先日開催されたフランス映画祭オープニングを飾った『グレートデイズ！　-夢に挑んだ父と子-』。監督はドキュメンタリー『エトワール』を撮ったニルス・タヴェルニエ。今回はフィクションですが、障害を持つ子どもとトライアスロンに挑む父親、ふたりの１年を追う、まるでドキュメンタリーのようなストーリー。主人公の少年には、実際に障害を持つ少年をキャスティング、フィクションとドキュメンタリーの要素が交錯する映画として観るものの心を魅了します。

車いすの生活をおくる17歳のジュリアンは、失業して久しぶりに帰って来る父ポールとの再会を楽しみにしていた。だが、息子とどう接していいか分からないポールは、口をきこうともしない。そんな父にジュリアンは、とんでもない提案を突きつける。「父さんと、アイアンマンレースに出たい」。若い頃にトライアスロン出場の経験を持つポールだが、「ムリだ」のひと言で一蹴する。アイアンマンレースは、トライアスロンの中でも最難関。鍛え抜かれたスポーツマンでも過酷なレース。しかし、負けず嫌いのジュリアンは諦めない。様々な作戦を企て父を説得。さらには、心配性の母をも説き伏せ晴れてチーム結成となる。ふたりの無謀すぎる挑戦は、やがて周囲の人々を巻き込んで、皆の夢へと変わっていく……。

障害を持つ主人公の少年ジュリアンを演じるファビアン・エローくんは、ベルギーの映画祭で主演男優賞を取るほどの実力。とはいえ元々演技はまったくの素人で、タヴェルニエ監督に見出されてから4カ月渡る演技指導を受けて臨んだ映画での快挙。父を演じるジャック・ガンブランと本当の親子ではないかと思えるほど自然な演技を見せています。

ストーリーのみならずアヌシー湖畔に暮らすジュリアン一家のある街やトライアスロンの練習をするローヌ・アルプの山々や湖の景色も美しく、アイアンマンフランス・ニースで実録された映像はダイナミック……。その映像を見るだけでも感動を覚えるほど。この美しい風景とともに家族の心の揺れ動きを繊細に描いた名作です。