メディア・パブ WSJ Social、Facebook上で
キュレートしたコンテンツを配信。

(2011.09.26)

インターネットが事実上のソーシャルメディアへ。一つ前の記事で、米国のネットユーザーがインターネット利用時間の22.5%を、ソーシャルネットワークやブログで過ごしていることを伝えた。(こちらの表)ここでニュースメディア関係者にとって衝撃だったのは、“Current events & global news”のために消費する時間の割合がわずか2.6%であったことだ。

これは、新聞社サイトのようなニュースサイトがこのままではじり貧になりかねないという警鐘を鳴らしてくれているのではなかろうか。特に米国では、ソー シャルメディアを牽引するFacebookの影響力が増す一方で、Facebook=新生インターネットとの声までも出始めている。そして WSJ(Wall Street Journal)が動いた。「WSJ Social」のサービスをFacebookアプリとして立ち上げたのだ。

早速、WSJ.com on Facebookを登録してみると、次のような私向けの「WSJ Social」が現れた。

 

これは、今年7月にFacebookが予告していたニュースプラットフォーム「Facebook Edition」ではなかろうか。それにしても有料サイ トのWSJ.comがソーシャル版を先頭を切って登場させたのだから驚きである(New York TimesがFacebook Editionプロジェクトに参画しなかったのは、NYTimes.comのpaywall(課金の壁)と Facebook Editionとが相容れぬ心配があったからと言われている)。

登録したばかりだし熱心なFacebookユー ザーでもないのでFacebook Editionの出来具合を評価する資格はない。でもWSJ Socialの画面から判断すれば、関心のある特定テー マの情報を発信しているユーザーや新聞編集者によってキュレートされた自分向けコンテンツが選ばれていくのだろう。タブレット向けのソーシャルコンテンツ アグリゲーターのFlipboardやZiteなどと相通じるところがある。

WSJの新製品開発のヘッドであるMaya Baratz 氏によると、WSJ Socialでは全てのユーザーが編集者になり、コンテンツのキュレーターとしての役割を高めていく仕掛けが組み込まれているとい う。WSJ Socialで選ばれた記事は、Personalization(パーソナライズされた情報)とSerendipity(思いがけない情報。 掘り出し情報。)がうまく混ざった組み合わせになっていくと期待しているようだ。

大きな課題として、WSJ Socialでキュレー トされた記事に、WSJ.comのPaywall(課金の壁)の向こうに置かれたコンテンツも含まれることだ。頻繁に課金の壁にはね付けられていては、ユーザーは離れていく。そこで上の例のように、Dellなどのスポンサーシップで一定期間、有料記事を無料で読めるようにする。さらにこのような Facebookアプリの人気が高まりスポンサーシップの企業が増えてくれば、WSJ.comをWSJ Socialを介して無料で読めるようになっていくのだろう。

紙がダメになり、そして旧来型Webサイト(現在の新聞サイト)に固執しているとやはりダメになりかねない。ということで 新興インターネットのソーシャルネットワークで新聞コンテンツを流通させていくことにも挑戦しておかなければならない。このようなコンテンツ流通の変革に 同調するかのように、大手メディアサイトがパーソナライズド・ニュース・アグリゲーター(ソーシャル・コンテンツ・アグリゲーター)に急接近している動きも見逃せない。

ユーザーが登録しているRSSフィードやTwitter、Facebookなどの利用履歴を参考にして、そのユーザーにパーソナライズしたコンテンツをアグリゲートして、提供するサービスである。現在はタブレットやスマートフォン向けのアプリとして、人気が高まってきてい る。代表的なサービスを以下に示す。

・Flipboard
・Pulse
・News.me(NYT)
・Zite(CNN)
・Trove(WashintonPost)
・AOL Editions(AOL)

つい最近、CNNがZiteを買収したばかりだ。CNNやAOLの有力ポータル系ニュースサイト、それにNYTやWaPoの有力新聞サイトがソーシャル・ コンテンツ・アグリゲーション・サービスに着手し始めているのだ。そして、Googleまでも Propellerと称するソーシャルアグリゲーターの開発に取り組んでいることが Robert Scoble氏のブログで明らかになった。 ニュースコンテンツもソーシャルアプリとして提供していく動きが、急展開していきそうだ。

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