さむらいペンギン 11 アホになれ

(2012.03.26)

◆11 「アホになれ」

シゲロウの必殺技。
”アイスブレイク1号”がぁ!
モーパッサンに襲い掛かるぅ!!

距離5m——

距離1m——

距離0m——

バスッ!

モーパッサンに打ち返され
た”アイスブレイク1号”は、
ギュュュューン!
唸りをあげ!
再びシゲロウのもとへ!!

         バキ!

 ピーポーピーポー

「こ…これや」

モーパッサンは、何かを確信した。
彼は立ちあがると米闘勉を構え、
「見ることを意識したら……
        あかんねん!」
バシ!
 バシ!

「考えることを意識したら……
 あかんねん……
 せやからアホになるんや!」

バシバシ! バシ!
        バシ
バシ!

「感じたら!
  動いたらええねん!!」

バシバシ!バシバシ!
        バシバシ!

米闘勉は、面白いように舞い散る桜
を打ち据えていく。
 モーパッサンは”桜吹雪斬り”に
夢中になり、いつしか……
竹刀・米闘勉が自分なのか?
桜吹雪が自分なのか?
それがわからなくなってきた。
しかし、不安感はない。
むしろ桜吹雪のように舞い上がる
高揚感に酔いしれた。
 ふと気がつくと、目の前に舞い散
る桜はなく、ピンク色の絨毯が足元
に広がっていた。

パチパチ!
「見事じゃモーパッサン。
ワシは、ユーの桜吹雪斬りを肴に、
花見をしとったんじゃが……
ユーは、一時間も続けてたじぇ」
         と、上機嫌の
            デェマ。

「え?ホンマですか?
僕、十分くらいやと思ってました」

「なぜ?急に桜吹雪斬りが出来るよ
うになったんじゃ?」

「えっと、シゲロウがドッチボール
をバーン! てやってん——(割愛)」
 脳味噌が爆破しそうなパッサンの
説明を、クールに処理するデェマ。
「なるほど……ユーが何故?
”桜吹雪斬り”が出来るようになった
か……ワシが、解説してやろう。
ワシらが見ている世界は——
基本、0・5秒後の世界なんじゃ。
実際に目が見たと感じて0・5秒後
に、脳がそれを”見た”と認識する。
という事は——
桜を見ようとすること、
桜をどう打ち据えようかと考える
ことで、0・5秒遅れて行動してま
しまうんじゃ」
        コホン。

「シゲロウが、ユーの背後から
ボールを投げたということは……
ユーにはボールが見えていなかった。
そのうえ、まったく別の事を考えて
おった……という事は——
聴覚か、もしくは何らかの気配を
感じ取り、その瞬間!
0・5秒のタイムラグをスッ飛ばし!
本能的にボールを叩き返した!
おそらく、反応してから0・1秒くら
いで、竹刀を振ったのじゃろう。
つまり、見る認識、考える認識をし
ないことで、感じとった瞬間に動き
出せた——ざっくり言うと、通常の
5倍早く動き出せたんじゃ。
これが、”桜吹雪斬り”の極意じゃ。
ユーも、良くわかったじゃろう?」

「わからへん!」

「なんでじゃ?」

「だって……デェマ師匠。
 アホになれって言うたやん」

話はオチたが……
モーパッサンの修行は続く!