メディア・パブ 著名アナリストMary Meakerの
“Interenet Trends”2012年版公開

(2012.06.01)


 

Mary Meeke氏のスライド「2012 Internet Trends」 がD10 Conferenceで公開されたので、その中から興味深いものを紹介する。

Mary Meeke氏はMorgan Stanleyのアナリストとして有名であったが、現在、KPCB(Kleiner Perkins Caufield & Byers)のパートナーとして活躍している。彼女が提供するプレゼンはいつも定番資料として、引用されることが多い。今回の「2012 Internet Trends」はモバイル市場に照準を定めたスライドである。

最初は、各国別の3Gモバイルの加入者数から(2011年第4四半期)。モバイル先行国の日本と韓国では、3Gモバイルは人口の9割前後にも普及しているが、世界的には米国も含めて今が3Gモバイルの爆発的な成長期である。

世界の先進国を中心に、3Gインフラの拡大に合せて、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末も急激に増えている。次は、世界のスマートフォン加入者数と携帯電話加入者数である。スマートフォンの加入者数は9億5300万となっているが、現時点では10億の大台に乗っているはず。また携帯電話加入者数は61億となっているが、1人で複数加入している場合も多いので、実際の利用者数は61億人に届いていないだろう。

スマートフォンやタブレットの普及に伴い、世界的にもモバイルインターネットのトラフィックが急増し始めている。全インターネットトラフィックの内モバイルインターネットが占める割合は、2009年12月に1%しかなかったのが、2012年5月には10%に達した。でもモバイルインターネットのトラフィックが急増していくのはこれからが本番である。

欧米のインターネットビジネスはこれまで、パソコンインターネットが中心であった。信じられないほど、モバイルインターネット市場はマイナーであったのだ。それが、3Gをベースにしたスマートフォンの普及に加え、タブレットやeリーダーも米国では一斉に売れ始め、昨年あたりからモバイルインタネット市場が本格離陸してきている。

これに加え、モバイルアプリの開発や流通プラットフォームの整備などで、米国企業が主導権を握るようになってきた。そして世界的にも、本格的にモバイルアプリやモバイル広告の売上が伸び始めた。

ただし、モバイルインターネットには幾つかの課題がある。これまでのPCインターネットに比べ、収益性がまだ低い。たとえば広告指標のeCPM(effective Cost Per Mill)、つまり広告表示回数1000回あたりの収益額が、モバイルインターネットでは以下のようにPC(デスクトップ)インターネットに比べかなり低い。

1人当たりユーザーの消費額であるARPUも、モバイルユーザーはPCユーザーに比べ少ない。

Googleもモバイルビジネスがまだ軌道に乗りきれていない。

上場したFacebookもモバイルビジネスをこれからの牽引役にしていくとのことだが、同じく軌道に乗せるのはこれからということで、株価の低迷の背景ともなっている。そして、アップル技術者を引き抜いてまでして、自前のスマートフォンの製造を計画していると、NYTやCNNに報道されている。

モバイルビジネス先進国であった日本は、モバイル分野でのECやゲーム、広告などの収益モデルを確立してきた。日本のモバイル関連企業が、これまで培ってきた収益モデルを武器に、今まさに世界進出する絶好のタイミングでもある。
(2012年05月31日)