『12 Rooms 12 Artists UBSアート・コレクションより』開催中 『東京ステーションギャラリー』に 12アーティストの12部屋。

(2016.07.08)
3Fのエド・ルーシェイのスペース。エド・ルーシェイは 1937年米国・ネブラスカ州生まれ。インクの代わりにフードや飲み薬を使うオーガニック・シルスクリーンなどオリジナルな手法のプリント作品が知られるアーティスト。
3Fのエド・ルーシェイの大きなスペース。エド・ルーシェイは 1937年米国・ネブラスカ州生まれ。インクの代わりにフードや飲み薬を使うオーガニック・シルスクリーンなどオリジナルな手法のプリント作品が知られるアーティスト。
フリンジカーテンで仕切られた12の部屋。

本格的な夏ももうすぐ。バカンスやちょっと一足伸ばしたお出かけに駅を利用する機会も多くなるこのシーズン、東京駅丸の内北口併設の美術館『東京ステーションギャラリー』で 9月4日(日) まで開催中の展覧会『12 Rooms 12 Artists UBSアート・コレクションより』が見応えたっぷりです。

UBSとはスイスのチューリッヒを本拠地にするグローバル金融グループUBS(UBSグループAG)でそのアート・コレクションの中から12人のアーティストをピックアップしました。

UBSアート・コレクションは民間企業のものとしては最大の所蔵数を誇り、日本では2008年『森美術館』で、今春『TOLOT/heuristic SHINONOME』でアニー・リーボヴィッツの新作写真コレクションが紹介されました。固定の美術館施設は持たず、各国の美術館やギャラリーを会場として世界を巡るスタイルで展示を行っています。

特に現代美術の名作が多いことで知られているUBSアート・コレクションですが、今回の展示では12のアーティストをフィーチャー、ひとりのアーティスト作品を1つのスペースに集めカーテンで仕切り、全12スペースを巡りながらそれぞれの世界と向き合うことができます。

エド・ルーシェイ『スタンダードのスタンド』1966年、リトグラフ、紙、©Ed Ruscha. Courtesy Gagosian Gallery UBS Art Collection
エド・ルーシェイ『スタンダードのスタンド』1966年、リトグラフ、紙、©Ed Ruscha. Courtesy Gagosian Gallery UBS Art Collection
異能のポップ・アーティスト エド・ルーシェイと
激しい具象の人、ルシアン・フロイド。

ギャラリーの3Fに4人、2Fに8人のアーティストのスペースがあり特に大きく設けられているのは日本では今までまとめて見られる機会の少なかった異能のコンセプチュアル&ポップ・アーティスト エド・ルーシェイと1980年代に活躍した具象絵画家ルシアン・フロイド。

3Fに最大スペースで展示のエド・ルーシェイは今回は過去最多28作品が一挙に公開。本展キュレーターの成相 肇(なりあいはじめ)さんいわく、デザイナーや写真家などから圧倒的な支持を受けている玄人好みするアーティスト。アメリカ西海岸的なポップな風景や、オブジェをモチーフにしながらも傍らに唐突にオリーブの実が描き込まれていたり、ハエがとまっていたりとぼけた持ち味のある作風で知られているそう。

2Fで大きくフィーチャーされているルシアン・フロイドはタッチが激しいタッチの具象のアーティスト。裸婦油彩画『大きなスー Large Sue(眠る労災保険管理官 Beautiful Supervisor Sleeping)』 が2008年、作家が存命中に行われたオークションとしては世界最高額の36億円で競り落とされたことで知られています。本展では大きなスーのエッチング画を見ることができます。

本展で大きくとりあげられている1922年ドイツ・ベルリン生まれの画家 ルシアン・フロイドの一角。モデルに長時間ポーズをとらせ執拗に描いたという。
2Fで大きくとりあげられている1922年ドイツ・ベルリン生まれの画家 ルシアン・フロイドの一角。モデルに長時間ポーズをとらせ執拗に描いたという気迫が漲っている。
ルシアン・フロイド『裸の少女の頭部』1999年、油彩、カンヴァス、©Lucian Freud Archive/Bridgeman Images UBS Art Collection 顔面の筋肉の盛り上がりがまるで地勢図のようである、というのはキュレーター成相さん談。
ルシアン・フロイド『裸の少女の頭部』1999年、油彩、カンヴァス、©Lucian Freud Archive/Bridgeman Images UBS Art Collection 顔面の筋肉の盛り上がりがまるで地勢図のようである、というのはキュレーター成相さん談。
本邦初公開7作、
アラーキーの小部屋。

3Fのエド・ルーシェイの大きな部屋の奥に、カーテンで仕切られた8角形の小部屋がありますが、そこは日本のアラーキーのスペース。写真コラージュの小さな作品7点はなんと本邦初公開の貴重なもの。こちらもお見落としなく。

その歴史やレトリックを知らないと楽しむのが難しいと言われる現代美術作品ですが、今回のエキシビジョンは、ひと目で見てや造形に力があること、アーティストの個性がダイレクトに伝わるものが多いこと。また現代美術鑑賞に慣れ親しんだ人にとっても、日本でなかなか見れないアーティストのものが見れるなど多層的に楽しめる内容になっています。

エド・ルーシェイの大きな部屋の奥にアラーキーの小部屋。
エド・ルーシェイの大きな部屋の奥にアラーキーの小部屋。
フリンジのカーテンがよく似合う。この奥に7つの作品が。かつては『 The Days We Were Happy』として収蔵されたが今回新たに『切実 』と日本語の新タイトルを冠しての公開となった。
フリンジのカーテンがよく似合う。この奥に7つの作品が。かつては『 The Days We Were Happy』として収蔵されたが今回新たに『切実 』と日本語の新タイトルを冠しての公開となった。
荒木経惟『切実 』1972年、ゼラチン・シルバー・プリント 粘着テープ ©Nobuyoshi Araki UBS Art Collection
荒木経惟『切実 』1972年、ゼラチン・シルバー・プリント 粘着テープ ©Nobuyoshi Araki UBS Art Collection
1924年英国・ロンドン生まれの抽象彫刻家アンソニー・カロのスペース。『オダリスク』は台座からはみ出しても落ちない=縁に腰掛け足を投げ出すコップのフチ子さんと共通点がある!?
以下は2Fの展示作品より。1924年英国・ロンドン生まれの抽象彫刻家アンソニー・カロのスペース。『オダリスク』は台座からはみ出しても落ちない=縁に腰掛け足を投げ出すコップのフチ子さんと共通点がある!?
アンソニー・カロ 『オダリスク』 1985年、ブロンズ ©Anthony Caro. Image courtesy of Barford Sculptures Limited UBS Art Collection。
アンソニー・カロ 『オダリスク』 1985年、ブロンズ ©Anthony Caro. Image courtesy of Barford Sculptures Limited UBS Art Collection。
1965年東京生まれの現代美術作家 小沢剛の展示スペース。2001年から続く連作『ベジタブル・ウェポン』は、世界のソウルフードの食材で武器を形づくりモデルとともに撮影、その後、食材を料理し、ともにいただくというコンセプチュアル・アート。
1965年東京生まれの現代美術作家 小沢剛の展示スペース。2001年から続く連作『ベジタブル・ウェポン』は、世界のソウルフードの食材で武器を形づくりモデルとともに撮影、その後、食材を料理し、ともにいただくというコンセプチュアル・アート。
 小沢剛 『ベジタブル・ウェポン―番茄(トマト)火鍋/台北』 2005年
小沢剛 『ベジタブル・ウェポン―番茄(トマト)火鍋/台北』 2005年

1937年 英国・ブラッドフォード生まれ、デビッド・ホックニーのスペースは80年代、一世風靡したフォトコラージュの大きな作品が。そのほかシンプルに見えるが複雑な彩りの色鉛筆作品、ドローイングが。
1937年 英国・ブラッドフォード生まれ、デビッド・ホックニーのスペースは80年代、一世風靡したフォトコラージュの大きな作品が。そのほかシンプルに見えるが複雑な彩りの色鉛筆作品、ドローイングが。

08デイヴィッド・ホックニー『シャトー・マーモントの裏手の家』 Cプリント ©Tsuyoshi Ozawa UBS Art Collection
デイヴィッド・ホックニー『シャトー・マーモントの裏手の家』 Cプリント ©Tsuyoshi Ozawa UBS Art Collection

『12 Rooms 12 Artists UBSアート・コレクションより』

会期:開催中〜9月4日(日)
休館日:月(7/18は開館)、7/19(火)
開館時間:10:00〜18:00 *金曜日は20:00まで *入館は閉館の30分前まで
会場:東京ステーションギャラリー 東京都千代田区丸の内 1-9-1
JR東京駅 丸の内北口 改札前(東京駅丸の内駅舎内)
Tel. 03-3212-2485(東京ステーションギャラリー代表)
入館料:一般 1,000円 、高校・大学生 800円 *中学生以下無料
障がい者手帳等持参の方は100円引き (介添者1名は無料)
主催:東京ステーションギャラリー [公益財団法人東日本鉄道文化財団] 、産経新聞社
特別協賛、作品提供:UBSグループ