞いてるぜぇ。
島から出るにはよぉ。
二週間に一回しかこない連絡船に
乗るしかねえんだろぉよ??」

「そう?なんですが?
一体?デェマはどうやって?
島から出たのやら??
それとも?まだどこかに?
隠れているのか??」

「しかたねぇな?
ふ〜っ。
立ち泳ぎで呑んでると、血流が
良くなって…酔いが早いぜ…
じゃ次はよ、九兵衛!
デェマの集めいていた石コロ——
プチプチ石ってのは、
手に入ったのか?」

「へいっ! スナギモさん!!
島のペンギンの何匹かはその——
ペンペン石ってヤツを持っていた
ようですが……
そのペンペン石を全部!
デェマの奴が、
高級お取り寄せアイスクリーム
”ハーペンダッツ”一年分と
交換して、持ってたようです!」

「ハーペンダッツ一年分!!
なんちゅう贅沢な…つーか、
やべぇぞ!!
オメエら&俺!!!

デェマが見つけられんかったら、
せめて!
石コロだけでも日本へ持って
帰らんと……
田中の坊ちゃんは、
ともかく……

冷熱(さめあつ)の若頭に!
わしら首、跳ねられるぞ!!」

氷壁と欲望の間のシゲロウ——
スナギモのヤツ!
ビビッてるじゃねーか!!
冷熱の若頭…そいつ何者だ?

そんで、デェマのやつ…
プチプチ石を集めに、
わざわざ身分を装って、
このプチプチプチ島に来たのか?
あんな石コロに何の価値が……
ハーペンダッツ一年分どころか、
ハーペンダッツ一個分の
価値もねえぞ!?

ガガッ〜!!

「スナギモ兄貴!!
 ヤバイっすすす!!」
”ジゴクイヤー”から、
九兵衛の叫び!

シゲロウは——

慌てて双眼鏡を覗くと、
「げっ!
  なんじゃこれゃ!!」

一体!?
シゲロウは!!
何を観たのかあああああ!!!