メディア・パブ 「BuzzFeed」、NYタイムズと組んで
米大統領選報道も。

(2012.07.11)


 

「BuzzFeed」がおもしろい。BuzzFeedの記事には、これまでツイッターやフェイスブックを介してたまに接することがあっても、暇つぶしのエンターテイメント情報がほとんどなので、特に関心を抱くこともなかったのだが……。

ところが昨年末あたりから政治分野などもカバーして分野を拡充し、同社発表で月間ユニークビジター数が2500万人を超えるまで急成長した。また、政治分野の編集長に政治レポーターとして名高いBen Smith氏が就いたことも大きな話題になった。

BuzzFeedの記事は最初から、ユーザーがソーシャルメディアなどで共有したくなる情報となるように編集されている。主に、Web上から選りすぐって集めた写真などのコンテンツをベースに、ユーザー同士が共有したくなる情報を提供している。極めてバイラル性が高いコンテンツの記事なのだ。このため、BuzzFeedへのユーザーアクセスは、Facebook, Twitter, Tumblr などソーシャルサイトからの参照トラフィックが中心となっている。

実際の記事例を見てみよう。タイトルが「人を信じる気持ちを取り戻せる写真21点」(21 Pictures That Will Restore Your Faith in Humanity.)という記事である。この記事では、動物の救出や見知らぬ人への支援といった、感動的な人の行動をとらえた写真を集めており、いわゆるリミックスした形の情報を提供している。

この記事だけで、2週間で830万回ものユーザーアクセスを得ている。以下のトラフィック累積の推移からも分かるように、最初の2日間で500万回に達している。

ソーシャルメディア・サイトからの参照回数を以下に示す。いかにバイラルでユーザーを呼び込んだかが明らかだ。
facebook.com:5,184,788
stumbleupon.com:247,714
twitter.com:168,754
tumblr.com:116,959
reddit.com:116,715
pinterest.com:78,528

この1記事だけで、Facebookで200万件近く「いいよ!」されており、Twitterでは5万件近くもツィートされている。この記事への参照トラフィックが殺到するのもうなずける。この記事の場合、ほとんどのトラフィックがバイラル(Viral Views)であったのだ。また、検索エンジン経由のトラフィックがあまり多くないことも、時代の流れを感じる。

その他の記事例もあげておく。 
・「パソコンをベッドに眠りこむ20匹のネコちゃん」(20 Cats Sleeping On Computers
・「ヒラリー・クリントンの馬鹿げた写真25点」(The 25 Most Absurd Hillary Clinton Photoshops
・「ウィンブルドン優勝のセリーナ・ウィリアムズ、老いていないことを証明」(Serena Williams Proves Winning Wimbledon Never Gets Old

上の例の記事では、写真などのオリジナルコンテンツを作り出しているのはBuzzFeedの編集者ではない。彼らは、Reddit, Imgur, Pinterest, Tumblr, Google image searchなどを使って.ネット上からコンテンツをキュレートしていると言ったほうがよさそう。また、このサイトの影響力が大きくなるに従い、著作権の問題も起こるかもしれない。

次に、政治欄などを設けて、どう変わろうとしているのかを探ってみた。政治欄Politicsのページは次の通り。

政治欄の編集者は、編集長のBen Smithを含めて6名から成る。いずれも個人のツイッターアカウントを持っており、フォロワー数を括弧内で示す。
Ben Smith, Editor In Chief(84,908)
Michael Hastings(11,130)
Rosie Gray(12,390)
McKay Coppins(11,751)
Zeke Miller(17,215)
Andrew Kaczynski(21,294)

政治欄には、次のトピックスを用意している。
mitt romney
barack obama
republicans
obama 
hillary clinton
obamacare
ohio
romney
ron paul
penalty

政治欄の記事例として、2日前に投稿された「オバマがFox Newsチャンネルを消す」(Obama: Turn Off Fox News)を取り上げる。

この例でも、バイラル参照のトラフィックが圧倒的に多い。

drudgereport.com:174,950
facebook.com:8,571
twitter.com:3,286
idrudgereport.com:2,185
foxnews.com2,061
www-ig-opensocial.googleuse…:1,317
conservativebyte.com:918
tmz.com:721
redflagnews.com:667
memeorandum.com:475

政治分野では、新興のソーシャルメディアが必ずしも支配しているわけではなさそう。政治記事見出しのアグリゲーターサイトのdrudgereport.comが、今でも政治分野では大きな影響力を発揮している。また、政治ニュースアグリゲーターのmemeorandum.comも顔を出している。

政治欄を立ち上げて、大統領選などの政治分野のバズをソーシャルの世界で伝播させ始めたBuzzFeed。でも伝統的なマスメディアは、品位が疑われるのを嫌ったのか、BuzzFeedの記事を引用することはほとんどなかった。このため伝統的なマスメディアからの参照トラフィックはないに等しかった。ところが驚いたことに、NYタイムズからBuzzFeedに対して、大統領選向けての民主党全国大会や共和党全国大会のライブ動画報道で連携したいとの働きかけがあったのだ。実際に連携することになった。ソーシャルで受けるコンテンツ提供についてノウハウを蓄積しているBuzzFeedと手を組むことによって、NYタイムズのサイトにソーシャルメディアからの参照トラフィックをどれくらい呼び込めるのか、興味深い。