日本初、クラーナハ大回顧展。 圧倒的な存在感を誇る名作と、影響を受けた作品まで。

(2016.10.22)
『ヴィーナス』1532年、油彩 / 板、37.7cm×24.5cm、フランクフルト、シュテーデル美術館 © KHM-Museumsverband.
『ヴィーナス』1532年、油彩 / 板、37.7cm×24.5cm、フランクフルト、シュテーデル美術館 Städel Museum, Frankfurt am Main
ドイツ・ルネサンスの
静かに、妖しい魅力の人物たち。

ドイツ・ルネサンスを代表する画家ルカス・クラーナハ(父、1472-1553年)の大回顧展が上野・国立西洋美術館で開催中です。

透き通る磁器のような肌の人物、ちょっとアンバランスな体付きの裸体、纏う衣の見事な質感、スキのない構図でその絵の存在感は同時代の画家の中でも群を抜いています。

硬目の表情とポーズがドイツ・ルネサンスの作品の特徴ですが、中でもクラーナハが特徴的なのは作品のテーマ選びでした。アダムとイブ、ユディット、サロメといった聖書や神話に登場する人物を、その背景のドラマを強く想起させるイコン使いで描きました。ラファエロ、ボッティチェルリなどイタリア・ルネッサンスの巨匠たちと比べると派手な動きも色彩も少なくどちらかというと地味な印象を受けるかもしれませんが、笑ってるとも悲しんでいるともとれる微妙な表情、ディテールをじっくり味わいながら描き込んだモノや衣装は静謐な魅力にあふれています。当時宗教改革で台頭したマルティン・ルターと信仰が深く、その肖像画も残しています。

展覧会はクラーナハが得意としたテーマの5部構成になっています。
1 謎に包まれた青年時代
2 肖像画
3 木版作品
4 裸体
5 女性の力(Weibermacht)
6 宗教改革

『不釣合いなカップル』1530〜40年頃、油彩 / 板(ブナ)、19.5cm×14.5cm、ウィーン美術史美術館 © KHM-Museumsverband.
『不釣合いなカップル』1530〜40年頃、油彩 / 板(ブナ)、19.5cm×14.5cm、ウィーン美術史美術館 © KHM-Museumsverband.

『ヴィーナス』、『正義の寓意』、『ユディットの誘惑』など名作の数々のみならず、クラーナハ作品をモチーフにした森村泰昌、パズーキらの近現代美術作品も展示されています。クラーナハ作品が大挙して見られる機会は日本ではかなりレアなこと。その展示数は約120点。これほどの規模のものはかつてなく、これからも難しいと思われるので、ぜひ体感してみてください。

『クラーナハ展ー500年後の誘惑』

会期:開催中 〜 2017年1月15日(日)
会場:国立西洋美術館
開館時間:9:30 〜 17:30(金〜20:00)入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし、1月2日(月)は開館)、12月28日(水) 〜 1月1日(日)
主催:国立西洋美術館、ウィーン美術史美術館、TBS、朝日新聞社
後援:外務省、オーストリア大使館、BS-TBS、TBSラジオ、J-WAVE
特別協賛:大和ハウス工業
協賛:大日本印刷
協力:オーストリア航空、ルフトハンザ カーゴ AG、ルフトハンザ ドイツ航空、アリタリア-イタリア航空、日本航空、日本通運、西洋美術振興財団