メディア・パブ 楽天が出資するピンタレスト、
EC連携効果が「Shopify」でも実証

(2012.05.28)


 

ピンタレスト(Pinterest)が再び熱気を帯びてきた。昨年後半からの爆発的な急成長で注目を浴びてきていたが、トラフィックの伸びが鈍ってきたこともあって、一時の騒ぎが少し収まっていた。それが、一週間前に日本の楽天がPinterestへの出資を発表したため、またまた騒々しくなりそうである。

Pinterestはネット上の画像をソーシャルキューレートするSNSであるが、これから一段と飛躍していくには海外(米国外)展開と収益化が課題となっていた。そこで、女性向けファッションEC(Eコマース)との連携などに期待が寄せられていた。楽天も、海外展開や女性向けアパレルECに力を入れようとしているので、両社の組み合わせは楽しみである。

Pinterestを活用したECの成功事例は、これまでも単発的に紹介されている。だがこのほどEコマース・プラットフォーム提供会社「Shopify」が、Pinterestとオンラインストアとの連携効果を定量的に評価していたので、追ってみた。

まず、Shopifyの概要から。Shopifyは個人でもオンラインストアを構築できるECプラットフォームである。豊富なテンプレートや決済システムなどが備わっているので、手軽にオンラインストアを開設できるという。30日間の無料トライアルが用意されており、その後は次の4コースのどれかを選んで運用することになる。

Basic:月間29ドル(トランザクション料2%)
Professional:月間59ドル(トランザクション料1%)
Business:月間99ドル(トランザクション料1%)
Unlimited:月間179ドル(トランザクション料なし)

Shopifyのデモビデオがあったので、貼っておく。

Shopifyサービスを利用したオンラインストアは、世界で2万5000店以上も存在する。一般に無名の店舗が多いが、AngryBirdやTesla Motorsなどの旬の店も現れている。また日本のサイトでShopifyの広告バナーを見かけたことがあるが、日本でも海外向けのオンラインストアでShopifyを利用している人がいるようだ。

最近のオンラインストアでは、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアとの連携は当たり前になってきている。それに加えてShopifyでは昨年後半あたりから、同社サービス利用のオンラインストアに対して、Pinterestとの連携を促してきた。その結果、今年の4月には、同社サービス利用のオンラインストアの16%近く(3879店)の商品写真が、Pinterest内に貼り付けられていた(Pin Itされていた)。そして4月には、Pinterest経由で同社サービス利用オンラインストアへのビジット(visit)が29万2943件に達した。一日当たりのビジット数は、2012年1月1日に比べ145%増となった。参照トラフィックの割合でも3.6%と、早くもTwitterと肩を並べている。ユーザー数がが圧倒的に多いFacebookは別格にすれば、Pinterestのオンラインストアへの集客力は高そう。

また、Pinterest経由で訪れたショッパーは他のソーシャルサイト経由で訪れた者に比べ、10%以上購入に至ったという。さらにPinterestから訪問して注文した人の平均購入価格は80ドルで、Facebookから来て注文した人に比べ約2倍であった。魅力的な商品写真に飛びついてオンラインストアに訪れたショッパーが比較的高額な商品を注文したのかも。

Shopifyサービス利用のオンラインストアで最もPin数が多かったストアは、オーストラリアのEstherであった。4月時点でEstherの商品写真がPinterest内で2万5727箇所に貼り付けられていた。Esther自身もPinterestのアカウントを取り、以下のように自社向けのボードに商品写真をPinしているが、Pin数は限られる。

Estherのオンラインストアに、Pinterestユーザーが好みそうな魅力ある商品写真を載せ、その隣にPin itボタンを置くようにしている。より多くのPinterestユーザーが彼らのボードにPinしてもらうように仕掛けていくわけだ。Pinterest内ではバイラル性が高いので、一気にPin数が増えることもある。また自社向けボードに貼り付けた商品写真がRepinされたりもする。オンラインストアに掲載したり、自社向けPinterestボードにPinしている商品写真は、たえず更新しているようだ。

ECプラットフォームで人気の高いeBay傘下のMagentoも、Pinterestとの連携に力を入れようとしている。Pinterest自身も、ECサイトとの連携を強化するために、検索サービスやボード・カテゴリー、ギフト価格などに手を加えていくのではなかろうか。