メディア・パブ 息を吹き返すか、
米国の経済誌

(2012.08.13)


 

米国の主要経済雑誌が好調だ。Bloomberg Business Week、Forbes、Fortuneの3大経済誌のいずれも、今年第2四半期の広告売上高および広告ページ数が前年同期に比べかなり上回っている。

*主要経済紙の広告売上高と広告ページ数(2012年第2四半期と2011年第2四半期)


(Publisher’s Information Bureau)

米国の雑誌は新聞と同様、広告収入に高く依存していただけに、厳しい状況に立たされている。2000年代に入って紙(プリント)離れが進むに従い広告事業 が低迷し始め、雑誌産業に暗雲が垂れ込めていた。そして追い討ちをかけるように2008年にリーマンショックが襲い大変なことになった。年間広告掲載ペー ジ数の増減率の推移からもわかるように、2009年には広告売上高が急落し雑誌の休刊(廃刊)ラッシュが続いた。

それでも2010年には大きくリバウンドし、マイナス成長からの脱出が期待された。だが2011年は足踏みし、2012年に入っても四半期ベースの広告売 上高と広告掲載ページ数で前年同期割れが続いた。最初の表に示したように米国の雑誌全体では、第2四半期の広告売上高で前年同期比で2.9%減、広告ペー ジ数で8.6%減と下降線を辿り始めているのだ。

このように雑誌産業が減衰している中で、主要経済紙が踏ん張っているのだ。でもリーマンショックで大騒ぎしていたころ、新しい情報を競って欲していた読者は、週遅れや隔週遅れの情報が載った経済雑誌(週刊誌/隔週刊誌)を見放しつつあっ た。経済雑誌の終焉の声すら聞こえてきた。以下のグラフのように、主要経済紙もリーマンショックで大打撃を被っていたのだが、その後、心配を吹き飛ばすよ うに復活してきているのである。そして、2012年第2四半期の広告売上高は、Business Weekが前年同期比6.1%増、Forbesが 19.7%増、Fortuneが7.3%増と、好成績を残した。欧州債務危機などによりますます混迷するグローバル経済の動向を先読みするための情報ニー ズが高まっているためか。世界経済の混乱が逆に、グローバル経済誌にとって追い風になっているのかもしれない。

*主要経済誌の第2四半期・広告売上高の推移(単位:100万ドル)

上の表とグラフに、3大経済誌に加えて英国のEconomistと新興のFast Companyも加えた。特に注目したいのがFast Company で、広告売上が33.7%も急増し絶好調である。Fast Companyは、2000年前後のネットバブル時に相次ぎ登場したニューエコノミー誌の一つ であった。The Red Herringや Business 2.0 などと共に、老舗経済誌を脅かす存在と持て囃された。だが、ネットバブルの崩壊とともにほとんどの雑誌が休刊し、生き残っていたのがFast  Companyである。メディアキットによると2011年6月30日現在で発行部数(Total Paid & Verified Circulation)が738,950部となっている。月刊誌であるが、2回の合併号があるため、年10回の発行となっている。年間購読料は12ドル で、購読者はKindle電子版を無料で閲読できる。

Fast Companyは、ビジネス変革に着目し、最新のビジネスニュースや動向、際立った起業家、急成長のベンチャーなどに焦点を当てた記事を売り物にしている。雑誌記事の多くはサイトでも無料で閲覧できる。2012年9月号の記事はこちらで。