メディア・パブワシントン・ポストも着手した
ネイティブ広告

(2013.03.22)


 

ワシントン・ポスト(The Washington Post:WaPo)もニュースサイトでネイティブ広告(’native advertising’ )を始めた。

WaPoのサイトを見ていると、最近、編集枠もどきの広告枠に時々出くわすようになった。一昨日や昨日も、Opinion欄のページにその注目の枠が現われていた。以下は、Opinionページの最上部のスナップショットである。

このページをスクロールしていくと、以下のスナップショットのように、左下に「SPONSOR GENERATED CONTENT 」と記されたスポンサー提供のコンテンツ枠が設けられていた。ここは編集スペースの一部であるが、スポンサーに使わせる有料のコンテンツ枠となっている。“Brand Connect”と称して、今月からWaPoが手掛ているネイティブ広告なのだ。最初のスポンサーはCTIA(the Wireless Association、移動体/無線通信の国際的な業界団体)である。

青枠にコンテンツの要約が出ているだけで、そこをクリックすると、全文ページに飛ぶ。そのページはCTIAのオリジナルコンテンツで成り立っているが、フォーマットはWaPoの編集ページに従っている。3分間のCTIAのプロモーションビデオも提供されていた。

WaPoはBrand Connectを次のように説明している。「Brand Connectは信頼ある環境下でマーケターとワシントン・ポスト読者とを結びつけるプラットフォームである。Brand Connectの中身はマーケター(スポンサー)側で開発され執筆される。WaPoのニュースルーム(編集室)は関与しない。」 要するに、編集と広告は独立していると主張しているのだ。

昨年あたりからインターネット広告業界では、ネイティブ広告の話題で大いに盛り上がっている。従来、広告を掲載するメディアサイトにおいては、メディア側のコンテンツ(編集コンテンツ)に加えてスポンサーのための広告コンテンツが存在し、一般のメディアサイトのページでは、複数の編集コンテンツ枠や広告コンテンツ枠を比較的わかりやすく分けて配している。広告コンテンツ枠の代表がバナーである。ところがネイティブ広告ではスポンサー(広告)コンテンツも、編集コンテンツ枠と同じフォーマットで提供する。このため、ユーザーは編集コンテンツに接する流れの中で混ざり込んだ広告コンテンツに接することになる。

ツイッターの広告用ツイートが、ネイティブ広告の代表例と言われている。ネイティブ広告が騒がれているのも、ツイッターやフェイスブックのようなタイムライン型メディアでの広告枠として注目されているためである。また、インターネット広告がユーザーに無視されてきていることへの対応策でもあるようだ。実際、広告枠を見向きもしないで、編集枠だけを追っているインターネットユーザーが多い。広告コンテンツを有益でないと思いこんでいるユーザーにとって、広告は雑音そのものである。

でも理想としては、広告も編集と同様、ユーザーにとって有益な情報コンテンツであるべきである。クライントであるスポンサーが、メディアサイトのユーザーにとって有益なコンテンツを提供しようとしても、既存の広告枠では多くのユーザーに無視されてしまうが、ネイティブ広告なら目に留まる割合が増えそう。

当然、編集コンテンツと広告コンテンツが混在するネイティブ広告に対して、ユーザーから反発が起こりそうだし、メディア側もリスクを抱え込む心配がある。もちろん広告枠では、広告であることを明記する。でも編集スペースに、編集と同じようなフォーマットでスポンサーコンテンツが紛れ込む形になるので、へたするとメディアサイトの価値を落としかねない。それを避けるには、ネイティブ広告のスポンサーコンテンツがメディアのユーザーにとって有用なものでなければならない。場違いのコンテンツであったり、押しつけがましい広告コンテンツだと、失敗する。

実際に、リスクが現実になった。The Atlanticのサイトで提供したネイティブ広告で炎上が起こった。スポンサーはサイエントロジー(Scientology)であった。信者にトム・クルーズやジョン・トラボルタがいることで話題にもなっている新興宗教である。ブランド力のある質の高いメディアだからこそ、問題になったのだ。反発が大きく、同サイトは謝罪するとともにその掲載を中止した。

ここで、WaPoのネイティブ広告をもう一度振り返ってみよう。スポンサーはCTIAだし、コンテンツも問題がない。WaPoのネイティブ広告は格別で、一般の広告料金よりも高いはず。同じページに(冒頭のスナップショット)、CTIAがクライアントのバナー広告も掲載させている。ただし、バナー広告をクリックすると、CTIAのサイトに飛ぶ。

またWaPoもサイトには、別のメニューのネイティブ広告を既に提供している。一部のニュース記事の後部に、以下のように、編集スペースに「Suponsored Headlines」と称する広告枠を設けている。これは、その記事を読む読者が関心も持ちそうな外部ニュースサイトの記事見出し(リンク情報も)を掲載している。クリックすると、外部サイトの記事ニュースに飛ぶ。この広告枠にはめこむコンテンツとして、外部のOutbrain社がWaPoの読者が関心を寄せそうなニュース記事を選別している。この例では、最初のニュースは競合サイトのニューヨークタイムズ記事となっている。読者のための広告なので、こういうことも起こる。これだと、ユーザーは有用なコンテンツと見なし、雑音情報と反発されることはないだろう。CNN NewsなどもOutbrainをかませたネイティブ広告を提供している。
(2013年03月19日)

参考
・’WaPo’ Joins Paid Content Parade(MediaDailyNews)
・WashPo’s New Native Ads: Slippery Slope?(NetNewsCheck)
・Former NY Times Editor Bill Keller On Tech Cults, Native Advertising And The Benefits Of Buyouts(Forbes)
・What the Atlantic learned from Scientology: native advertising is harder for news brands(paidContent)

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