さむらいペンギン 15 生き地獄

(2012.04.30)

◆15 「生き地獄  」

フミ、フミ。

「どうじゃ、モーパッサン?
南極史が、頭の中に入っておるか?」

「はい……西暦361年、ペンサルが
初代南極大陸の皇帝ペンンギンの
皇帝となる……
なんや、ややこしいな」

「コリャ!
モーパッサン、身体を上下に動かす
んじゃないじぇ!
水平に、スーツと動くんじゃ!」

「師匠、すみません。
せやけど勉強しながら、スーッと
歩くの難しいねん」

「意識を向けなくても身体が動く!
そうでなければ、瞬間移動の如き!
素早い動きは出来んのじゃ!!
どうじゃ、勇者の修行を行いながら、
二宮金次郎スタイルでお勉強。
それに…おっ!
あったじぇ、モーパッサン!」

「プチプチ石を探すことも出来る。
一石三鳥の勇者の秘技!
それが、この”発破文踏み”じゃ!
勇者にも、このようなタイムマネー
ジメントが必要じゃ。ひゃひゃ」

「デェマ師匠……
もう、脚も頭もパンパンやぁ」

「じゃあの、モーパッサン。
今日は初日じゃから……
あと、島を三周したら終わりにし
ようかの」  

  

            ビリッ!

 

俺はプチプチ高校の荒ぶる知性、
シゲロウ。
 俺は今、天国と地獄の間を漂って
いる。
それは俺の隣にいるマイ・スィート
エンジェルのせいだ。

 
俺が、南極共通実力試験で二番目
なった日。
ナタリーちゃんが、突然、俺の前に
現れ、
「シゲロウ君、凄いね。
南極の高2ペンギンの中で、二番目
に賢いなんて。
あたし…南極究極大学に行こうと
思っている。
ねぇ、一緒に!
お勉強して……
一緒に、
南極大に
行こう!
そしたら…
一緒に……    ね!」

 こうして、ナタリーちゃんと一緒
に、お勉強をする事に——
ナタリーちゃんの香り。
ナタリーちゃんの温もり。
ナタリーちゃんの柔らかさが伝わっ
てくる。
ハアハアハア……まるで、天国!
しかーし!
同時に地獄!!

とても、とても、大学まで……
待てねえーよ!
オラァ!!
もう、五分も待てねぇ!!
だが——
ナタリーちゃんにお勉強をシッカリ
教えないと……機嫌を損ねられる。
あーっ、夢にまで見た個人レッスン
   それが、まさかの生き地獄!!

 ペキンン!

一ヶ月後——
コロン。
「これでプチプチ石が9個じゃ。
モーパッサン、さっきの説明で、
作用・反作用は理解出来たんじゃろ」

「僕が地面を踏み込む力の反作用で、
身体が前に進む。
今は、師匠の体重も加わってるから、
いつもの倍の反作用が必要や。
あっ、この”発破文踏み”の修行で、
身体を水平に動かす理由もわかって
んで、デェマ師匠!

この前までの僕の足運びやと、
AからBに移動する時間もかかるし、
上に移動してまうから、反作用が
無駄に必要やねん。
せやけど……

“発破文踏み”の足運び方やと、
AからBに移動する時間も短いし、
上に移動せえへんから、反作用に
無駄がないねん」

「モーパッサン!
ユーはこの一ヶ月で賢くなったの。
それに、足運びもスーッと動ける
ようになったじぇ」

「ほんまですか!!
賢いなんて……
生まれて初めて言われたかも!
嬉しいです師匠!!(大泣)」

「モーパッサン、いちいち感動し
て泣かんで良いじぇ」

「は、はい、師匠、グズん」

        
        

「ナ、ナタリーちゃん……」

泣いてもイイぞ!
モーパッサン!!