メディア・パブ 電子と紙のカニバリズム、
書籍でも陥る心配が。

(2011.09.15)

今年上半期の米国書籍の売上で、電子書籍が大きく伸びたが、プリント(紙)書籍が落ち込んだ。米出版社協会(AAP:the Association of American Publishers)の月次レポートによると、電子書籍の2011年上半期売上高が前年同期比で161%も急上昇したが、紙書籍の落ち込み分を補えず、 書籍全体では2桁台のマイナス成長に陥った。

新聞や雑誌と違って書籍市場では、プリント(紙)とデジタル(電子)の共存が進み、深刻な カニバリズムは生じないと楽観視する見方も少なくなかっただけに、今回のデータは気になる。ただ同じAAPが1ヶ月ほど前に、 the Book Industry Study Groupと共同で、BookStatsレポートを発行し、その中で次のように書籍売上が増え続けていたと報告している。2008年から2010年までの 2年間で、5.6%の成長率を示した。電子書籍が急離陸した時期でもあるが、カニバリズムの兆しは見られなかった。
 

米出版社の書籍売上高(net sales revenue)
・$279億ドル( 2010年)
・$271億ドル( 2009年)
・$265億ドル( 2008年)

 

どうして、急に書籍全体の売上が、今年に入って急落したのか。景気が悪くなってきたことや、世界を揺るがすニュースが相次いだことも影響しているかもしれ ないが、調査対象の出版社数が違っていることも左右しているようだ。1ヶ月前のBookStatsレポートでは約2000社の出版社のデータをもとにまと めたのに対し、今回のレポートでは72社の出版社から4分野(trade, K-12, higher education and professional/scholarly publishing)のデータを集めて調べている。その72社のうち15社から電子書籍のデータを集めた。

今回のレポートは調査対象が72社と一部であるが、比較的規模の大きい出版社が多そうだし、ある程度のトレンドを示しているのではなかろうか。

調査対象の書籍のとして、プリント(紙)メディアでは大人向け書籍(hardcover, paperback and mass market paperback books)と子供向け書籍( hardcover and paperback books)を取り上げ、それに電子書籍とオーディオ書籍(ダウンロード販売)を調べている。確かに、紙の書籍が大きく落ち込んで、電子の書籍が急上昇し ている。ちょっと偏り過ぎた結果と思えるし、紙の書籍全体でここまで急落しているとは考えられないのだが。 
(2011年9月10日)


(ソース:paidContent.org)

メディア・パブ