Gulliver from 岐阜 – 19 - 長良川母情 第19話 ~墨俣一夜城下の百貨店~ 子どもの頃のぼくは、月末の日曜日が待遠しくてならなかった。朝からよそ行きの服を着せられ、この日ばかりは母も三面鏡の前に座り込み、念入りに紅を注す。そしてガタゴト … (2009.09.29) Gulliver from 岐阜 – 18 - 長良川母情 第18話 ~小紅(おべに)の渡し~ 鏡島大橋を少し下った先に、渡し舟がある。岐阜市一日(ひと)市場の右岸から、鏡島弘法の左岸へ向け、片道たった2分の舟旅。それが「小紅(おべに)の渡し」だ。舟から見 … (2009.09.22) Gulliver from 岐阜 – 17 - 長良川母情 第17話 ~昭和のコンビニは何でもアリの萬屋(よろずや)~ いつからだろう。線香花火の火玉が、足元へポトリと落ちても、哀しくなくなってしまったのは? 子どもの頃は、それが途方も無く哀しい出来事だったのに。地面に落ちて歪ん … (2009.09.15) Gulliver from 岐阜 – 16 - 長良川母情 第16話 ~「おnew?」の黄色い傘と長靴~ 花屋の店先で紫陽花の鉢植えを見かけると、初めて傘を買ってもらった小さな頃を思い出す。あれはまだ、小学校に上がる前のことだ。母が黄色の小さな傘と、お揃いの黄色の長 … (2009.09.08) Gulliver from 岐阜 – 15 - 長良川母情 第15話 ~風呂屋の脱衣場でカポーンカポーン~ 『カッポーン、カッポーン。筋肉質の男の裸体。風呂上り』。たったこれだけのヒントでピーンと来たならば、あなたは立派な昭和の生き証人である。 時は昭和39年。戦後の … (2009.09.01) Gulliver from 岐阜 – 14 - 長良川母情 第14話 ~春の吉兆、薄紅色の桜もち~ まるで文金高島田の優雅な日本髪か? 新緑に彩られた、こんもり小高い山々の姿は。関市の千疋大橋から長良川は西へと蛇行し、やがて武儀川と合流し南へ。一方、支流となっ … (2009.08.26) Gulliver from 岐阜 – 13 - 長良川母情 第13話 ~千年前の時代絵巻、小瀬鵜飼~ 赤い鮎之瀬橋から眺める長良の川面で、傾きかけた西日がキラキラと揺れる。まるで春を待ち侘び遡上する鮎の銀鱗のように。船着場には鵜舟が三艘舫(もや)われ、鵜飼開きの … (2009.08.18) Gulliver from 岐阜 – 12 - 長良川母情 第12話 ~梲(うだつ)の揚がる町屋~ 梲(うだつ)の町屋が続く、美濃市の旧市街。黒塀に囲まれた庭先きから、綻び始めたばかりの梅の花をまとった老木が、枝を伸ばし道往く人の目を誘(いざな)う。微かな春の … (2009.08.11) Gulliver from 岐阜 – 11 - 長良川母情 第11話 ~35年前の父の帽子と涎掛けで、愛娘の宮参り~ 鬱蒼(うっそう)とした檜の老木が、社(やしろ)の来歴を物語る。楼門(ろうもん)へと続く苔生(こけむ)した石組みの太鼓橋。禊(みそぎ)落しのように、古人(いにしえ … (2009.08.04) Gulliver from 岐阜 – 10 - 長良川母情 第10話 ~顔の皺は、夫婦が共に生きた半世紀の勲章~ そう言えば母のバッグは、まるでドラエモンのポケットのようだった。 思春期を向かえ母と共に出掛ける機会もめっきり減り、そんなことすらすっかり忘れ果てていた。その事 … (2009.07.28) Gulliver from 岐阜 – 9 - 長良川母情 第9話 ~槙風呂桶に湯を張れば、昭和の在りし日が薫る~ 郡上八幡の町中を後に、川沿いをのんびり南へと向かう。つい先月までは、わずかに歩を踏み出すだけで体中汗まみれだったのに、川面を滑るように吹き抜ける風がなんとも心地 … (2009.07.21) Gulliver from 岐阜 – 8 - 長良川母情 第8話 ~68歳の常夏娘! 大和町のフラガール、リッチャン~ 浜辺に打ち寄せる波。灼熱の太陽に背伸びでもするかのような椰子の木。ハイビスカスの咲き乱れる木陰では、茶褐色の肌をした娘たちがゆったりとフラを舞う。そう、ここは常 … (2009.07.14) Gulliver from 岐阜 – 7 - 長良川母情 第7話 ~大所帯の酒蔵を支えぬいたハイカラ女将。大和町の孝子さん~ 長良川鉄道の徳永駅からほど無い、郡上市大和町の釜淵橋。国道156号線沿いを南に向かうと、「母情」蔵元の看板を掲げる造り酒屋が目に入った。敷地の傍らには、「長刀( … (2009.07.07) Gulliver from 岐阜 – 6 - 長良川母情 第6話 ~自分で摘んだ野草茶で癌をも撃退! 白鳥町お宿「あづまや」の大女将~ 「私らの娘時代は『男衆の下駄を跨いだだけで子が出来るんやで、おまんたぁ気いつけろよ』って言われたもんやて」。長良川鉄道、美濃白鳥駅を西に向かった白鳥橋。長良の川 … (2009.06.30) Gulliver from 岐阜 – 5 - 長良川母情 第5話 ~村人たちが架けた名も無き吊橋と共に生きる。白鳥町二日町のきくさん~ 山間(やまあい)の春は、川下の町を若葉色に染め上げながら、川上へとゆっくりやって来る。長良川鉄道の白山長滝駅と白鳥高原駅との中間、郡上市白鳥町二日町上切地区には … (2009.06.23) Gulliver from 岐阜 – 4 - 長良川母情 第4話 〜 道の駅「白鳥」五平やの母、邦子さん 〜 今にも湯気を立てそうなほどふっくらとした桜色の手が、五平餅を捧げ持ち暖簾の下から差し出された。長良に架かる平家平橋(へいけだいらばし),橋)から南へ。郡上市白鳥 … (2009.06.16) Gulliver from 岐阜 – 3 - 長良川母情 第3話 〜 激動の昭和、気高く生き抜いた小さな母。高鷲町のひささん 〜 しわがれた母の涙は、岩清水よりも清らかに澄みきっていた。 不意に目の前で中島ひささん(92)は涙ぐんだ。語り終えた遠い日の不幸な出来事から、干支も早や一巡りもし … (2009.06.09) Gulliver from 岐阜 – 2 - 長良川母情 第2話 〜 郡上市高鷲町の分水嶺東側、ペンション・喫茶 わたすげのはるみさん 〜 「きっと左が旦那で、右の華奢な方が嫁さんなのかなぁ?」。健気に寄り添うような長良川源流の名瀑「夫婦滝」。17メートルの落差で大日岳に清められた聖水が、滝壺へと一 … (2009.06.02) Gulliver from 岐阜 – 1 - 長良川母情 第1話 〜 昭和30年代終盤の母の残像 〜 三和土(たたき)でけたたましい音を上げる、母の下駄の音にぼくの初夢はついえた。せっかくあと一息で、あこがれだった「お子様ランチ」のエビフライに、噛り付けたという … (2009.05.26)