片岡英彦のNGOな人々 (Non-Gaman Optimists)~超世代対談 前金融大臣中塚一宏&テレパシー~アイドルが日本の
景気を良くする!? ~前編~
(2013.05.11)
「NGOな人々」”Non-GAMAN-Optimist”とは「ガマン」していられず、チャレンジをし続け、決して諦めない 「楽観人」。NGOな人々へのインタビューです。第27回目は2回に渡り、野田内閣で金融担当大臣等を務められた中塚一宏氏に“宇宙初”のエアギター・アイドルのテレパシーの皆さんに、日本の経済の素朴な質問や、今後のチャレンジについてなど、対談形式で色々な質問をして頂きました。まずは【前篇】をどうぞ。
■中塚一宏氏プロフィール
中塚一宏(なかつか・いっこう)1965年生まれ。京都大学工学部卒。内閣府副大臣(野田内閣・野田第1次改造内閣・野田第2次改造内閣)、復興副大臣(野田第1次改造内閣・野田第2次改造内閣)、内閣府特命担当大臣(金融、少子化対策、「新しい公共」、男女共同参画)等を歴任。
中塚一宏公式サイト
■テレパシー プロフィール
フォーライフミュージックエンタテイメントのアイドルプロジェクトとして、2012年春から行われた「エアドルオーディション」で選ばれた12人の「F.A.R.M.」メンバーから誕生した第1弾ユニット。自称宇宙初のエアギター・アイドルとして2012年9月に結成された。
テレパシー公式サイトhttp://telepathy.asia
■“暮らしていてよかったなぁ”と思える世の中とは?
片岡:さっそくですが、テレパシーのみなさんから中塚さんに回答してもらうというスタイルでいきましょう。経済に関すること以外でもいいですよ。
中塚:みなさん高校生なんですか?
テレパシー マキ::はいっ!
中塚:うちの子と大して変わらないんだな…(苦笑)
テレパシー マキ:じゃあまずワタシからいいですか?
中塚:何を聞かれるのかちょっとドキドキしますが(笑)。
テレパシー マキ:アハハ(笑)。えっと、最近授業で少しだけ習ったんですけど、“アベノミクス”ってなんですか?
中塚:授業っていうのは?
テレパシー マキ:現代社会の授業で。先生がおしゃべりで色々な話をしてくれるんですよ。その中で言ってて。
中塚:現代社会って授業はどんな内容なの?政治とか?
テレパシー マキ:えっ…と…まだ2週間くらいしかやってないからなぁ(笑)。
中塚:あぁ、そうなんだね(笑)。アベノミクスって言うのは、安倍首相がやっている経済政策のことだね。安倍首相の“アベ”と経済学という意味の“エコノミクス”を合わせた言葉。
テレパシー マキ:あーなるほど!
中塚:そのアベノミクスの目的は、いますごく景気が悪くてデフレになっていて。それをどうやって良くするか、景気を良くするための政策なんです。
テレパシー:……。
中塚:…わかりにくいですかね(笑)。
テレパシー マキ:あ、いや!大丈夫です!
中塚:学校の先生はなんて教えてくれたの?
テレパシー マキ:そんなに詳しくは言ってなくって(笑)。
中塚:あぁそうなんだ(笑)。
***
片岡:中塚さんから見て、アベノミクスはうまくいっていると思われます?
中塚:政策の内容自体は否定しないです。ただ、アベノミクスによって経済が良くなっているかというと、効果が出ていると言いきるのはまだ早いかなと思っています。
テレパシー マキ:そうなんですか?
中塚:グローバル化した時代に、日本のことを日本だけでどうこうするのは難しい時代です。とはいえ国内でやらなきゃいけないことは山ほどある。アベノミクスがやっていることの方向性は間違っていないと思いますが、それだけで景気が良くなるっていうわけでもない。やったほうがいいんだけど、ただそれだけでは…他にもやらなきゃいけないことが沢山あって、そっちの方がたいへん、という感じです。
テレパシー 美紅:今の話の中で“デフレ”って出てきたんですけど、聞いたことはあるんですけど、あんまりちゃんと理解をしていなくて(笑)。
中塚:デフレっていうのは、モノの値段が下がって景気が悪くなることだね。モノの値段が安くなるって、すごくいいことだと思うでしょ?
テレパシー 美紅:そうですね。安いに越したことはないですから(笑)。
中塚:ところがモノの値段が安くなる理由の一つに、モノが売れていないから安くなるというのがあるんです。会社が儲かっていないということですね。みなさんお父さんやお母さんが働いている会社で、一生懸命モノを作っても売れない。だから値段を安くする。安売りすると、会社の利益が出なくなる。儲からないんです。
テレパシー 美紅:全然良くないですねそれは!
中塚:でしょう?会社が儲からないと、お給料も上げられないよね。むしろ下がっちゃうこともある。モノの値段が下がるのは一見良いことのように思えますが、実はあまり良くないんですよ。
テレパシー 美紅:お父さんたちからしたら、良くないってこと?
中塚:お父さんだけじゃなくって、お給料が上がって、モノの値段が下がるのが、みんなそれが1番良いよね?
テレパシー 美紅:はい。
中塚:例えばハンバーガー、今ってすごく安くなっています。その事自体は悪いことじゃないんだけど、やっぱりお給料が上がらないと。
テレパシー 美紅:なるほどー。
中塚:経済って何だ?ということを端的に言うと、みんなが暮らしていて“あぁ、よかったなぁ”って思えるかどうかってことなんです。モノの値段が下がっても、それ以上に給料が下がってしまうと、暮らしていても“あぁよかったなぁ”とは思えませんよね。そこが大事だと思います。
***
テレパシー 美紅:海外ブランドとかって、今安くなってるじゃないですか?それも関係あります?
中塚:それは円高だからですね。
テレパシー 美紅:円高…。
片岡:円高って何ですか?って感じですね。(笑)
中塚:他の国のお金よりも、日本のお金の方が価値がある、というのが円高ですね。だから海外ブランドが安く買えるんです。円の価値が高くなってるからね。みんなが生まれる前なんかは、1ドル=360円の時代もあったんですけど、今って95円くらいでしょ。
テレパシー 美紅:わーそんなに違うんですか!
中塚:実は円高も、デフレの原因のひとつなんですよ。例えば電化製品は、日本より海外で作った方が今では安いんです。「メイド・イン・チャイナ」などがすごく増えた。そうすると、モノの値段がどんどん下がっていく。
■インフレとデフレって、結局どっちの方がいいの?
中塚:ところでお父さんはおいくつ?
テレパシー 美紅:45歳くらいかなぁ?
片岡:僕とあんまり変わらない(笑)。
中塚:私は来週48歳。だからお父さんよりも年上なんだけど、大学を出た時がちょうど “バブル景気”と呼ばれていたんですよ。
テレパシー 美紅:あ!聞いたことあります!
中塚:給料はどんどん上がる。就職なんて断る方が大変なそんな時代が日本にはあったんですよ。
テレパシー 美紅:お金をどんどん使って、お金の価値がなくなってたって聞いたことあります。
中塚:そうそう。それを“インフレ”って言うんです。モノの値段は高いけど、給料もどんどん上がる。
テレパシー 美紅:あ、さっきのデフレの逆ですか?
中塚:そう!その通り!
***
テレパシー 美紅:インフレとデフレって、結局どっちの方がいいんですか?
中塚:どっちもどっちだけど、景気のいい時はインフレ気味ですよね。デフレっていうのは、経済が縮んでいくってことだから。
テレパシー 美紅:デフレになっている状況をインフレには変えられないんですか?
中塚:まずひとつはお金の量を増やすんです。それこそCDだって売れないと値段が下がるでしょ。みんなが買わないから安くなる。
テレパシー 美紅:お金の量…。
中塚:インフレっていうのは、お金よりもモノの価値の方が上がっていくのです。例えば、土地。値段が上がると思ったら、みんな買う。でもそれは、土地の値段は上がるけど、お金の値打ちは下がるということです。デフレっていうのは、それと全く逆でお金の価値が上がっていくんですよ。
テレパシー 美紅:難しいよ!(笑)
中塚:簡単に損か得かで言うと、インフレの時にはお金を持っていてもダメなんです。モノを持ってたほうがいい。あ、メモしてる(笑)。
テレパシー 美紅:忘れるわけにはいかないですから(笑)。
中塚:(笑)。インフレの時は、土地や宝石を持っていたほうがいいんですよ。だってバブルの時なんて、絵画などにはすごい値段がついたんだから。
テレパシー 美紅:誰が描いた絵ですか? 普通の人の絵でも高かったんですか?
中塚:誰が描いたか・・・うーん(笑)。まぁでも「何でこんな絵が?」っていう絵画にも、すごく高い値段がついたりしたんです。今はモノの価値が下がっているから、モノよりもお金、現金を持っていた方がいいんですよ。
テレパシー 美紅:ということは、お金を使わない方がいいってことですよね?だからデフレがどんどん進んでいくってことですか?
中塚:正解! するどい! みんながお金よりもモノを持った方がいいと思ってモノを買う。買えばあがる。上がるから買う、それでバブルになってしまう。でもやっぱりそういう状況は永遠には続かないんです。いつかバブルが弾けて、世界中の景気が悪くなってしまう。今はお金を持ってた方が得なんだけど、お金持つのって難しいでしょ。(笑)
テレパシー 美紅:難しいですねー。
中塚:収入が増えないと、お金貯まらないからね。だから、さっきの話に戻るとお金の量を増やして、お金の値打ちを下げるんです。そうすると、“じゃあモノを持ってた方がいいかな”ってみんなが思い始めたらデフレから脱却出来るんです。誰も買う人がいなくて値段が下がっているから、無理矢理買うっていうか、みんなが買えなければ、国が買うとか。
***
テレパシー 美紅:そうなると国債とか増えちゃうとか?
中塚:またするどい!そうそう。買う人がいないと国が買うしかない、でも国だってお金がないから、それは借金して買うっていうね。
テレパシー 美紅:難しい問題だぁ!
テレパシー 七海:やばい、よくわからないけど心配になってきた…。
テレパシー 美紅:わかんないけど、何となく将来が不安(笑)。
中塚:でもみんなえらいですよ。高校生でそういうこと考えるっていうのが。自分が高校生の時にはそんのこと全然考えていませんでした。(笑)。将来が心配だなんて思ったことないですよ(笑)。
テレパシー 七海:ニュースとか見てると将来が不安になることありますよ。
中塚:でもみなさん、将来を心配してるようには見えないけどね(笑)。
■アイドルにとってのTPPって?
テレパシー 菜子:最近テレビとかでよく聞くんですけど、TPPってなんですか?
中塚:TPPはTrance-Pacific-Partnershipの略で『環太平洋経済協定』って意味なんだけど、他国からモノを買う時に税金をかけているんです。あまりにも安い値段で入ってくると、国内の農家や製造業で困る人がいるかもしれないから、関税をかけたりしています。それをどんどんなくしていきましょう、というのがTPPの基本的な考え方。
テレパシー 菜子:関税…。
中塚:そう。日本は海外から色々なモノを買ってきて、それを材料としてモノを作って売っている国だから、他国から買ってくる材料は安ければ安い方がいい。でも、売る時は高くして売りたいと。そこでお互いに関税は取っ払っていきましょう、っていうことなんです。
テレパシー 菜子:日本は損しちゃうんですよね?
中塚:損する面も、得する面もあるんです。それは他の国でも同じ。競争力のある分野、日本だとたとえば自動車産業なんかは、海外でもっとたくさん車を売れれば、日本にとってはいいことだよね。自動車の材料だってほとんど輸入しているわけだから、入ってくるものは安く、出て行く時に高くたくさん売れればいいわけですよ。日本に競争力があるもの、得意分野は得です。
テレパシー 菜子:なるほど!
***
中塚:アイドルグループはTPP、どうなんだろうね(笑)。
片岡:日本から世界に出て行くにはいいけど、世界から来るアイドルと太刀打ちしなきゃいけないっていうね(笑)。
テレパシー 菜子:あ、じゃあ私たちが世界デビューするってことになったら…
中塚:やっぱり、競争力がモノを言うんですよ(笑)。世界デビューを狙ってます?
テレパシー 菜子:狙ってます!!
片岡:エアギターだから国境を越えても伝わりますよね。
テレパシー 美紅:世界も飛び越えて、宇宙デビューを目指しています(笑)。
■年金問題の解決はコウノトリ?
テレパシー 七海:お母さんと話してた時に、お母さんの世代くらいから年金がもらえないんじゃないかって言ってたんですけど、本当ですか?
中塚:お母さんいくつ?
テレパシー 七海:39歳です。
片岡:キタ!30代(笑)。
中塚:お母さん、年金もらえないってショック受けてるの?
テレパシー 七海:いや、ショックは受けてないけど(笑)、自分で貯金しておいた方がいいんじゃないのって話になったんです。あと、年金を納めてない人に対する対策っていうか、そういうのってあるのかなぁって話も。
中塚:おっと!だんだん政治の話になってきた(笑)。
片岡:国会討論みたいですね(笑)。
中塚:年金は、今の若い人が収めた保険料で年配の方がもらってるんですよ。昔は若い人が多かったから、たとえばあなたのおじいさんとか、ひいおじいさんなんかは多くもらえてるんです。おじいさんって何歳?
テレパシー 七海:65歳くらいかなぁ。
中塚:ちょうどおじいさんの世代を“団塊の世代”って呼ぶんだけど。
テレパシー 美紅:あー! 聞いたことある!
中塚:昭和22年〜23年生まれのまさにあなたのおじいさん世代。その世代が今の日本の人口で1番多いんです。その人たちの次に人口が多いのが、団塊の世代の子供。
片岡:団塊ジュニアと呼ばれていますね。
中塚:その後、子供の数がどんどん減っているんです。
テレパシー 美紅:少子化?
中塚:そう。少子化。若い人が払った保険料で年金は払われているので、若い人が多い時代に年金をもらっていた、みなさんのひいおじいさんなんかは、すごく得だった。あなたのお父さんやお母さんの世代だと、子供の数がどんどん減ってるから、ちょっと損ですね、やはり。
テレパシー 美紅:少子高齢化が解消すれば、年金の問題も解決ってことですか?
中塚:その通り!実は子供が減っていくっていうのは大変な問題なんです。デフレの話もそうだけど、人口が減ればモノを買う人の数が減る。それではモノの値段もあがらないよね。だから今何が1番大事か、大急ぎで考えなくてはいけないかって言ったら、人を増やすことですよね。
テレパシー 美紅:じゃあ子供をいっぱい増やさなきゃ。コウノトリが運んでくればいいんだ。(笑)
片岡:あ〜アイドルは、そこは詳しくないんだ(笑)。
■インフレとデフレに周期ってないの?
テレパシー 真依:家族が引越しを考えているみたいなんだけど、家は買った方がいいんですか?借りた方がいいですか?
中塚:さて、こういう時はどうしたらいいですか?今はデフレですよ。
テレパシー 美紅:お金を持っていた方がいいからぁ…。
テレパシー 七海:借りる方がいい?
中塚:正解です!インフレの時はモノの値段が上がっていくから、買った方が得。お金を持っているよりも、モノを持っていた方がいいですね。逆にデフレの時はモノの値段が下がってお金の値打ちが上がっていくから、借りた方がいいっていう答えになります。
テレパシー 真依:おぉなるほど!
テレパシー 菜子:インフレとデフレに周期があったらわかりやすいけどなぁ。
中塚:あるんですよ、実は(笑)。じゃあそれは宿題にしようかな。
テレパシー マキ:宿題かぁ。
中塚:銀行の金利を見ると、インフレかデフレかって、すぐわかりますよ。金利が安い時代と高い時代がある。でもね、今までずっとインフレだったんですよ、どちらかというと。物の値段は上がってきたけど、給料も上がってきた。だから別にみんな苦しいと思ってなかったんです。収入よりもたくさん借金して色々買ってきた。冷蔵庫とかね。
テレパシー 美紅:あぁ、三種の神器?
中塚:よく知ってるなぁ(笑)。そうやってモノを買うからさらに景気が良くなるんですよ。会社が儲かって、給料が上がって、またモノを買うでしょ。それでずっとよかったのに、ある日それが逆になっちゃって、以来20年経っているんです。
■経済の原動力は、夢。
中塚:みなさんみたいな若い世代の人が色々心配するよりも、私たちは将来これでがんばるぞ!とか、この仕事で儲けるぞ!ってみんなが思うようになれば、社会全体が良くなっていくんですよ。
テレパシー 七海:私は別に年金のことは気にしてないんですよ!お母さんが気にしてるだけで(笑)。
中塚:そう、だからあなたががんばって、お母さんの分まで稼げばいいんですよ(笑)。
テレパシー 七海:稼ぎます!
一同:爆笑
中塚:経済の話題って、損とか得とかという話になりがちだけど、結局、経済の原動力は、人の夢なんですよ。何にもないところから新しい商売をやってみようって思うことが、実は経済の原動力なんです。だからね、若い人たちにはひとりひとりが夢を抱けば、すごく経済は良くなるんです。
テレパシー 美紅:経済って、もっと難しい話だと思ってた。
テレパシー 七海:私もー。
テレパシー 菜子:夢ってことだ。
テレパシー 真依:気持ちだね。
テレパシー マキ:活気を持つってことだね。
中塚:そうそう。会社を作って商売を始める人が増えれば、どんどん景気が良くなると思います。景気が良くならないのは、若い人が夢を持てない時代だからなのかなぁ…。だからテレパシーのみなさんは、ぜひ夢を振りまく「宇宙一」のアイドルになってください(笑)。
テレパシー 真依:もしかして、アイドルって景気を良くする!?
テレパシー 菜子:みんなを元気にして、ね!
テレパシー 美紅:あーなんかつながったー。スッキリしたー(笑)
中塚:みんながテレパシーみたいになりたいって思えば、絶対景気は良くなります(笑)。