メディア・パブインターネット広告費が
TV広告費を追い抜く国が現れた。

(2011.12.21)

メディア広告のキングと言えばテレビ(TV)である。まだまだ世界的にもテレビ時代は揺るぎそうもないが、でもいくつかの西欧諸国では、急躍進するインタネット広告がTV広告を追い抜きトップに躍り出始めている。

このような興味深い動きを、Ofcom(Office of Communications:英国情報通信庁)が先日発行したレポート「International Communications Market Report 2011」で知らせてくれている。今年のレポートでも、世界のメディアやテレコムの動向や現況が、数多くのグラフを駆使して紹介されており、有難いことに363ページの長大レポートが無料で入手できる。

英国機関のレポートなので、英国や西欧諸国、米国、それに英連邦(カナダ、オーストラリア、インド)の各国のデータが主に取り上げられている。ただしいくつかのグラフでは日本のデータも添えられており、グローバルの中での相対的な位置づけが読み取れる。最近では、先進国以上に新興国におけるインターネットなどの成長が著しいが、市場規模で見ればメディア産業はまだしばらく先進国中心に展開されるはず。特にメディア産業を大きく支える広告事業においては、売上規模で先進国が大半を占めているのが現状だ。

そこでここでは、レポートの中から世界のメディア広告の動きを拾い出して紹介する。最初のグラフは、主要各国における2010年広告費のメディア別シェアを示している。その次の2番目のグラフでは、各国のインターネット広告シェアの推移を示している。過去1年間および過去5年間のCAGR(年平均成長率)も国別に算出している。各国でこぞってインターネット広告のシェアが急激に拡大している。その結果ここ数年各国で、インターネット広告費が雑誌広告費を超えた、さらには新聞広告費を抜き去ったといったニュースが、年末に報じられている。そしてついにテレビ広告費を上回ったというニュースも聞かれるようになったのだ。スウェーデンやオランダでは、最初のグラフで示すように、インターネット広告費がTV広告費を追い抜いている。また英国やドイツでも、ほぼ同じシェアとなっている。英国では Internet Advertising Bureau (IAB)のデータによると,2009年上半期に既にインターネット広告費がTV広告費に追い付いていることになっている。英国ではBBCの存在が早い時期でのトップ交代劇を演じさせているのかもしれない。

 テレビがメディア広告の主役であり続ける米国や日本では、インターネット広告の台頭は新聞広告や雑誌広告のシェアを侵食することになった。だが西欧の各国では米国や日本と違って、意外と新聞広告が踏ん張っている。ドイツ、スウェーデン、オランダ、アイルランドでは、2010年になっても新聞広告がトップシェアを堅持している。

注:1£(1ポンド)=120.9円 、2011年12月17日

次は世界全体(グローバル)のメディア別広告費の推移である。2009年はリーマンショック後の金融危機で深刻な広告不況に襲われたが、2010年にリバウンドした。でも、2011年はEU危機が蔓延し回復を鈍らせている。グローバルで眺めてみても、新聞や雑誌メディアはじわじわと勢いを失ってきているが、テレビはまだ元気がよくて勢いを失ってはいない。

メディア別のCAGR(年平均成長率)を比べても、明暗がくっきりと表れている。

 
最後に、各国のTV産業のデータを。2010年はリバウンドの年だったので、異常に高い成長率はそのためである。1人当たりの広告売上高は、日本と米国はほぼ同じレベルである。
(2011年12月17日)

 

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