片岡英彦のNGOな人々 (Non-Gaman Optimists)“お笑い”で社会問題を伝える
“たかまつなな”というメディア

(2013.09.09)

「NGOな人々」”Non-GAMAN-Optimist”とは「ガマン」していられず、チャレンジをし続け、決して諦めない「楽観人」のこと。NGOな人々へのインタビュー第32回目のゲストは、“お笑い”を通して“社会問題を伝える”、現役、慶應義塾大学生で“社会派芸人”の、たかまつななさんです。

■たかまつなな プロフィール
フリップが相方・社会派ピン芸人。サンミュージック所属。慶應義塾大学総合政策学部2年生(フェリス女学院中高卒)。夢は、お笑いを通して、社会問題を提起すること。特技は論文執筆。趣味は登山。読売新聞こども記者・国連軍縮会議でのスピーチ・野口健さんとの富士山清掃等の経験から、社会問題を身近に伝える方法を模索中。

社会派ピン芸人、たかまつななさん photo / 渡辺遼
◆二十歳になって変わったこと

片岡:今日(インタビューの日:7月5日)が二十歳のお誕生日、おめでとうございます。

たかまつ:ありがとうございます!

片岡:何が一番変わりました?

たかまつ:年金の通知が届きました。お酒が飲めるのも嬉しいです。でも、一番大事なのは、選挙権を得たことですね。選挙に行ったことがないと投票率ネタはできないので。

片岡:「社会派芸人」ですもんね。“お笑い”はいつからですか?

◆私がお笑いを始めたら、学校内でお笑いをやる人が……

たかまつ:初めてステージに立ったのは中3です。それより前は人前に立つのは絶対に嫌でした。小学生の時は、牛乳を飲んでいる男の子の前で、おもしろいことを言って吹かせたり、いたずらしたりは好きでしたが、まさか自分がお笑い芸人になるとは思ってませんでした。芸人になってからは、先輩の前で牛乳を吹かせたりはできませんから、逆に真面目になっちゃいました。

片岡:今までで一番笑ったテレビ番組は何ですか?

たかまつ:正直、あまりバラエティ番組は見ませんでした。小学6年から中学にかけては「エンタの神様」が流行っていました。あと「爆笑レッドカーペット」や「爆笑レッドシアター」が始まりました。女子高だったので、「お笑いポポロ」を持ってる子でいっぱいでした。

片岡:お笑い芸人さんやジャニーズに憧れる女子高生は多いと思いますが、ご自身が「お笑いをやる」ということで、仲間からは浮いたりはしなかったですか?

たかまつ:元々みんなから、「変わっている」とか「いかにもやりそうだ」と思われていましたので、私がお笑いをやり始めたことで、学校内でお笑いをやる人が増えました。

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片岡:コンビを組もうと思ったことは?

たかまつ:実際に、コンビを組んで解散したことがあります。若い年齢で始めたということもあり、お笑い自体をやめる子が多かったです。「お笑いをやめて公務員になる」とか「アメリカで宇宙工学を習いたい」という理由です。一人では心細いので、今でもちょっとだけコンビを組みたいと思うこともあります。

片岡:一人で活動する「いいこと」はありますか?

たかまつ:気を使わなくていいことですね。コンビで一緒にネタを作るとなると、お互いの考えをすり合わせていかなくてはいけません。どちらかが「これ、おもしろくない」と思いながらやっていたら、うまく行かないんです。とはいえ、両方が面白いと思うことだけやろうとすると統一性がなくなってしまいます。そこが一番難しかったです。

片岡:「自己完結型」なんですかね?

たかまつ:私は「明日にでも売れたい」という気持ちが強く、結構ガツガツしているのですが、相方は逆に「もっとゆっくりやっていこうぜ」というタイプが多かったです。

片岡:きっと「せっかち」なんですね。周りがなかなか付いて来られない。

たかまつ: 3人とか4人いたら違うんでしょうが、2人というのが多分キツいんだろうと思います。


アルピニストの野口健さんとの出会いが“社会派”を志す原点。
◆社会問題と自分の存在意義

片岡:社会問題には昔から興味がありましたか?

たかまつ:最初に興味を持ったのは小学4年生でした。アルピニストの野口健さんが富士山で環境学校を開催されて参加しました。初日に、野口さんだからこそ入れるような、すごくキレイなルートを歩かせてもらいました。「やっぱり富士山って超キレイだなあ~」と思ってめちゃくちゃ感動しました。翌日、「今日はゴミ拾いをしましょう」ということになり、青木ケ原樹海に行ったんです。3班に分かれて樹海に入ったところ、バスや車や注射の針が不法投棄されていました。

片岡:「ゴミ拾い」のレベルじゃないですね。

たかまつ:そんなものを見たのは私たちの班だけかと思ったら、他の班の人たちもみんな見たことがわかって、すごく問題意識を持ちました。「大人は、現実から目を背けてしまう」「大人だからこそ、いけないと思っていても手をつけない」と健さんがおっしゃったのが、とても印象的でした。そのことをみんなに伝えようと思って壁新聞を作りましたが、壁新聞では、何も変わらないよなと思い、読売新聞のこども記者になったんです。でも、実際に記事を書く時に、「環境問題は社会面で書くから」と言われて、だったら、お笑いでと……と。

片岡:「どうやって伝えるか」を選んだのですね。でも何で「お笑い」だったんですか?

たかまつ:最初はテレビ番組のプロデューサーになりたくて、テレビのスタジオ観覧によく足を運びました。「社会で起こっている出来事を、番組内のコーナーで、最大限に面白く作り上げて紹介する」というやり方も考えました。 一方で、自分自身がメディアになることで、自分のやりたいことがもっと自由にできるとも思いました。例えば、有名人がボランティアに行ったという記事をブログに上げると、社会的にも影響がありますよね。そういう風にしたいと思ったんです。 大学に進むかどうかは迷いました。だけど、「社会問題」と「お笑い」の両方を扱う人は、日本中探しても、なかなかいないと思ったんです。社会問題について、ある程度知識があり、さらにお笑いもでき、「どういう形で融合させるか」が、私の一番の存在意義で、チャレンジだと考えて、大学に進むことにしました。


本当の自分の目的は「社会問題」を分かりやすく伝えることです。
◆入試の面接もお笑いで攻略

片岡:大学入試は「AO入試」だったそうですが「AO入試」って何ですか?

たかまつ:推薦入試の一つです。総合的な能力で評価をするというもので、学校によって色んな入試の形を取っています。「一芸入試」とは違うんですよ。

片岡:まさか、面接でお笑いを?

たかまつ:はい。ネタをやりました。私は書類選考の志望理由書に、「お笑いを通して社会を知ってもらいたい。」「そのために大学で勉強したい」と書きました。「わかりやすく伝えることを、お笑いを通じて実現します」と書いたんです。でも、いざ一次試験に合格して、二次のプレゼンテーションになった時には迷いました。

片岡:何を迷ったのですか?

たかまつ:ネタが面白くなかったからです。「おもしろく、人にわかりやすく伝えたい」と言っているのに、内容がカチカチでした。きれいごとばかり言って面白くないと思いました。

片岡:面接官は何人でした?

たかまつ:3人でした。面接官にクイズを出しました。持ち時間は7分間でした。

片岡:大学の教授の前でネタをやるのと、小林さん(事務所のマネージャー)の前でネタをやるのと、どっちがやりにくかったですか?

たかまつ:それは小林さんの前ですね。大学の教授はすごく笑ってくださいましたから。でも、最後に自分の正直な気持ちを伝えました。「面接で、お笑いを、やっていいか迷いました。でも、私は社会に対して疑問符を投じて行きたいので、自分の置かれている環境や状況に縛られず、自分が伝えたいことを発信して行きたいと思います」と。内心、怒られるかと思いましたが、「キミはもっと自信を持った方がいい。自分の得意なコミュニケーションツールを使うのはすごくいいことだから、自信を持ってもっとやりなさい」と言ってくださいました。感動しました。

片岡:コミュニケーションツールというのは今よく使う「フリップ」のことですか?

たかまつ:「お笑い全般を通して」という意味だったと思っています。


入試の時の「フリップ」を、お笑いネタに作り変えたらウケるかな~と思って使い始め、試行錯誤しているうちに何とか形が見えてきました。
◆相方はボケ担当のフリップ
片岡:「フリップ」を使う芸というのはいつ思いついたんですか?

たかまつ:フリップを使うようになったのは、その大学入試の時でした。入試には相方を連れて行けないからです。自分一人で、面白くわかりやすく伝えなければいけません。どうしようかと思った時に「フリップ」を使うことを思いついたんです。その後、ライブで漫才をやっても全然ウケなくて、入試の時の「フリップ」を、お笑いネタに作り変えたらウケるかな〜と思って使い始め、試行錯誤しているうちに何とか形が見えてきました。

片岡:確か、最初は「お嬢様×フリップ」という構成で、今は、「お嬢様系」と「フリップ系」と「お嬢様×フリップ」と3つのパターンがありますよね。ツッこむ相手がフリップだと「フリップ」がボケ担当の相方ということですかね。

◆会議室貸切での左脳的ネタ作り

片岡:変な質問ですが、「自分をプロデュースするたかまつさん」と「プロデュースされるキャラクターとしてのたかまつさん」って、全く別人間ですか? お笑い芸人の格好をしている時って、普通、芸人さんは少なからずキャラを作りますよね。

たかまつ:大学生として大学に通う時はさすがに違いますけれど、普段はそんなには変わらないです。

片岡:楽屋に入ると全く喋らない人とか、たまにいますが、そういう“落差”というか”起伏“は激しいですか?

たかまつ:それはあります。ステージ上かそうでないか、「オン」か「オフ」かという違いはあります。今日のようなインタビューですと、自分の考えをより正確に伝えたいと思いますし、言葉遣いとか、どの話をしたらいいかを考えるので、ステージの時のテンションとはずいぶんと違います。

片岡:ネタを思いつくのは授業中が多いと聞きましたが。

たかまつ:パッとネタがヒラメく時もありますが、私の場合は、よく会議室を“貸切”にして集中してネタ作りをしています。ホワイトボードに一人でネタを書いて、パソコンで調べて、隣の図書館で本を借りてきて……という作り方です。

片岡:完全に「左脳」を使ってますね。

たかまつ:会議室でネタ作りをやると、ボンボンと5本ぐらいネタが出来る時もあります。全然できなくて「明日ネタ見せだ。どうしよう……」という時もあります。

片岡:作家とか脚本家の方が旅館に篭って仕事するのと似てますね。

たかまつ:一人の時間が結構好きなんです。

***

片岡:社会問題を「お笑い」にする時のコツはなんですか。

たかまつ:私の方が教えて頂きたいです。高校生の時に原発のネタをやって、お客さんが、「ウケていない」ではなく、明らかに「ひいている」のを感じたことがあります。主催者の方に怒られて、以降は私だけが事前にネタ見せをするように言われました。「(社会の)全部のテーマをネタとしては扱えない」のが正直なところです。

片岡:「過激さ」「タイミング」「タブー」とかの問題ですか?

たかまつ:「誰が言うのか」というのもありますね。知名度だけではなく、「風貌」や「声」も含めてです。コンビの頃の話ですが、相方は、本当は真面目なのに、茶髪でチャラチャラしているように見えました。漫才をやった時、その子がボケたら大爆笑なのに、私がボケたらお客さんがひくんです。「なんで私はチャラく見えないんだろう」とか「チャラく見せよう」と頑張っていた時期もありました。 それで、「自分がどう見られているのか?」と考えたら、「真面目に見える自分は説得力がある」ということがわかりました。自分の意見を言うというよりも、柔らかいもの、例えば童話やアニメのようなホンワカしているものに対して、真面目な事を言うとウケやすいと。

片岡:ツッコミを入れるのですね。

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たかまつ:今、「桃太郎のネタに法解釈を入れる」というネタをやっているんですが、それなんか正にそのパターンです。「お嬢さんネタ」もそうなのですが、皆さんが「こうだろう」と思い込んでいるものに対して、「こういう見方もあるんじゃないですか?」という切り口を取り入れてからウケることが少し多くなりました。 ある時、大学での犯罪心理学の授業で、GPSを性犯罪前歴者に付けると、再犯率が「0」になるという調査があることを知りました。これは単独ライブでしかやれないネタですが、「ネタに出来るな」と思いました。私は、よく「お前、ブサイクだな」とイジラれるので、「ブサイクに見える自分」と「性犯罪前歴者」という題材とで、どういうネタにすればいいか考えました。

そして、「ブサイクだからこそ、性犯罪を犯される立場になりたい。」つまり「女として認めてもらいたい。」だから「この条例案を通したい」いう話の流れであれば、違和感なく単独ライブの場では、受け入れてもらえると思ったんです。

片岡:自分を少し「落とす」のですね。

たかまつ:そうです。ここまでたどり着くのにめちゃくちゃ時間がかかりました。

片岡:「女らしい女と男っぽい女」というネタも、「男っぽい女」の立場で自分を落としているから面白いのですね。

たかまつ:先輩に、「ネタをやって嫌われることが多いんです」と相談したことがあります。「人は、自分より相手を下に見た時に笑いが取りやすい。だから、ネタの中で自分を『ブサイク』と落とすのはいい」、と言われ、その通りだと思いました。もうちょっと自分を客観的に見られる要素が増えていったら、ネタに使える題材も、もっと増えていくと思います。今はまだ、「ブス」「男に間違えられる」「お嬢様っぽくない」というところに留まっていますが、もっと内面的なこと、例えば先程言って頂いた「せっかち」など、自分のネガティブな部分を社会問題とリンクしていきたいと思います。


「興味がない人に興味を持ってもらう」ことが自分の最大のテーマです。まずは、テレビなどのメディアに多く出て、有名にならないといけないと思います。
◆お笑いは手段、だけどめちゃくちゃ好き

片岡:ジュネーブで開催された、国連の軍縮会議に参加された時のことについてお聞きします。どちらかと言うと「反響がなかった」と聞きましたが、ちょっと物足りなかった感じですか?

たかまつ:こども記者をした時も、大使の活動をした時も思ったんですが、会場ではすごく盛り上がるんです。大使として訪問した場所の方達もすごく喜んでくださいました。でも、そのテーマに興味がない人は、全く興味を示してくれないことに気づきました。軍縮会議では核兵器のことをお話しさせていただいたのですが、核兵器に興味がある人からは反応があって、興味がない人は興味がないままなんです。

私は、興味がない人に、他人事じゃなくて自分の事として捉えてもらうにはどういう手法がいいか、という風に考えていたので、それが出来ないならば社会問題の専門家に任せればいい、もっと問題意識の強い人にやってもらえばいいと思いました。

片岡:その時はネタではなく、普通にやったんですね。

たかまつ:はい。ネタではありませんでした。興味がない人からの反響がなかっただけで、興味のある人からの反響はありました。

片岡:以前、ミスキャンパスの3人の女子大生の方たちにインタビューさせてもらったことを思い出しまいた。みなさん「ミスキャン」ですからとてもキレイです。でも、その方達の本当の“特徴”は、ただ「ミスキャン」であることではなくて「社会貢献活動をしている」ということでした。「ミスキャン」であることが「手法」なのだと仰っていました。普通の女子大生だと、いくら社会貢献活動やボランティアをやっていても注目されない。でも「ミス○○大学」だとメディアも注目します。あまり知られていない社会問題が、結果的にマスメディアで取り上げられる。だから、それを狙ったそうです。もっとも私自身も「ミス○○大学」だったからこそ、インタビューさせて頂いたのですが。

たかまつさんの場合、「お笑い」が、自分が伝えたい社会問題を多くの人に伝えるための手段ということでしょうか?

たかまつ:そうだと思いますね。一方で「お笑いがめちゃくちゃ好き」というのも理由です。すごく好きなんです。手段って言ってしまうと少しドライですけれども、本当の自分の目的は「社会問題」を分かりやすく伝えることです。


「なんで私はチャラく見えないんだろう」とか「チャラく見せよう」と頑張っていた時期もありました。
◆テレビに出て、有名にならないと意味がない
片岡:「ニュース等をわかりやすく解説するキャスターで、お笑いも」という人と、「お笑いのステージに立ち続けながら社会派ネタをやる芸人さん」とだと、将来はどちらになりたいですか?

たかまつ:前者ですね。「キャスター」と、ひと言で言ってしまうとちょっと違いますけれども。結局、「お笑い」という要素がなく「平和大使」や「こども記者」の延長ですと、例えば、原発反対のネタをやっていたら、原発反対の人達からお声がかかり、その人達の前でネタを披露すれば「そうだね」と盛り上がって笑ってくださると思うのですが、そのテーマに興味がない人に興味を持ってもらうということにまでは繋がりません。「興味がない人に興味を持ってもらう」ことが自分の最大のテーマなので、まずは、テレビなどのメディアに多く出て、有名にならないと意味がないと思います。

片岡:自らがメディアとなって、風刺的に社会を「刺していく」感じですね。

たかまつ:まだ、そこまではイメージが沸かないんですけれども。

◆印象深い人

片岡:これまでに出会った人の中で「印象深かった人」を挙げてください。

たかまつ:いっぱいいらっしゃるのですが……まずは、(環境学校でもお世話になった)野口健さんですね。

片岡:野口さんは「登山家」で「社会問題」もというスタンスの方ですね。

たかまつ:健さんは講演会などでも観客を見て、あまりテーマに興味がなさそうな方が多いとおもしろい話に話題を切り変えます。その一方で、自分の伝えたいことはしっかりと的を得て話されます。バラエティ番組に出演された時にも、社会問題的な要素を出していい番組と、そうでない番組とでしっかり使い分けていらっしゃいます。バラエティでは面白い話をし、BS等で自分に視線が集まるドキュメントなどでは真面目なお話をされています。先日、健さんの講演会の時に、「5分、時間あるよ。お客さん集まってるよ」と、お時間をくださって、ネタをやらせていただきました。すごく私を応援してくださいます。

◆同世代へのメッセージ

片岡:最後の質問です。最近、自分が本当になにをやりたいのかもわからなくて「自分探し」をいつまでも続ける人や、「自分探し」さえもしないで、最初から「諦めモード」の人もいたりします。そういう人と自分はどこが違うのか教えてください。

たかまつ:1つは、「時間がもったいない」といつも思います。時間は戻って来ません。私は小学生の頃、サッカー選手になりたかったんです。「親に反対されているから」とか「私は勉強しなくちゃならないから」とか、「学校に部活がない」とか、色んなことを言い訳にダラダラして、勉強にも身が入らない時期がありました。今は、お笑いをやりたいと思うので、例えお笑いと関係がないことでも「これは芸に繋がるかもしれない」と思って、なんでも一所懸命やれるんですが、あの頃のダラダラしていた自分にも「もったいないよ!」と言いたいです。

2つ目は、「自分のやりたいことは、舞い降りてくるわけじゃない」と思います。自分から探しに行かないと、出会いも自分のやりたい事も生まれないと思います。だから、とにかく出歩いた方がいいと思います。私も、最初はプロデューサーになりたかったのが、テレビの番組観覧に行ったら違うと気付き、落語がいいかなと思って寄席にも行ったり、新聞記者もやりたいと思ってやってみたらやっぱり違うなと思ったり、やってみなきゃわからない事って、ものすごく多いなと思います。今は「社会派お笑い芸人」が自分の進む道だと考えていますが、やっていけるかどうかは、まだわかりませんが、興味があったらまずはやってみようと思います。

3つめは、「若いうちは、通常では考えられないような人が会ってくれる」ということです。「学生で、こういう事に興味があります」というと、普通の場合だったら、高い授業料や取材料を取るような方たちでも会ってくださったり、真剣に将来の事とか考えてくださったり、可愛がってもらえることが多いです。

***

たかまつ:最後に、「若いうちしか怒ってもらえない」ということです。私は今、すごく怒られるんです。親にも、大学の教授や先輩にも、バイトでも。

片岡:そりゃ、お笑いをやっていたら、怒る方は怒りやすいですよね。

たかまつ:最初は、毎日イライラしていました。「なんで?こんなに!私ばかりが怒られるの!?」って。大学生になってから、急激に怒られる回数が増え、それでも今までは、「19歳だから大丈夫だよ」という感じだったんですが、二十歳になった以上、もうそれはないなと思います。

片岡:お笑いの先輩には、そういう意味では温かい方も多いですよね。「ダメ出し」をしてくれる人というのは、陰で悪く言う人とは比べ物にならないくらい温かい。

たかまつ:早くからお笑いを始めて、すごく得だったなと思います。25歳や30歳から始めた人には先輩方も怒りにくいと思います。若いうちに色々やったほうが人に怒られるよ、という「ドM」な意見です。

片岡:いいお話ですね。ありがとうございました。


取材当日が20歳のお誕生日でした。
◆インタビューを終えて

「芸人」さんに、ご出演頂くのは、今回のたかまつさんが初めてでした。これまで「芸人」の方へのインタビューは避けていたのが正直なところです。(芸人の方の独特の『間』やテンポの良さを、文章にするのは難しく、その方の持つ『芸風』以上に面白い原稿にするなんて、私にはとても荷が重いですから。)たかまつさんは、 “社会派芸人”を目指されていたので、 “社会派”である以上、よくインタビュー記事にある「(笑)」というありきたりの「間」を一切抜きました。一番伺いにくかった質問は「お笑いが、自分が伝えたい社会問題を多くの人に伝えるための手段ということでしょうか?」という質問でした。芸人にする質問としては不適切かもしれません。あえて遠慮なく質問させて頂いたところ、「そうだと思います」と肯定され「本当の自分の目的は社会問題を分かりやすく伝えることです。」と仰いました。その一方で「お笑いがめちゃくちゃ好き。すごく好きなんです。」と。この「手段」は「手段」。でも「大好き」。というある種の割り切った感性が、私はとても新しいものだと感じました。「お笑い」(大衆性)が「ドキュメント」(リアイリティー)化した大きな流れの中で、社会問題を伝達する「手段」としての「お笑い」という発想は、私の感性のずいぶんと先を行っているのかもしれないと思い、強い興味を感じたのでした。