片岡英彦のNGOな人々 (Non-Gaman Optimists)病気の子供と家族に”スマイル”を
ドナルド&島田 浩三さん〜前編〜

(2012.12.03)

「NGOな人々」”Non-GAMAN-Optimist”とは、「ガマン」していられず、チャレンジをし続け決して諦めない 「楽観人」のこと。NGOな人々へのインタビュー第23回は、“日本の小児医療における患者と家族のメンタルケア”を推進するサポートハウス『ドナルド・マクドナルド・ハウス』常務理事の島田浩三さんです。「おおさか・すいたハウス」で行われたオープンハウスの際に、特別にドナルドに館内を案内してもらいました! まずはその前編をどうぞ。

■ 島田浩三 プロフィール

1974年、日本マクドナルド株式会社入社。神戸エリア店舗、香川・高松店店長を経て大阪本部販売促進部へ異動。マーケティング領域の業務を歴任し2004年本社営業本部CSR部長、その後CR本部を経て2006年公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ ジャパン常務理事(現職)に就任、現在7年目。

・公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ ジャパン
http://www.dmhcj.or.jp/

ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ ジャパン常務理事の島田浩三さんは、マクドナルド1号店が銀座にオープンした3年後の1974年に日本マクドナルドに入社した。PHOTO / studio tec 井上昌明
常務理事さんはこんな方

片岡:僕は以前、日本マクドナルドのマーケティング本部に4年弱在職していて、在職中は島田さんにはとてもお世話になりました。もちろん「ドナルド・マクドナルド・ハウス」のことは普通の人よりはよく知っているのですが、一番わからなかったのが実は島田さんのプロフィールなんです(笑) 

島田:僕のプロフィール、ですか?(笑) 

片岡:はい。ドナルド財団の常務理事に就任されるまでの、マクドナルド社との間柄といいますか、経歴といいますか……

島田:あぁなるほど。それで言うと、私がマクドナルドへ入社したのは……1974年……になります。

片岡:1974年!!

島田:はい。74年。

片岡:……確かマクドナルド銀座一号店が出来たのは、

片岡・島田:(2人で声を揃えて)1971年!!

片岡:……僕、まだ4歳です。その頃、すでにマクドナルドに入社されていたのですか。(笑)

島田:(笑)1974年に日本マクドナルドに入社しまして、まずは地元の神戸の店舗に勤務しました。1977年に四国香川の高松店の店長になり、その後、大阪本部の販売促進部に勤めました。

片岡:なるほど、それからはずっと一貫してマーケティング領域だったのですか?

島田:本社の営業本部にいたこともありますが、殆どはそうなります。2006年の1月に現職に就いて、かれこれ、7年目ですね。

片岡:なるほど。もはや日本の「ドナルド・マクドナルド・ハウス」の生き字引のように、なんでもご存知なのではないかと(笑) 改めて本日は宜しくお願いします。

島田:(笑) よろしくどうぞ。

この日、おおさか・すいたハウスでは近所の皆さんをお招きしたオープンハウスが開かれ、大勢の方々で賑わっていた。
“HOME AWAY FROM HOME”=「第2のわが家」へようこそ

片岡:今日は「おおさか・すいたハウス」のオープンハウスイベントということで、実際に入居されているお子さんやご家族だけでなく、地域のみなさんとの関わりを拝見する事が出来ました。オープンハウスにお邪魔するのは初めてです。大変心温まる思いです。 

島田:ありがとうございます。

片岡:こちら大阪の「すいたハウス」は、2005年に国内4号目として設立されましたが、「ドナルド・マクドナルド・ハウス」は、そもそもはどのような背景があって設立されたものか、このようなハウスが担う役割はどんなものなのか改めてお聞かせください。

島田:世界で最初の「ドナルド・マクドナルド・ハウス」は、1974年にアメリカ・フィラデルフィアに設立されています。遠方から医療機関に通ったり入院したりする小児患者のご家族が、睡眠や食事を十分に取れず疲れ切っている様子を見て、ボランティアや寄付などにより宿泊施設が作られたのがはじまりです。

片岡:アメリカでは40年近く前からこのような施設があるんですね。

島田:マクドナルドの、というよりは、医療機関や医師たちが呼びかけた社会運動としてスタートしました。

片岡:子供が家から離れた所で長期入院する事になったら「病室で添い寝する」「近くのホテルを取る」「近くの親族の家などから通う」「無理して自宅から通う」といった選択肢しかなかったところへ、親御さんやご家族の精神的・金銭的負担を少しでも軽くするためだったわけですね。

島田:そうですね、どこかでホテルを借りると行っても、病院のすぐ横に普通はホテルなんてなかなかないですから。それに小児医療というのは、入院期間や治療期間が長いケースも多いんです。日本でもこのような施設は他にもありますけれど、私ども「ドナルド・マクドナルド・ハウス」の一番の特長は、医療機関のすぐ傍にあることだと思います。そして、医療機関と完全に連携してサポートする体制があります。

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片岡:ここ「おおさか・すいたハウス」もすぐ隣に国立循環器病研究センターがありますね。

島田:はい。基本的には個人情報になりますので、入居者さまの病名までは解りかねるのですが、何科にかかっているかは把握しておりますし、医療機関の方でもご家族のどなたがハウスに滞在されているかは把握されておられます。

片岡:万が一の時には、すぐ連絡が取れて、駆けつける事も出来るわけですね。

島田:自分の家からすぐお見舞いに行けるような環境を提供することで、お子様の傍にずっとついてあげることも出来ますし、何かあれば駆けつけられるという前提で、フッと一息ついて一人の時間を作る事も出来るわけです。

片岡:子供の傍には居たいけれど、がんばりすぎちゃう親御さんも多いことでしょうから、束の間の息抜きも取りやすくなるわけですね。

島田:小児医療の現場では親御さんたちの存在が、子供のメンタルケアの上でもとても重要です。”HOME AWAY FROM HOME”=「我が家のようにくつろげる第2のわが家」というコンセプトを掲げているのも、いつも通りの家族の生活を送ることで、少しでも精神的な不安やストレスを排除してもらいたいという想いです。

大勢のみなさんの中で、ドナルド・マクドナルドが登場!
ドナルドのパフォーマンスに会場の子供たちは大盛り上がりとなった。
敢えて受益者数の限られたものにフォーカスする理由

片岡:少しこれは意地悪な質問になってしまうかもしれないのですが、マクドナルド社のCSR活動の一環として、この「ドナルド・マクドナルド・ハウス」支援活動を行っていく上で、なぜ“難病の子供を持つ家族”を対象としたのでしょう? 例えば、「恵まれない子供たちにクリスマスプレゼントを贈る」といったような“マス”的な選択肢もあったはずだと思うのです。マクドナルド社といえば、一日の来店者数が億単位などのビジネスモデルが一方であります。マスマーケティングを行っている企業の関連財団の活動として、敢えてその対象が「難病の子供を持つ家族」という受益者数の限られたものになっているという点に、ギャップがあるようにも思うんです。何か理念があるのかと。

島田:それについては私個人の主観が入ってしまうかもしれないのですが、理由は2つあるのかなと思います。まずはこの「ドナルド・マクドナルド・ハウス」の生い立ちによるものが大きいでしょう。1974年に一号ハウスが出来たのも、もともとは医療機関や関係者の間で課題とされていたことに対して、マクドナルドが「舟」を出したことにより始ったことです。そしてもうひとつは、例えどんな大きな企業といえども、全てをカバーする事はむずかしいということです。他の企業さんもそれぞれCSR活動を行われています。どこにターゲットを置くかという点では様々な特色があることと思います。

おっしゃるようにマクドナルドのビジネスは“マス”であるがゆえに、「もっと全員に公平に行き渡るチャリティの方がいいのでは?」という意見もあります。一方で、そうした中で何に特化するということも1つの戦略だと思うんです。特化した分野を徹底的に継続的に支援していくというある種の深さが、チャリティとしては結果的には大事なことではないかと思います。

片岡:なるほどなるほど。

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島田:日本国内ではまだ8つですが、世界的には現在320ものドナルド・マクドナルド・ハウスがあり、毎年15ハウスほど増えています。これは、グローバルに見た場合は非常に大きな活動になっています。日本での歴史はまだ浅いですが、今後10施設、20施設と増えた時に本領を発揮できるのではないかと思います。

片岡:そんなに増えてきているのですね。全ての病院にとはいかないと思いますが、今後も続々と施設は整備されていくのでしょうか?

島田:はい。今決まっているのは、来年度秋頃に名古屋大学医学部附属病院の近隣に出来ますね。そして、その次の年度には福岡市立こども病院・感染症センターの近隣に出来る予定です。そうすると全国10施設、各ブロックにまんべんなく施設が出来ることになります。

片岡:かなり順調に全国展開が進んでいるわけですね。では引き続き、せっかくですので、ウェブサイトに掲載されていないことや、これまであまり知らなかったことも突っ込んで伺いたいので「前編」と「後編」に分けさせて頂き、「後編」ではもう少し込み入った質問をさせてください。(笑)(つづく)

ドナルド・マクドナルド・ハウスのスタートは、医療機関や医師たちが呼びかけた社会運動としてスタートしたと話す島田常務理事。