21世紀のビジネス最前線 86・87・88世代 ベンチャー編 クラウドファンディングサービス
READYFOR? 米良はるかに聞く。

(2011.12.05)

米良はるか プロフィール

慶應義塾大学経済学部卒、現在同大学大学院メディアデザイン研究科修士2年。エンジニアを含む10名ほどのチームを率い、オーマ株式会社で日本初のクラウドファンディングサービスREADYFOR?を立ち上げ、今年3月にリリースした。大学時代から寄付サイトを運営したり、SPYSEEに携わったりと、積極的にWEB業界から世界を面白くしようとしている若手の一人である。ダボス会議Global Shapers Community2011 Active Memberにも選出。

頑張る人に対しての共感を軸に
少額を出し合うウェブサービス READYFOR?。

−−READYFOR?はどんなサービスなんですか?

米良 アーティストとか何かを作りたいクリエーターの人、何かがやりたい社会起業家の方とか、何か社会に対してイイコトしたいと思ってるような人たちが、サイト上でお金を集めるというようなサイトです。サイトの中で、自分の想いとか夢、どういうものをつくりたいのかという気持ちをプレゼンテーションしてもらって、それに共感した人たちから少額の、500円から1万円くらいの金額を一人あたりから受け取って、それでその夢を実現しましょうという形です。

特徴としては、ALL or NOTHING、目標金額をプロジェクトごとに設定してもらい、その目標金額が期間内(90日以内で設定)に集まった場合のみ、プロジェクト成立となり、お金を受け取るということができます。1円でもその期間内にお金が達さなかった場合は、無かったことになり、払った人に全額返金されるという仕組みです。


READY FOR?の仕組み
グルーポン、kickstarterの成功から
インセンティブを高める仕組みを導入。

−−All or Nothingを導入した理由は?

米良 もともとは大学のときから、個人間でお金を送り合うようなサイトをつくりたくて寄付のサイトをやっていました。継続的に応援してくれる人を、長期間に渡って募集していましたが、お金を出す側の人にとって、長期間に渡って、あしながおじさん的にずっと支援し続けるインセンティブが働かず、なかなか普通の人に普及していかなかったんです。

でも頑張る人に対して、共感した個人、今まで出会ったことがないような人たちが、ウェブ上で共感を軸に少額を出しあうという行為自体はあり得るんじゃないかなと思っていました。同じようなコンセプトで、アメリカを中心に、このようなクラウドファンディングサービスは立ち上がっています。

例えばKickstarterというサービスがアメリカではすごくブレイクして、そのひとつの理由は、お金を出す人のインセンティブを上手く作れたところにあると思うんです。そこにうまく働いていたのがAll or Nothingの仕組みで、それって去年流行したグルーポンのモデルなんですよね。

All or Noting というは、その言葉通り、一定の期間中に資金が集まりきらなかった場合に、プロジェクトは未成立となり、資金が支援者に返金される仕組みのこと。

今までもそういう共同購入ってたくさんあったと思いますが、グルーポンがヒットしたことによって、今日中に集まらなかったらすべてが終わってしまうというゲーム感覚が、多くの人にとっても、当たり前になったのではないかと思います。

継続的に寄付をずっとさせるというのではインセンティブが働かないということで、Kickstarterのブレイクやグルーポンの成功という背景から、うちでもその仕組みを取り入れて、寄付をしたい、応援してあげたいという気持ちを加速させるようなものを提供したいなと思っていました。

3.11で自分たちのサービスの価値を感じた。

−−サービス開始から半年。ヒントになりそうなことは出てきましたか?

米良 今回の震災では、赤十字にたくさん寄付したけど、その2割くらいしか被災地に届いてないと報道されていて、自分の協力したお金が被災地に直接行ってないってなんかおかしいと多くの人が感じていました。READYFORの様に直接的にお金を、この理由のためにほしいんだって言ってる人に届けてあげるっていう仕組みは、こうやって情報がすぐに伝達されるような社会になると、まさしく必要な形だったんだなあと、この震災で改めて思いました。

−−震災関連のプロジェクトもあるんですか?

米良 例えばこれは宮城大の建築科の学生さんたちが、南三陸町に暮らす被災地の方々のために、てぬぐいを製作するというプロジェクトがありました。このプロジェクトは、4,000円を支援してくれたスポンサーの皆様に、支援してくださった見返りとして、支援者にてぬぐいが1本贈られ、もう一本を南三陸町の方に贈るという仕組みで行いました。

最終的には、60人の支援者と、200いいね、そして700弱ものツイートがされて、多くの人がこのプロジェクトに共感をしていただきました。これを見て思ったことは、一人が復興のためにできることは小さなことかもしれませんが、本当に共感して、応援してくれる人が集まれば、それは大きな力になると思いますし、そういった個人や小さな団体の活動にどんどん焦点があたる時代になっていくだろうなと思いました。


サイト内のてぬぐいプロジェクト
しっくりこなかった就職活動、
イギリスで開けた考え方。

−−大学時代にサービスの構想があってやりたいということで、就活はやはり考えなかったんですか?

米良 就職活動は少ししてたんですけど、自分がどういう人間になりたいかとか、何やりたいか、自分のことを自分で理解できていませんでした。だから就職活動っていうのが一体何なのか、人生においてなんなのかっていうのが本当にしっくりきてなくて。もっと自分のことを見たい、自分の見ていない世界を見ることによって、自分が本当になんのために生きるべきなのかをしっかりと考えたい、感じたいと考えて、イギリスに短期留学しました。

イギリスの大学で仲良くなった友達に、卒業したら何するのって聞くと、まだ見えてないから勉強してようかと思ってる、院に行くかもしれないしという人が結構いて、そりゃそうだよねって思えたんです。自分の一回きりの人生だし、それを豊かにしたいわけで、そのために一生懸命頑張りたいから、自分がほんとにやりたいことがわかるのに、少し時間掛かる人もいれば、すぐに分かる人もいるし、それは人それぞれだって。イギリスでそれを当然に言う子が周りにいました。日本では、就活中はみんなと同じ方向に行かないとだめっていうのがあったけど、そこで本当にこれだったら自分は命をかけられるってことをちゃんと見つけたいな、というふうに思いました。今は我武者羅に走れているので、その自分の選択は間違ってなかったなって思ってます。

リスクは考えない。新しく出会い、
知る世界でまた面白いものを見つけるはず。

−−就活をしないでサービス事業を始めることのリスクは考えましたか? 食べていけなくなったらどうしようとか。

米良 今はないです。自分がやっていることで、同世代の人たちよりも沢山の経験をできているので、それはすべて私の財産になっています。もし今やっていることが上手くいかなくなったとしても、そういった財産は残るので、また始めればいい。

自分でやるのか、他のベンチャーなのか、上場企業なのか。きっとそこの中でまた出会いがあって、またキャリアが構築されていくのかなと思っています。今できることを全力でやる、それだけです。