世界の注目を集める中国
好調なメディアとその背景を知る

(2012.09.19)

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あらためまして、はじめまして。

こんにちは。現在もdacapo GULLIVERで北京のナビゲーターをしている舟橋と申します。2007年から中国北京に住み、プラップチャイナというPR会社で、中国に進出する日系企業を中心とした、企業や団体の中国における広報活動をコンサルティング・支援する仕事に就いています。中国でのメディアを通じた広報・PRという業務の特性上、知りえる中国メディア事情やPR活動について、中国現地に住む者ならではの視点で、これからご紹介出来ればと考えています。

中国メディア、圧倒的なその数と特徴

中国メディアについて知るために、まずは大きいところから捉えてゆきたいと思います。

まず、中国の国土は日本の約26倍の面積を誇り、人口は約10倍の13億人を超えるとされています。同じ中国でも内陸と沿岸部、そして北と南では、言葉も違えば人の性格も違うという、こういった特徴が、メディアの在り方にも大きく関係しています。もはや、中国のメディアが日本のそれとは違うことは、もはや自明の理と言えるかもしれません。

まずはその数。新聞は2,000紙、雑誌は10,000誌、ラジオ局は300局、テレビ局は2,000局あるとされています。確かに、自宅のテレビのチャンネルを回しても、100チャンネルくらい映りますし、街中のニューススタンドや書店を訪れれば、分厚い雑誌がたくさん山積みになっています。街中で新聞を読んでいる人の手元を見ると、いわゆる全国紙にあたるものを読んでいる人が少ないことにも気付きます。その広大な国土ゆえ、全国一律の情報と言うよりは、地域ごとの情報が重視された結果、地方紙が重要視されているのです。

また、メディアの自由化が進み、外資の資本参加も増え、競争が激化していることから、メディアの好不調がはっきりして来たこともポイントです。新聞の読者がネットのニュースに取られてしまった、政府系の機関紙が購読者数を大きく減らし購読者層が高年齢化している、というような例は、一部では日本にも共通したポイントがあるかもしれません。

中国では、雑誌や週刊誌を買うのは、書店ではなく路上のニューススタンドが一般的
雑誌が今まさに、絶好調!

このサイトの読者の方は、きっと雑誌好きが多いことと思います。雑誌をもう少し見てみましょう。まず注目したいのは、その厚さ。人気のファッション誌などは、オフィスのマガジンラックの幅に入りきらず、はみ出してしまうものまで有ります。これは紛れもなく、企業の広告が沢山入っているからで、中国経済の好調さを直接的に表していることに他なりません。

例えば、中国版のELLEは、今年の春からなんと隔週刊、月二回の発行となっています。編集者に聞いたところ、1年前から準備をしていたとのことで、記事の質を落とさずに発行するための体制を創り上げたと、自信を持って語る姿が印象的でした。また実際のところ、最も好評なのは広告主からで、広告を出したいスペースに出せないという企業の不満が解消されたとのこと。さらに、中国版のVOGUEも負けじと頑張っています。こちらの凄いのは、海外版の記事の使い回しがゼロで、完全オリジナルだとのこと。日本の方には違和感があるかもしれませんが、中国では、まだまだ雑誌編集のレベルがそれほど高くなく、そのため外資系雑誌の中国版は、本国の記事を翻訳して使っているものが多いのです。VOGUEはローカルでの品質を上げるために、相当の体制を組んで、品質を維持しているそうです。いずれにせよ、好調さゆえの状況で、羨ましくもあります。

書店の雑誌コーナー、見たような雑誌もちらほら、陳列方法も独特ですね
分厚いVOGUE、陳列のマガジンラックに入りません
中国政府の見えざる手、メディアを見て驚くこと

少し視点を変えてみましょう。それは、中国メディアの政府によるコントロールについてです。

私が北京オフィスに赴任したのは2007年7月1日のことだったのですが、生活を始めて間もない頃、テレビを見ていて驚くとともに、暗鬱な気持ちになったのを覚えています。それは7月7日のこと、この日は日本では七夕。短冊に願い事を書いて笹の葉に、とロマンティックな日ですが、中国ではこの日は日中戦争の原因となる盧溝橋事件が起きた、中国では七七事変と呼ばれる日なのです。テレビのチャンネルを回すと、多くのニュースでは日本との戦争の話題が回顧され、日本と中国の戦争映画が流れています。「これがいわゆる反日教育か。それにしてもこんな大々的におおっぴらにやるものなんだ」と驚いて見入ってしまいました。

また、北京の自宅では、NHKの衛星放送を契約して視聴しているのですが、政治的に敏感な話題をNHKが取り上げるとき、突然画面が真っ暗になって見えなくなることがあります。これはどちらかというと、対日本の話しよりも、中国内部についての話しで、中国政府が公式に発表しているものとは違う内容・論調でそのニュースを取り上げられている時に起こります。初めてこれに接した時は、ソファに寝転がって雑誌を読んでいたのですが、さっきまで聞こえていたニュースが聞こえなくなり、画面が真っ暗なので「電源が消えたのか」と思ったものの、確かめてみるとたしかに電源は入っているのにNHKだけが真っ暗なことに気付いたのです。その後、該当のニュースが終わると、何事も無かったように次のニュースが始まったため、「そういうことなのだ」と気付いたのです。

新車発表に群がるメディア、日本と違うところもあれば、変わらない部分も
突然何も見えなくなったわが家のテレビ
色々な問題や矛盾を抱えながらも、前へ

上記は、政府によってメディアがコントロールされていることを示す、あくまでも一例で、他にもそういった事例は多く有ります。おそらくは、今後もこういった例などをご紹介することがあると思います。

しかし、私はあくまでも中国でビジネスを行うビジネスマンです。中国や中国メディアの抱える問題や矛盾を否定し、批判して終わりにするのではなく、日本と中国が「離れることの出来ない隣人」として、どうやって上手く付き合ってゆけば良いのかということを、読者の皆さんに示唆出来るような形で、これからご紹介してゆければと考えています。