片岡英彦のNGOな人々 (Non-Gaman Optimists)「シワ」を防ぐ「42度」の秘密
慶応義塾大学薬学部教授 水島徹。

(2012.11.04)

「NGOな人々」”Non-GAMAN-Optimist”とは「ガマン」していられず、チャレンジをし続け、決して諦めない「楽観人」。NGOな人々へのインタビュー第22回目は産学一体となった共同研究で“HSP”( 熱ショックタンパク質)と呼ばれる、身体の細胞がストレスにさらされた際に細胞を保護するタンパク質の研究を進め、化粧品への応用を実現した慶応大学薬学部の水島徹教授です。キーワードは「42度」です。「42度がシワ予防に効くという」秘密(!?)について探ります。

■水島徹 プロフィール

(みずしま・とおる)慶應義塾大学薬学部分析科学講座主任教授。熊本大学薬学部先端DDS学講座教授。LTTバイオファーマ株式会社取締役会長なども兼務。独創的かつ世界をリードするHSP基礎研究を行い、その基礎研究を応用し、画期的な新薬や化粧品を開発する。また、それらの研究を通して、世界で活躍できる一流の薬学研究者を育てようと活躍している。著書に『HSPと分子シャペロン』(講談社)がある。

色んな温度を試した結果、
42度が良かった。

片岡:『ダカーポ』の読者の方の中に「シワ」に関心がある方はいたとしても、学術的な意味での「シワ」については、恐らく9割9分の方がわからないと思うので、初歩的な質問からさせてください。そもそもシミやシワとは、肌の損傷なのでしょうか? なぜ「シワ」ができるのでしょう?

水島:実はまだよく分かっていない部分も多いのです。肌の表皮の下にある真皮(しんぴ)と呼ばれる層は、コラーゲンで埋め尽くされた、コラーゲン層です。これがちょうどクッションのような役割を果たしています。クッションがあれば肌はピンと張ってきますし、コラーゲンが少なくなったり、劣化したりして役割が落ちてくると、どうしても弛んできてシワになります。

さらにコラーゲン層に大きな亀裂が入ると、大きなシワができます。だから顔のよく動く部分などは、どうしてもシワになりやすいのです。風船の空気を抜くと、最後にシワシワになりますが、そのイメージに近いです。ピンとクッションが張っていればいいのですが、張りがなくなると、やがてシワになってしまいます。

片岡:そもそもなぜ「42度」という温度に注目されたのか教えて頂けますか?

水島: 実は実験を行う前は、果たして肌にとっていいのか悪いのか、結果がどちらに出るか分からなかったのです。しかし、私はHSP(Heat Shock Protein)という体を守ってくれるタンパク質に注目して研究を続けてきましたので、まあ多分肌には良いだろうとは思ってはいました。なぜ42度を選んだかっていうと、HSPを最も強く、そして安全に増やす温度だからです。43度でも44度でも、HSPは増えるのですけれども、そうなると少し熱すぎて、ヤケドまではいかずとも少なからず肌にダメージがある。安全にHSPを増やすという意味で、42度が1番良かったのです。

42度にすると
HSPが増えてくる。

片岡:イメージ的に、お風呂に入っていると手の皮が伸びてシワシワになるじゃないですか? それとこれとは全く別の話ですか?

水島: 別ですね。あれは一時的に水分を吸ってふやけた状態です。新聞紙を濡らすとクニャクニャとになるじゃないですか。あれと同じことです。シワは水やお湯に入った時だけではなくて、普段からできますよね。年齢を重ねたり紫外線を浴びたりしてできるシワっていうのはお風呂でのシワとは別物です。

片岡:ストレスの話に入りますが、一般的に使う「ストレス」という言葉と、化学で使う「ストレス」は違うと思うのです。ストレス耐性のひとつとして「細胞を鍛える」という発想が僕にはあまりありませんでした。細胞の一つ一つというか、そもそもタンパク質が鍛えられるものだとは思っていなかったのですよ。

水島: 1つの1つのタンパク質がすごく強くなったりするワケじゃないのです。(笑) どうして鍛えられていくかというと、 熱でも何でも良いのですが、それらに対して他のタンパク質を守ってくれる“警察官”みたいなタンパク質があって、42度にすることによって“警察官” が増えるのです。その次に別のストレスがやって来ても“警察官”がいっぱいいるので守られる、といったイメージです。これは普段使われている意味のストレスですが、ありとあらゆるストレスというのは、大体タンパク質の形をおかしくします。だから細胞が死んだり弱ったりしていくのです。

実は身体の中にはストレスに対してタンパク質を守ってくれるHSPというのがあります。これが先ほどの“警察官”です。42度にするとHSPが増えてくる。HSPを増やしておいて次にストレスがやってくると、この一旦増えたHSPがストレスから守ってくれます。だから細胞レベルで言えば、「鍛えられる」ということになるのです。タンパク質のレベルで言うと、タンパク質が単に強くなるというよりも、タンパク質を守る“警察官”みたいなタンパク質が増える、だから細胞が強くなるということです。

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片岡:叩かれて強くなるという意味ではなくて、守ってくれる物が増えるから、結果的にストレスに強くなる、という意味ですね。

水島:細胞レベル、私たちの体のレベルで見ると、正に叩かれて強くなるのです。それが、タンパク質レベルで言うと、タンパク質を守るタンパク質が増えるから強くなる。

片岡:通常「ストレス」って、精神的なダメージや影響で使う表現ですよね。

水島:その精神的なストレスと、実は意味合いは同じなのです。精神的なストレスも、例えば弱めのストレスを適度に与えて、その後、強いストレスを加えると、意外に人間は耐えられるようになるのです。でも普段から甘やかされていて、いきなりドーンとストレスが加わるとダメになってしまう。これも実は弱いストレスによってHSPが増え、強いストレスによって神経細胞がダメージを受けるのをHSPが守ってくれるからだと私は考えています。

精神的ストレスも、「毒」のような化学的ストレスも、物理的なストレスも、ストレスという意味ではみんな大体同じですね。

片岡:著書『HSPと分子シャペロン』(講談社)を読ませて頂いた中で気になったのは、肌に関して実験した結果、42度がストレスに対する効果があるというのが分かって、さらに胃潰瘍や癌などの病気にも応用の可能性がある、と書かれていたところなのですが。

水島:そうですね。この本でも胃潰瘍や肺炎、アルツハイマー病までは、はっきりと効果が示されているのです。あとは癌や精神的なストレスの部分についても、今後さらにきっちりと結果を示していこうと思います。

水島透『HSPと分子シャペロン』(講談社刊)
42度は、胃潰瘍や癌などの病気にも応用の可能性がある。

片岡:HSPってすごいですね!悪いことがない。

水島:HSPは大腸菌でも我々の体の細胞でも、みんな持っているものです。つまり生物にとっては必要なものなのです。我々が進化する過程を経てもずっと残っているものは、つまりそれが『良い』ものだからです。我々にとって『悪い』ものであれば退化していくはずですから。

私たちの体というのは一般的には歳を重ねると病気になったり、シワ・シミが増えたりするじゃないですか。でも逆の発想で考えると、40代・50代ぐらいまでは、ほとんど病気にならないとも考えられるわけです。私にとってはむしろ、このことの方が奇跡的なことだと思います。何兆という細胞があり、これらのうちの少しでも調子が悪くなると病気になったり、シワが増えたりするわけです。人の住む住宅だって40年も経てば修繕が必要な部分が色々と出てきます。

ところが、私たちの体は必ずしも皆が病気になるわけではなく、人によってはほとんど病気にならないで、40歳、50歳を迎える方もいらっしゃる。齢を重ねても、ほとんど病気にならないシステムが身体の中に内在しているのです。なので、体の中にあるものは非常に素晴らしいもので、良いものなのです。その良いものを増やすということで、体に悪いことが起こることはまずないのではないかと思っています。

片岡:今回の研究では、ラットの皮膚で試したのですか?

水島:そうです。お風呂のようなものにラットを入れました。ただ、ラットそのもので試してしまうと脱水症状に陥ってしまうので、皮膚だけをお風呂につけ、42度に5分間、その後6時間後に紫外線を当てるという実験を行ったのです。それを週3回10週間続けると、普通は凄いシワができるのです。ところが温めてから紫外線を当てることでシワができにくかった。


左・紫外線をあてる前に、37度のお湯に浸して6時間後のマウスのシワ。
右・紫外線をあてる前に、42度のお湯に浸して6時間後のマウスのシワ。紫外線による
週3回10週間研究を続けて、シワを作る。

片岡:研究で一番苦心したところは?

水島:やはり週3回10週間研究を続けて、シワを作るところですね。10週間って言ったら3か月くらいかかります。普通の研究というのは、例えば胃潰瘍であればアルコールに浸けたら次の日には潰瘍ができて、じゃあもう1回実験しよう、と、1週間に何回も実験を繰り返すことができますが、今回は1回の実験が10週間かかりましたから、なかなか気の遠くなる実験でした。

片岡:実験の結果が出てからも、それを人の肌に直接触れる化粧品にするためには、また別の様々な工夫をされたと思うのですが。

水島:今回はシワに対する実験でしたが、我々はシミに対しても同じような実験を行いました。そもそも紫外線が当たると肌が赤くなったり、熱くなったりしますが、そのような状態に対しても、HSPを増やすとほとんど何も変化がなかったのです。これもHSPを増やした効果だと思います。

水島教授と再春館製薬との共同開発で生まれたHSPを増やす化粧品・ドモホルンリンクル。

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片岡:あまり他に、そういう状態を手軽に試せる商品を聞いたことがないです。

水島:そうですよね。HSPを増やすのであれば、まぁお風呂に入ればいいんですけれども、人はそういつも風呂に入ってもいられないので、(笑)塗って増やしましょうという発想ですね。実際そのHSPを増やす商品というのは他社から出ている胃薬があります。胃薬を飲むとHSPが増えて、ストレスを感じても胃潰瘍にならない、と、実に分かりやすいですね。

だからHSPを増やす胃薬を化粧品に入れようと思ったのですが、薬事法の関係で薬は化粧品に入れてはいけないことになっています。だったら化粧品用にと。化粧品と言ったら天然の生薬などが相応しいと。400種類の天然成分から1個1個探していきました。するとヤバツイ、アルニカ、チューリップエキスというHSPを誘導する天然の原料が見つかり、これを化粧品に入れましょうと、再春館製薬所との話が進みました。

ここからは再春館製薬所さんとの話になるのですが、化粧品の安全性はとても重要ですよね。

単にHSPを増やすのではなく、安全に増やすという観点です。もっとも天然素材を使っていますので、非常に安全性も高いです。そうやって世界初の「HSPを増やす化粧品・ドモホルンリンクル」ができました。

日本の化粧品って、化粧品としてはそれぞれオリジナリティーがあっても、薬学的な視点ではあまり新しいものではないことが多いのですが、でもこの化粧品は、化粧品としてはもとより、ターゲットやメカニズムにも独自の視点があるのです。

片岡:すでににあった研究結果を応用したのではなく、研究結果自体が新しいということですか?

水島:そうです。自分たちで化粧品の新しい「ターゲット」を見つけて、化粧品を作ったという話は、なかなかないと思いますね。

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片岡:基礎研究は大学で行ない、化粧品として応用できる部分については企業が引き受ける、そういったお互いの強みを合体した共同研究という感じですか?

水島: それが一般的な共同研究のイメージです。もちろん進め方としては正しい部分もあるのですが、一方で実際にやってみると、上手く噛み合わない部分も出てきます。

例えば化粧品には安全性が大切だという考え方、これは企業側の商品開発での話ですよね。しかし大学にとってみれば、HSPをたくさん増やした方が、研究結果もクリアに出せますし、プレゼンテーションもしやすいなどといった理由から、安全性の部分にまでは考えが及ばないことも一方であるわけです。今回の共同研究がうまくいったのは、お互いの強い部分を生かしたというよりも、双方が一体となり、文字通り、最初から最後まで一緒にやったこと、これが非常に良かったのだと思います。基礎研究はもちろん我々が中心に行いますが、再春館製薬所さんと月に1回ミーティングを開いて、常に企業側の意見を取り入れながら研究を進めました。

再春館製薬所さんとしては、このHSPや、それを誘導する天然原料はどういう物で、どんな性質があるのか、というのは最初は詳しくはわからなかったと思いますが、だからこそ、毎月毎月、この原料はこうですよ、こんな性質がありますよ、というやり取りを繰り返し行ってきました。

「あ、それだったらちょっとそれはやめましょう」などと、双方の意見が色々と交わされました。HSPについてよく分かっている我々が、ちゃんと説明すべきところは説明して、実際に化粧品を開発し売っていく再春館製薬所さんに対して、いかにHSPを理解してもらうかというのが非常に大切でした。

片岡:最初から最後まで一緒に、というところで、やりにくい部分って正直なところありましたか?

水島:それはやりにくいですよ、これはお互いに(笑)。まずお互いの立場が違います。最初はお互いの「言葉」が理解できないのです。もっと言うとお互いの「文化」そのものが理解できない。「この人はなんでこんなことを言うのだろう?」と。それは再春館製薬所さんもそう思ったのではないでしょうか。大学の研究者っていうのは、やはりある種の特殊な仕事ですからね。そういうやりにくさを乗り越えていかないと研究の成果はなかなか商品化されないなと思いました。

人の命を救う薬を残して死にたい。

片岡:水島さんのパーソナルな話になりますが、化学とか薬学とか薬とかに興味を持ち始めたのはいつ頃からですか?

水島:この本にもちょっと書きましたけど「何の為に生きようかな」と(笑)。そういうレベルの話でしてね。死ぬ前に何かを残してから死にたいなと思って。自分が生きた証みたいな。人の命を救う薬を残して死にたいと思いました。どんな外科医だって、自分が死んでしまったら人の命は救えないですけど、薬だったら、自分の子供や孫、もっと言えば自分と関係のない人まで救い続けることができるかもしれない。一生を捧げる仕事として自分にとって薬学というのは1番いいだろうなと思ったのがきっかけですね。

片岡:それは高校生ぐらいで、理科系・文化系で分かれるときって感じですか。

水島:いや大学時代ですね。うちの大学は大学2年時にどこの学部へ行くか決めるのです。だから本当のこと言うと、とりあえず何か残したいぐらいの気持ちで理科系に入ったのですが、その後どこの学部に行こうかってなった時に、じゃあ薬学かなと。

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片岡:ご自身に向いているとすぐ思いましたか?

水島:私が入った研究室は基礎研究重視なのです。僕は大腸菌を扱い、ストレスが起きるとDNAの構造がどう変わるのかという研究をしていました。今考えると、その頃に先生達から教えてもらったことが、現在の薬作りに非常に役に立っているのだと思います。

片岡:薬学をやっていく上で1番重要なベースになる素養というか、マインドというのは何ですか?

水島:「人の命を救いたい」というその気持ちです。まずベースはそこだと思います。目の前の患者さんと話しながら「この人の命を救いたい」と思う人は医学部に行ったらいいと思います。そうじゃなく「自分の作った物で世界中の人々を救いたい」と思う人は薬学部が向いているのかもしれません。

片岡:そのマインドが強いと、研究していくよりも経営者としてもっとどんどん薬を売るとか、マーケティングとか、そっちの方をやっていきたいという考えにはなりませんか?

水島:一般にはお金儲けをするのだったら、絶対に研究よりも経営をしたほうが良いのですけれど、薬だけは、モノがないことには、どんなに優秀な経営者でも会社は上手くいかないと思います。今もなお何かの病で多くの人が亡くなっています。これは、まだ直る薬ができていないからです。やっぱり薬は「売る」よりも、「作る」「研究をする」ということの方がメインだと思います。この業界は経営よりも研究が主人公ですね。

セントラルドグマを研究で、
まだノーベル賞を狙えるのでは。

片岡:本を読んでいて面白かったのが、塩基配列の「螺旋」があって、それがまだノーベル賞を狙えるほど未知のことが残っていると書かれていて。

水島:セントラルドグマの話ですよね。DNAからRNAができて、RNAからタンパクができる。DNAが親から子に伝わる。これがセントラルドグマです。これがそうではなくて、例えばタンパクが伝わるとか、あるいはタンパクをコピーするタンパクがあるだとかを発見すればノーベル賞がとれると思います。RNAの世界ではそれが全部もう現実化しています。RNAが酵素としてタンパクとして働いています。この研究もすでにノーベル賞を獲りました。RNAが直接RNAを変えているっていうのもノーベル賞を受賞している。だから要は、セントラルドグマを研究して、それに合わない物を見つけていけば、まだノーベル賞を狙えるのではないかと思います。

片岡:『HSPと分子シャペロン』に「例外」って書かれているのはその「例外」のことですね。

水島:「例外」というものがまだたくさんあります。肺炎の分野でもエピジェネティクスといって、DNAってただコピーされているだけだと思っていたのですが、としを取るとDNAの形が変化し、それが更に伝わっていく。だから塩基自身の配列以外に、親から子に伝わる情報があるということなどが解明されると、ノーベル賞受賞も夢じゃないですね。

片岡:何でノーベル賞にこだわるかというと、このインタビューを読んだ若い人が、「これなら俺も薬学や化学をやってやろう」ってなれば面白いなと思って。

水島:そうですね。ただ、ノーベル賞を獲るよりも、新しい薬を作る方が難しいです。

片岡:薬を開発し普及させるところですか?

水島:難しいですね。だってノーベル賞は、毎年5人くらいは受賞者が出るじゃないですか。薬は下手すると1つも開発されていません。もちろん新薬は毎年出ていますが、例えば抗菌薬だったりステロイドだったり血圧降下薬だったり、本当に画期的な新薬の登場は5年10年に1個くらいじゃないですかね。これぞ、というのが生まれるのは。

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片岡:研究者としての今後の目標やステップとして細胞やタンパク質、あるいはもっと分子レベルのアミノ酸などの、まだ解決されていない領域ではどの辺りをさらに研究していこうというのはありますか?

水島:私はやはり人の幸せにつながる研究を続けたいと思います。最近は基礎の研究は進んでいますから、何かをやりたいと思った時にその方法は何とかなるものです。情報だってインターネットからいくらでも調べられます。重要なことは『何をしたいか』ということです。

化粧品の分野でいえば、年齢を重ねるとシワやシミになるという事実は事実としてあるわけです。今回の研究で少しは貢献できたのかもしれませんけど、本質的にはまだまだ課題は残っています。シミやシワがなくなるまでやるべきことはあります。さらに病気の分野でいえば、例えば子供の死亡原因の上位に癌があります。幼い子供が癌で命を落としている。これはもう絶対何とかしなくてはいけない大きな課題です。また肺線維症という症状に対する薬がないことなども大きな課題の1つです。今その薬を作っていて、これをなんとか世に出していきたいと思っています。

片岡:タンパク質という物質は『手段』であり、その先にある『治す』という結果に興味があると。

水島:そうですね。

片岡:とにかくやらなくちゃいけないことは山のようにあるわけですね。

水島:はい。だから『世の中を良くしたい、そのためには研究しなくちゃ』っていう若い人材を、数多く育てていくということが今後はすごく重要になってくるでしょうね。

■インタビューを終えて

偶然にも、たった今、私が「あとがき」を書いている最中の10月8日の夕方、京大の山中伸弥教授がiPS細胞に関する研究の功績によりノーベルル医学生理学賞を受賞されました。

今回、インタビューに応じて頂いた慶応大学の水島教授にしても、京大の山中教授にしても、研究者としての絶え間ない努力があってこそ、各研究分野での独自性の高い成果を出すことができることは言うまでもありません。

しかし、ノーベル賞受賞の報道を見ながら、私は水島教授の言葉にあった、「今もなお何かの病で多くの人が亡くなっている。これは、まだ直る薬ができていないからです。」という一節を思い出しました。そういえば、ちょうど1ヶ月前の9月8日の早朝に私は父を、がんで失いました。まだ70歳でしたので、できれば、もう少し生きてもらいたかったという思いが正直なところです。

「人の命」「人体の仕組み」には今なお解明されないことが多く、その「課題」を解決するために多くの研究者たちが、日夜、闘っています。医学や薬学には全くの専門外の私ですが、正直、こうした研究者たちの使命感を「かっこいいな」と思います。「救われる命」が今後一層増えることについて、私も自分なりにできることをしていけたらと思います。

『HSPと分子シャペロン』では胃潰瘍や肺炎、アルツハイマー病まで、HSPの効果ははっきりと示されているのです。