池田美樹, 池田美樹のLOVE♥ CITY WALK何も置いていないデスクって!? 整理整頓と創造力の関係。

(2008.09.02)
 私の会社のデスクは常にきれいだ。と書いても、異議を唱える人はおそらくいないだろう。上に本立てや書類ケースのたぐいは何も置いておらず、電話機とメモのみ。もちろんパソコンはあるが、ノートなので、帰宅するときには引き出しの中にしまう。かくして、私が不在の時には何も置いていないデスクとなるわけだ。

「そんなに何も置いていないつるんとしたデスクから、創造的なものが生まれるわけがない」と、ある同僚。「カオスの中からこそ、物事は生まれ出るものじゃない?」
 うーん、確かに毎回、企画会議の前にはうんうんうなって七転八倒。デスクの上のカオスが際立つ同僚は、素敵なアイディアを次々に繰り出してくる。

 しかし、どうだろう。試験勉強を始めようとしたとたん、辺りを整理したくなった経験はないだろうか? 物事を始める前は、やはり身辺を美しくしたくなるものなのよ、という私を、同僚は「あれは試験勉強から逃避したいという心理の現れだ」と一蹴。

 何も置いていないデスクというものは、人を引きつけるものらしい。朝から出社してみたら、誰のだかわからない書類やペンが置かれて、私が帰宅した後にここに移動して仕事をした人がいることがわかったり、ある時など、飲みかけのコーヒーやビール缶などが転がっていたこともある。夜中のカフェ状態だったわけだ。ほほえましいイタズラが仕掛けられていることもあり、そんな時はなんだかうれしくなったりもする。

「デスクをそんなにきれいに保っていられるのはなぜ?」と、よく聞かれる。私の場合、その極意はたった二つしかない。ひとつは「捨てること」である。また必用になるかも、というものが本当に必用になることは、ほぼないと言っていい。ある時、そのことに気がついてから、「もしも」のものはみんな捨てることにした。困ったことは、今のところ一度もない。ちなみにもうひとつは、「使ったものは元に戻すこと」。実に簡単だ。

 話は戻って、「創造」の話。アートディレクターの佐藤可士和氏の本『佐藤可士和の超整理術』で、オフィスの写真を見たときに仰天した。美しく、余計なものは何もないオフィス。それどころか、佐藤氏は、余計なものを持ち歩きたくないため、外出にバッグすら持って行かないのだという。
 つまり、先の同僚の「カオス説」はあっさり崩れるというわけだ。こんなに美しいデスクから、素晴らしいものを次々に作り出すクリエーターがいるわけなのだから。

 ん? と、いうことは、デスクの美しさと創造力とは関係ないわけで、企画会議のたびに苦しんでいる私って……。

 

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朝、出社してみたら、デスクの上に同じチームのみんなが一つずつ、マスコットを置いていた。控えめな前進ぶりに思わず微笑。

弊社から発売されたばかりの『ポパイ特別編集 佐藤可士和デザインペディア』。佐藤氏のオフィス「SAMURAI」の様子も見ることができる。

(2008年9月2日 anan編集部 池田美樹)