メディア・パブ反差別デモ支援のメディアを発行、
「KickStarter」で寄付集め。

(2011.10.24)

ソーシャルな資金調達システム「Kickstarter」を活用して集めた寄付金で、米国の反格差運動を後押しする新聞や雑誌、フィルムなどが生まれてきている。

ソーシャルメディアでの呼び掛けに応えて集まった人々が、ウォール街を皮切りに全米各都市で反格差運動が拡大しているのだが、リーダー不在の草の根的な色 合いが濃いため、まだまだまとまりのない運動に止まっている。北アフリカの反政府運動のように共通の標的が固っているわけでもない。そのため、新聞などの マスメディアも、“we are all 99%”などのスローガンや理想主義に理解を示したとしても、都市の広場を占拠する運動に必ずしも好意を示していない。

だがソーシャル メディアだけでは、運動の輪が一般の中高年層に広がりにくいし、情報がフローのため運動がバラバラのままに終わる心配がある。そこで、運動のメッセージを 明確にし幅広く伝えるために、新聞や雑誌、フィルムなどのメディアを自分たちの手で作り出そうと動いているのだ。

ただし、人手はボラン ティアに頼ったとしても、新聞や雑誌などのプリントメディアとなると経費がかる。そこで、米国で根付いているソーシャルな資金調達システムを利用する。中でも、クリエイターのための資金調達システムとして人気の高い「Kickstarter」が使われている。資金調達システムといっても、実際にはクリエイターのプロジェクトに賛同する後援者(backer)から寄付金を集めるサービスである。資金調達するクリエイターは、公募期間と調達目標額などを指定して後援者を募る(期間内に目標額に達しないときはプロジェクトはご破算になる)。

 

まず先頭を切ったプロジェクトが「Occupy Wall Street Media」。ウォール街の象徴的な金融新聞であるWSJ(Wall Street Journal)に対抗する狙いで、「The Occupy Wall Street Journal」とのタイトルの新聞を発行することを掲げ、1万2000ドルを目標にして賛同者をKickstarterで募った。する と、1696人から目標の6倍以上の7万5690ドルの資金を集めた。
 

・Occupy Wall Street Media

 


 

4ページ・フルカラーの新聞(初版)を、最初、5万部刷り、デモ広場の参加者や地下鉄などで一般人に配った。無くなったので2万部を増刷し、さらにスペイ ン語版を2万部刷った。第2版も10万部印刷した。また、約25万部を6都市で配布する国内版の発行を近く実施する予定という。 



 

ニューヨークの高級雑誌「n+1」は、“Occupy Wall Street”の歴史や分析、ドキュメントを素早くまとめたガジェットを発行するジャーナリズムプロジェクト「Occupy! The n+1 OWS-Inspired Gazette」の賛同者を、やはりKickstarterで募った。公募して1時間で、早くも目標額の2000ドルを突破した。

・Occupy! The n+1 OWS-Inspired Gazette



 

新聞発行の動きはボストンにも飛び火した。タイトルも刺激的な「The Occupy Boston Globe」である。日刊紙と週刊紙の発行を予定している。

・The Occupy Boston Globe



 

ドキュメンタリー・フィルムの制作プロジェクト「99% – The Occupy Wall Street Collaborative Film」も立ち上がろうとしている。40以上の賞を獲得した独立系の映画会社、写真/ビデオ撮影者などの共同プロジェクトである。目標額が1000ドル と少ないが、第一段階の資金集めのようだ。

・99% – The Occupy Wall Street Collaborative Film


 
99% – The Occupy Wall Street Collaborative Film のムービー

 

その他、「Occupy Wall Street needs GIANT PUPPETS to spread our message」「Occupy Wall Street Photo Project」「OCCUPATION: AMERICA」など、多くの反差別関連のメディアプロジェクトが提案されているが、目標額に達せずに寄付金を集められない場合も少なくない。
 
最後に、Kickstarterについて。2009年からサービスを始め、累計の後援者数がこのほど100万人を突破した。毎月、平均して7万5000人の新しい後援者が加わっている。これまでの寄付金の総計が1億ドルに達したという。

(2011年10月24日)


 

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