池田美樹, 池田美樹のLOVE♥ CITY WALK展示会を回りながら考えた、編集者と靴とのいい関係。

(2008.05.21)

 年に数回、「展示会回り」という仕事がある。これは、各アパレルメーカーがメディアの人間、たとえば私達のような雑誌編集者に向けて、新作を先に見せてくれる「展示会」を、あちこち回るということだ。

 たとえば今の時期は、今年の秋冬物の展示会シーズンである。秋冬物!? そう、私達は、まだ夏も訪れないうちからその年の秋や冬に、どういうトレンドが訪れそうなのか、見て回っているというわけ。

 展示会は、同じ時期にまとめて行われることが多い。しかも、場所は各社のプレスルームやイベントスペースなど、都内各地。つまり、「今日は展示会回りをする」と決めて、気合いを入れて歩くことになる。

 先週は、この秋冬の展示会が多かった。暑い中、ニットやコートを手に取って見ていくのは、いつでも不思議な感覚がする経験だ。ここで、「なるほど、ニットはこういうスタイルが多いんだな」「今年もダウンが出てきそう」「秋にはこういう色が街にあふれそうだな」ということをつかんでいく。それがいずれはページになるということだ。

 この展示会回り、実はかなりの移動をこなす肉体労働。以前はおしゃれなインポート物のパンプスやサンダルでまめや靴擦れを作り(ちなみに私はフランスの「ミッシェル・ヴィヴィアン」の靴のマニアだ)、文字通り“血のにじむ”仕事だったのだが、最近、ちょっと様子が変わってきた。

 それは、こういった歩く仕事の時に、編集者が、美しいおしゃれな靴にこだわらず、歩きやすい靴を履いているケースが多くなってきたということ。特に我が『anan』編集部に関していえば、「MBT」が人気だ。これは、マサイ族が裸足で歩くときの歩行技術をテクノロジーで実現するという靴。実は女性編集者やスタイリストの間で密かに流行しており、どんな時にも絶対にきゃしゃでおしゃれな靴を履いてくるスタイリストが、「実は私、休日にはMBTを履いているの」とこっそり打ち明けてくれたことがある。

 私が愛用しているのは「ドクター・ショール」。この靴も、以前、スタイリストから教えてもらったものだ。普段から歩くことの多いスタイリスト達は、編集者よりも、歩きやすく快適な靴には敏感なのかもしれない。

 なかでも出番の多い「ペブル」というシリーズは、青いやわらかな小石状の突起が足の裏を軽くマッサージし、実に気持ちいい。堅い床で立ちっぱなしになるスタジオ撮影時に重宝している。

 それで、展示会を回ってみて、今年の秋冬にどんなファッションが流行しそうだと感じたかって? ああ、残念。それはここではお知らせすることができないのだ。もし知りたければ、『anan』では年に2度、そのシーズンのファッショントレンドを紹介する特集を組んでいるので、ぜひ書店で手にとって確かめていただきたい。

 私たちが「足で集めた」情報、ぜひ皆さんも書店まで「足を運んで」見てくださるとうれしいです。

展示会では、新作をモデルが着て披露してくれることもある
展示会では、新作をモデルが着て披露してくれることもある
とあるブランドの展示会場
私が愛用している「ドクター・ショール」の「ペブル」。見た目もかわいい