21世紀のビジネス最前線 86・87・88世代 ベンチャー編シリコンバレーを拠点に起業
’88世代『Wondershake』鈴木仁士。

(2011.12.09)

鈴木仁士
『Wondershake』
Co-Founder, Chief Exetctive Officer

1989年生まれ。国際基督教大学卒業。日本で生まれナイジェリア、ロンドン、サンディエゴで育つ。2009年11月カリフォルニア州サンディエゴで『Wondershake(ワンダーシェイク)』のビジョンとコンセプトを考え、同時にアントレプレナーシップとウェブテクノロジーに強い興味を抱く。Open Network Lab 第2期生、TECLOSION 2011 最優秀賞、TechCrunch Disrupt  Best Use of Social Data Award
http://wondershake.com/jp/

現実世界でモバイルにより
人と人が発見し合うのが面白い。

−−まず、サービス概要について伺えますか。

鈴木 『Wondershake』は周辺にいる同じ趣味やアイデンティティの近い相手を発見し、繋がる事ができるiPhone向けの新しいアプリです。元々私が現実世界で人と人とを繋げるサービスを作りたいと思っていたのでこのテーマで取り組んでいます。もちろんそれはモバイルではなく、何らかの形でサービスにしたいと思っていました。『Wondershake』のサービスの形を考え出したのは、昨年の初め頃にチェックインやロケーション系のサービス(『FourSquare』等)が流行りだした頃でした。それまでは、スマホがあってGPSがあるってだけで、チェックインやローケーションに対して世の中の意識が低くく、『FourSquare』みたいなサービスの発想は出てこなかったと思っています。

でも、そういったサービスが出てきて現実世界でモバイルにより人と人が発見し合うのがすごい面白いと感じました。自分が留学中に、他の学生と繋がる手段として欲しかったこともあり、去年の夏くらいから『Wondershake』の具体的な姿を考えていました。もちろん、これをやろうと思ったのはパッと出のアイデアではありません。自分の問題意識とロケーションやチェックインのサービスが流行っている文脈のなかで、時代にマッチし尚且つ面白いと思ったから始めました。そして、試行錯誤した上で今のサービスの形になりました。


『Wondershake』は、自分の近くにいる共通の趣味や目的をもつ相手を簡単に発見して、繋がることが出来るサービス。「今、そこにいるあなた」を表現して、あなたが出会うべき相手が発見できる。
『Wondershake』は、今まで繋がっていないユーザー同士が、
初めて知り合う事が出来るサービス

−−『Wondershake』のインタレストグラフについて伺えますか。

鈴木 最初はインタレストグラフを考えていました。『Wondershake』を使うことで、人と人が繋がるコンテキストや理由が生まれるのではないかというのが最初の仮説でした。でも実際にサービスをリリースしてみて、予想していたほど興味、関心のマッチングの強さが『Wondershake』には出ず、ストレンジャー同士が繋がるには、「ただ、何かが好き」だけでは足りないと感じました。

『Wondershake』のコンセプトやサービスのポジショニング、概念等はまだ定義が出来ていませんが、『Wondershake』は「人と人が繋がる前に活用できるサービス」だと思っています。既存のSNSの『Facebook』やTwitter等のサービスは繋がりを保つ事ができるサービス。私たちのサービスは、まったく繋がっていないユーザー同士が、『Wondershake』を通して初めて知り合う事が出来るサービスを目指しています。お互いが感じるものがありそこで繋がる事が面白いと思っています。他のサービスとの差別化という点ではその点です。

−−具体的に人を繋げる為の良いアイデアはお持ちですか。

鈴木 現在、それを試しています。例えばサンフランシスコに滞在していて同じ大学の人間に出会うとテンションがあがりますよね。それは人に根付いているアイデンティティに近い情報(出生・仕事・学校など)を持った人が出会ったからです。また、参加者の多いイベントの場で『Wondershake』を使うと非常に面白い。沢山の人がいる中で自分がどれだけオリジナルなのか表現し、簡単に自分に出会うべき相手を知れる場面がある。それが一番のユースケースです。沢山の人の中で、人と人がマッチする条件は趣味だけではなく、その人がなんでその場所に来ているのという情報も当てはまります。それを特化して掬い上げることができるのが『Wondershake』です。『FourSquare』だと何故その場所にチェックインしたかわからないし、Twitterだと条件も制約もないため、つぶやいても繋がれません。この人に会いたいって思う条件としては、そこに何故来たのか、何を探してきたか、今どういう心境なのかっていう部分。そこを掬い上げていける仕組みを作っています。

日米スタートアップベンチャーに
レベルの差はない。

−−将来的に『Wondershake』のビジネスモデルはどうなっていくのでしょうか?

鈴木 具体的にどの段階で利益が出せるかは現時点では考えていません。私たちが持っている1番おもしろいデータは現実世界で人間がどんな行動をしているか、いつどこでどう思ってどんな趣味を持っているか、という点です。そのデータを元にモバイルベースで広告を打ったり、ユーザーにカスタマイズしたオファーが提供できます。しかし、そのためにはユーザー数を集めないといけません。まだわかりませんがフラッシュマーケティングにも今後絡んでいくかもしれません。僕たちがビジネスとして提出できる大きな価値はローカルやリアルな店舗にユーザーを運ぶことです。『Wondershake』でマッチした際にはディールを出してほしいとか、特定のエリアだったらこの広告を出して欲しいなどいろんなやり方で行っていきます。もちろん、その際は広告という概念が変わると思います。

−−アメリカに来て、日本とのレベル感の違いはありましたか。

鈴木 意外とレベル感に違いはありません。基本的にはどんな人でも頑張れば出会えるし、すごい近くで仕事をしててコミュニティも狭いと感じます。自分たちのステージだと横並び状態です。同じステージにいる人達はお金も多くは調達していないのでシェアオフィスをしているケースがあります。すると、シェアオフィスの中で互いに刺激を受けることができて、面白い。アメリカでもスタートアップ数は増えていて、今はスタートアップブームです。『Facebook』プラットホームやスマートフォン普及が相当影響していると思います。日本でも感覚でしかないですが、徐々に増えてるとは思います。同じ世代で、ReadyForなど色々ありますし、今は始めやすいと思います。日本でも数年前のITブームのような事が多少起こっていると思います。


『Wondershake』は、『Facebook』で各自が登録した興味のある項目(人・モノ・コト)を通じ、人と人の新たな繋がり方を提供するアプリ。自分のページには、興味関心のある項目が表示され、シェイク(いわゆるチェックインだが、実際にiPhoneを振る)することで、自分の情報が場所や建物に送信され、同じ場所にする人と共有される仕組み。
ジャック・ドーシーのような世界観を
持ったサービスに注目。

−−今、注目しているサービスはありますか?

鈴木 アメリカだと個人的にTwitterを作ったジャック・ドーシーが好きで、今ドーシーが作っている『Square(スクエア)』というサービスが面白いなと思っています。スクエアはiPhoneでクレジットカード決済ができるサービスです。そのサービス自体は似たモデルは結構でていますが、僕はジャック・ドーシーが持っている世界観とコンセプトが好きなんです。彼はすごいストーリーテラーで、NYの街中でビルとビルの間にどれだけ人がいて、その人たちが何をやっているのか、街中の見えない人の動きを可視化したいとドーシーは常に言っていました。パトカーや消防車は無線で話します。携帯で話すというより無線で話すイメージでお互いの位置だったりを無線で可視化したいと思っていました。『Square』も同じ理由で作っていて、今まではお金に対する人の考え方がポジティブではなかったです。彼はそれをとことん効率化して可視化して、一回の決済で起きる全ての情報をデジタル化し、トランザクションがどこかなのか、実際にモノを買った店舗にハンドルが解るとか、そんな仕組みを作ろうとしています。そんな彼の考えや狙ってる世界がおもしろいなと思いますし、凄く憧れの存在です。

Twitterを開発したジャック・ドーシーが2年前に始めた『Square』。『Square』は白い四角い(=スクエア)装置でクレジットカード情報を読み込むシステムで個人がちょっとしたモノを売る時、カンタンにクレジットカードで支払いを受けられるようにするサービス。


健全な自分の実名を使ったモバイル・コミュニケーションを
『Wondershake』で

−−日本では位置情報をWebに示すことに壁を感じますが、どう捉えていますか。

鈴木 まさに最初に話していた事なんですが、いまは『FourSquare』等のおかげで以前よりスムーズにいくと考えています。この系統のアプリケーションで会員が1000万人いるサービスはありません。たぶん出会い系ならあるとおもいますが、健全に自分の実名を使っていてモバイルでコミュニケーションが出来るものまだまだ非常に少ないです。『Wondershake』は人々が実名で気になる相手とリアルで繋がれるプラットホームを作りたい。時代的には『Wondershake』はまだ早いかもしれませんが、ARよりは現実的だと思いますし、2012年はまさにその年になると感じています。

−−実際、鈴木さんくらいの年齢でスタートアップする人は少ないですし、さらに海外で勝負しようとする人はもっと少ないと思います。そんな中、最後に下の世代にむけてメッセージはありますか。

鈴木 実際に1度来てみるのが一番おもしろいかなと思っています。シリコンバレーに来たら心惹かれると思いますし、逆に来てみて違うなと思う事もあると思いますが、Webで見るのとはやはり違います。Webで見て完結してしまったら人生つまらないな、と。僕は1度留学していて、その経験がとても大きかったです。海外に住んでいたことありましたが、スタートアップについては全くのノーアイデアでした。でもそれがアメリカ留学で大きく変わりました。もちろんアメリカでなくても良いと思います。自分がやろうとしていることの最先端の場所に出向いて、リアルでその実体を感じてくることが次のステップに繋がると感じています。