メディア・パブNYタイムズ、デジタル購読数が
プリント購読数を上回る

(2012.11.06)

NYタイムズのデジタル購読数がプリント(新聞紙)を追い抜いた。

Audit Bureau of Circulations(ABC)のデータによると、NYタイムズ(NYT)のデジタル購読数がプリント購読数を上回った。ABCが公表した9月30日 データで、NYT平日版のデジタル購読数が89万6352となり、プリント購読数の71万7513万を大きく追い抜いた。

NYTの総購読数(デジタル+プリント)は161万3865となり、デジタル購読数が倍増したお陰で1年前に比べ40.3%も増えた。デジタル購読数では WSJ(WALL STREET JOURNAL)を上回り、また他新聞と比べても総購読数のうちデジタル購読の占める割合が56%と際立って高い。米新聞全体では、デジタル率は 15.3%(昨年は9.8%)である。さすがにNYTで、デジタルシフトでは大きく先行しているのだ。

ところが経営面から見ると、手放しでは喜べない。それどころか、厳しさを浮き彫りにしている。NYT社の第3四半期(6月-9月)決算の減収減益を受けて、10月25日には株価が約20%も急落した。

やはり、これまでNYTを支えてきた広告売上が底なしのように減り続けていることが大きく響いている。プリント広告売上高が前年同期比で10.9%減と下 げ止まらない。今回のABCデータでも、プリント購読数が1年前に比べ6.9%減となっており、デジタルシフトがプリント広告売上の下落に拍車をかけている。

さらに市場を悲しめたのは、デジタル広告売上高までも同2.2%減と落っこちたことだ。ABCデータでデジタル購読数が1年前に比べ倍以上も増えているのに、マイナス成長とは・・・。

でも新聞広告売上の長期低落は覚悟しており、それに代わってデジタルコンテンツの有料化による販売収入増に賭けている。ところが甘くはない。NYTの総 購読数が前年比40.3%増の161万3865と急増しているのに、第3四半期の販売収入は前年同期比で7.4%増に留まっている(新聞関係者にとっては 驚異的な伸び率)。広告売上高減の穴埋めができなくて、大きな減益結果を招き、株価が急落したのだ。

また、ABCの購読者数データにつ いても、注意すべき点がある。プリント購読数は新聞紙の発行部数で問題がない。ところがデジタル購読は、スマートフォンやタブレット、それにデスクトップ PCと異なったデジタルデバイスを介して閲覧する。一日で複数のデバイスで閲覧した場合、ダブルカウントされるようだ。つまりスマートフォンやタブレッ ト、それにデスクトップPCの3デバイスでデジタル購読した場合、3回と計数される。

典型的な不況業種と見なされている米国の伝統新聞が、デジタルシフトに活路を見出そうとしているが、もっと根の深い構造的な問題が横たわっており、前途は厳しいと言わざる得ない。
(2012年11月01日)

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