さむらいペンギン 09 桜吹雪斬り

(2012.03.12)

◆09 「桜吹雪斬り」

春うらら。
モーパッサンの修行ライフが、
ついに始まる。

桜が舞い散る校庭。
「デェマ師匠!
よろしくお願いしまーす!」

デェマは楽しい剣道を取り出すと、
「元気が良いのモーパッサン。
ええことじゃ。
ほんじゃ、勇者の修行〜その壱!
この”楽しい剣道”に記されている
秘技——”桜吹雪斬り”じゃ!」

「 さ・く・ら・吹雪斬り?
 ムッチャカッコいいやーん!
  師匠、 教えて下さーい!! 」

「モーパッサン、まわりを見てみ。
桜が舞っとるな。
この桜吹雪がユーの修行相手じゃ。
舞い散る花びらが地面に着くまでに、
竹刀・米闘勉でそれを、打ち据える
のじゃ!  まあ、やってみぃ」

モーパッサンは米闘勉を構え、
ユラユラと舞い散る桜に——

エイっ!

エイッ!

エイッ?

桜にかすりもしない。

「ハイやめ!
さすが、体育の成績だけは……
プチ高で一番なだけあって、空振り
ながらも鋭さを感じるじぇ。
さすが勇者・モーパッサンじゃ。
桜が散るまで、あと二週間。
それまでに!
”桜吹雪斬り”が出来んようなら……
勇者になるのを諦めるんじゃぁ!」

「えっ!そんなーん!
だって竹刀振るの、今日が初めてな
んやで!!
いきなり”桜吹雪斬り”なんて……
カッコええけど無理やぁで!
デェマ師匠も、出来へんでしょ?」

デェマはいつもの黄色い傘をひょい
と持ち上げると——
バシ!  バシ!バシ!
バシバシ!   バシ!

ユックリと、傘を振りまわしてい
ようにしか見えないのに、舞い散る
桜を次々と、傘で叩き落していく。

「凄い……魔術師みたいやぁ!!」

「ひゃひゃひゃ、実はな。
ワシはこの四十年間、誰にも負けた
ことがないんじぇ、いや……
一回だけぇ……
まそれはどうでもエエ。
ユー、米闘勉をよこすんじゃ」

そう言われて、竹刀・米闘勉を差し
だすモーパッサン。

「これはひとまず没収じゃ。
代わりに……
   ほれ、これを使うんじぇ」
 
 ホイ。

 「こ、これでぇすかぁ?
 なんや勇者っぽくないやん……」

「まだまだユーは、勇者見習いじゃ。
コレっ!
傘の持ち手じゃのうて、傘の先!
骨があるほうを持っんじゃ。
そうそう。
そこを持って、”桜吹雪斬り”の練習
をするんじゃ!」

「なんかカッコ悪いけど……
      頑張るでぇ!」
一日目——
      ブーン!

三日目——
 バシ!

五日目——
バシ! バシ!

 周囲から、奇異と賞賛の眼差し
を受けるモーパッサン。
彼は、手の皮がむけて血だらけに
なっても、黄色い傘を振り続けた。

一週間後——

バシ! バシ! バシ!

デェマのようにはいかないが、
数枚の桜なら打ち据えれるように
なったモーパッサン。

パチパチ!
デェマは拍手をしながら、
「まずまずじゃ、モーパッサン。
  ほれ、米闘勉じゃ。
     こいつでやってみぃ」

久しぶりの竹刀・米闘勉に、
「なんか、軽くなったみたいや?」

ブン!
「あれ、やっぱり軽いやん」

「モーパッサン。
それはユーが、竹刀を上手く握れる
ようになったからじゃ。
不安定な傘の骨を握ることで、微妙
な力加減を覚えたんじゃ」

「す、スゴイっすー!!
さすがデェマ師匠!!(泣)」

「泣くのは早いモーパッサン。
米闘勉で”桜吹雪斬り”をやってみ」

バシバシ! バシ!
バシ!!

ウワァーン!
「米闘勉がいうことを聞いてくれ
るー(泣)」

「なんかウザ……
まあ…まだまだ、これからじゃ。
その程度では、”桜吹雪斬り”とは呼
べん!
ユーの半径3メートル以内に舞い
散る桜を全てをぉ!
打ち据える事が出来なければ……
”桜吹雪斬り”とは呼べんじぇ!
あと、一週間じゃモーパッサン!」

「そんなぁ〜ん。
僕が三匹はおらんと、無理やん!」

「ワシの”桜吹雪斬り”を思い出すん
じゃ。決して、素早く動いたわけで
はないはずじゃ。ユーはまだ!
桜の動きに翻弄されとる!」

「だって…あっちで、ユラユラ。
こっちで、ユ〜ラユラしてるから、
見てるだけで一杯一杯なんや……」

ゴホン。
「しゃあないの。
ユーに、桜吹雪斬りの極意を教え
てやろう……それは。
 桜を見るな!
 アホになれ!!じゃ」

すでに!
馬鹿でウザい男、モーパッサン。
さらに!
馬鹿でウザいアホな男になれるのか、
モーパッサン!!