メディア・パブ ビジネス重視で豹変するツイッター、
メディアビジネスへの傾斜強める

(2012.08.31)


 

Twitter社がサードパーティーアプリを締め出し始めている。LinkedIn、Instagam、そしてTumblrと、人気のソーシャ ルネットワーク系サービスで、ツイッターAPIの一部利用が止められてしまった。この流れは本格化しそうだ。Twitter社はサードパーティーに対し、 特定のツイッターAPI利用を禁じたり、API利用に制約を課していくと宣言したからだ。APIを使ってツイッターアプリを開発したり提供しているサード パーティーにとって、はしごを外されたようなものだ。

これまでは、Twitter社がツイッターAPIを開放しデータを自由に使わせる ことにより、サードパーティーが面白いアプリを次々と開発してきていた。つまりユーザーを含めた外部パワーにより、リアルタイムサービスの新しい世界が切 り拓かれてきたといえる。今ではツイッターの公式機能として組み込まれているハッシュタグやリツイートなども、外部で生まれた機能である。便利なクライア ントアプリもモバイル版を含めて、サードパーティー製が大いに利用されてきた。サードパーティーから出てくるツイッターアプリのお陰で、ユーザーはツイッ ターの世界を楽しんでこれたのだ。

数年前にツイッターが登場したころは、ツイッターは140字ツイートのストリームを転送するコミュニ ケーションツールでしかなかったが、ツイッターAPIを利用した付加価値アプリは主にサードパーティーが競って開発してきた。その結果、ユーザーがどんど ん増えてきた。そうなると、本家のTwitter社も“おいしい”アプリをもっと積極的に提供していきたくなる。そこで次第に、外部で生まれた人気機能を ツイッター本体に取り込んだり、サードパーティー製アプリ(例えば、TweetieやSummifyなど)を買収したり、一方で不都合な外部アプリ(例え ば、MobberやThunderclapなど)を排除するようになってきた。

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理想を掲げAPIを開放してユーザー数を増やしていく段 階は卒業し、これからは安定したサービスを継続して提供しながら規模を拡大させていかなければならない段階に入ってきたのだ。上場するためにも、収益化に 本腰を入れなければならない。そこでまず同社が打ち出したのは、ツイッタークライアントにおいてユーザーエクスペリエンスの一貫性を保つようにすることで あった。これからツイートなどは決められたレイアウトルールで表示しなければならなくなったのだ。TweetBotのようなツイッタークライアントも応じ なければならないだろう。これから、自由に付加価値を高められないツイッタークライアントなんかを新たに開発するサードパーティーはもう現れてこないはず だ。つまり、ツイッタークライアントはほとんどTwitter製となっていき、同社のコントロール下で強力な広告メディアとしてツイッターを展開させてい きたいのだろう。

さらに、APIを利用するツイッターアプリには厳しい制約がかけられる。ツイッターアプリのユーザー数は最大10万人 までという制約だ。現在既に10万人以上を抱えるアプリに対しては、200%までをユーザー数の上限としてサービスを継続できる。いずれにしろ、上限を超 えたユーザー数に向けてサービスを実施する場合はTwitter社からの特別の許可を貰わなければならない。今年の年初にユーザー数300万人を突破して いるHootSuite にもブレーキがかかるのか。また、単位時間でのAPI実行回数にも上限が設けられる。要するに、Twitter社が力を入れているサービスと競合するアプ リを、弱体化させようとしている。

米NBCのロンドンオリンピック用ハブページで協力したように、Twitter社はメディアへの傾斜 を強めている。Summifyの買収からも分かるのだが、アグリゲーション/キューレーション分野に力を入れいこうとしている。そのため、モバイル向けの 人気アプリであるソーシャルマガジンのFlipboardが、次の標的になるのではと一部のブログで騒がれている。個人的にはFlipboardで、ツ イートをリンク先コンテンツとセットにした形で閲覧しているので、気になる動きである。StorifyやTimehopなどの今後のビジネスにも波及する のだろうか。

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いまのところ、API利用しているサードパーティーの多くは、今まで通りサービスを継続させると、一見平静さを保つようにしている。だが我慢が出来なくなったのか、一部サードパーティーは、FCCに独禁法違反でTwitter社を訴えようとしている。

こうした動きは、これまでのネットビジネスでもよく見かける風景である。数億人から10億人規模のサービスを展開していこうとするには、Twitter社 も新しい戦略を立てなければない。これまでのAPI利用のサードパーティー製アプリは、パワーユーザー向けが多かった。これからユーザー層のすそ野を広げ ていくためには、一般ユーザーを相手に、純正アプリでカバーしていこうとする。一般ユーザーにとっては、これまでのように頻繁に起こっていたシステムダウ ンが無くなるほうが有難いかもしれない。