メディア・パブ 米大統領選報道のニュースサイト、
新興メディアに勢い。

(2012.07.04)


 

米国のニュースメディアが今年も盛り上っている。4年ごとに訪れる大統領選挙というイベントに向けて報道合戦が繰り広げられているからだ。

そこで政治ニュースの動向を探るために、政治ニュースのアグリゲーター「memeorandum」を覗いてみた。技術ニュース・アグリゲーターのTechmemeを運用しているGabe Riveraが姉妹アグリゲーターとして提供している。memeorandumがTechmemeのように権威あるアグリゲーターかどうかは分からないが、Wiredでも話題にするように、それなりの人気があるようだ。アルゴリズムに従って機械的に政治ニュースを収集し編集している。

そのmemeorandumに掲載されたニュースサイトのシェアランキングから、最新(2012年6月29日の時点)および4年前(2008年6月29日の時点)のトップ10サイトを以下に示す。それぞれの時点での過去1ヶ月間の掲載回数のシェアである

以前なら大統領選の行方に影響を及ぼすメディアといえば、伝統的な新聞系やケーブル/TV系のマスメディアであった。インターネット時代に入ってからも影響力のある政治ニュースは主に、こうした伝統的なメインストリームメディアが運営するニュースサイトから発信されていた。NYタイムズ(nytimes.com)ワシントンポスト(washingtonpost.com)CNN(cnn.com)などである。

ところが、4年前の大統領選ではニュース環境が大きく変わってきた。まず新興の政治系ニュースサイトが勢いよく台頭してきた。その代表が、2004年生まれのThinkProgress、2005年生まれのHuffington Post、それに2007年生まれのPoliticoである。4年前の掲載ランキングでも既に、これら新興ニュースサイトはトップ10に食い込んでいた。また4年前のランキングで6位に付けていたBen Smith’s Blogは、Politicoの政治ジャーナリストのブログで、Politicoサイト内のコンテンツである。

さらに4年前の選挙報道では、フェースブックやツイッター、ユーチューブなどのソーシャルメディアも大きな影響を発揮し始めた。新興の政治系ニュースサイトが一気に浮上してきたのも、ソーシャルメディアによって新興サイトの政治ニュースが伝播されていったからである。伝統メディアも競って、ソーシャルメディアとの連携に力を入れ始めた。もちろん、候補者陣営も選挙活動に、ソーシャルメディアをフル活用した。

そして4年後の最新ランキングでは、上の表でも明らかに、新興ニュースメディアが勢いを一段と増している。PoliticoがワシントンポストやCNNを追い抜いて2位に浮上している。そして、今話題のBuzzFeedが7位に突然出現し、台風の目になろうとしている。BuzzFeedは2006生まれのエンターテインメント系情報発信サイトであったが、先に紹介したPoliticoのBen Smith氏を2011年12月に引っこ抜いて編集長に任命したばかり。そして早速、政治分野もカバーするようになった。さらに驚くことに最近、NYタイムズと大統領選報道で提携することも発表した。

以下、Politico, ThinkProgress, BuzzFeed, Huffington Postの新興ニュースサイトの画面を載せておく。

技術ニュース分野では前々から、TechCrunch、Verge、Engadget、GigaOM、Business Insiderなどの新興ニュースサイトが伝統メディアサイトを凌ぐ勢いで勢力を増している。すでに技術分野では、NYタイムズをはじめとする伝統ニュースメディアが、新興メディアからライセンス契約してコンテンツを購入するのが当たり前になっている。政治ニュース分野でも同じ動きが出てきている。Politicoのコンテンツは、多くの伝統メディアのニュースサイトで利用されている。

また今年のピュリツァー賞をPoliticoとHuffington Postが受賞したように、新興ニュースサイトの勢いは止まりそうもない。日本と違って米国では、伝統的なマスメディアから優秀なジャーナリストが新興ニュースメディア(ブログ出版社も含む)に流れていっている。たとえばPoliticoも、ワシントンポストのジャーナリストが中心になって立ち上げた。