片岡英彦のNGOな人々 (Non-Gaman Optimists)病気の子供と家族に”スマイル”を
ドナルド&島田 浩三さん〜後編〜

(2012.12.10)

「NGOな人々」”Non-GAMAN-Optimist”とは、「ガマン」していられず、チャレンジをし続け決して諦めない 「楽観人」のこと。NGOな人々へのインタビュー第23回は、“日本の小児医療における患者と家族のメンタルケア”を推進するサポートハウス『ドナルド・マクドナルド・ハウス』常務理事の島田浩三さんです。「おおさか・すいたハウス」で行われたオープンハウスの模様を見学したあと、特別にドナルドに館内を案内してもらいました! 後篇。

■ 島田浩三 プロフィール

1974年、日本マクドナルド株式会社入社。神戸エリア店舗、香川・高松店店長を経て大阪本部販売促進部へ異動。マーケティング領域の業務を歴任し2004年本社営業本部CSR部長、その後CR本部を経て2006年公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ ジャパン常務理事(現職)に就任、現在7年目。

・公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ ジャパン
http://www.dmhcj.or.jp/

「最も増やしていきたいのは一般の企業さんや個人の方からのご支援です。出来る限り民間の力で運営を続けていきたい」と話す島田常務理事。PHOTO / studio tec 井上昌明
ドナルド・マクドナルド・ハウスの台所事情

片岡:一般的にはあまり知られていないとは思うのですが、いわゆる財団の基金といいますか、どういう収益モデルで成り立っている団体なのか教えてください。例えば、マクドナルドで食事をすると寄付金になるのですか?

島田:以前はハッピーセット(子供用セット)の売上の一部がチャリティとなる取組も行っていたのですが、今は日本マクドナルド社から財団へ直接の寄付金として年間で受け取っています。昨年度が5,000万円です。今年度も何かしらご支援いただくことは決まっていますがこの額面というのは毎年決まった額ではありません。また、それとはまた別に、マクドナルド全店舗に募金箱が設置されています。こちらからの募金総額が今年はもしかすると約1億を超える勢いです。

片岡:おぉ~。それはかなり心強い大きな金額ですね。

島田:はい。大変有難いことです。また昨年の「東京マラソン」では、マクドナルドCEO原田氏と同社の役員が出場しチャリティを呼びかけ1,450万円を集めて頂き寄附して頂いたりと、マクドナルドは我々の最大のサポーターということになります。ただ、アレをしろ、コレをしろという指示があるわけではありませんから、公益財団法人としては、本来であればもっと他のスポンサーやサポーターにご協力頂き、比率をもっと分散していかなくてはいけないと考えています。

片岡:サポーターとしてはマクドナルド以外の一般企業、個人、行政機関、などがあるとおもいますが。

島田:もちろん行政機関との協力や連携は不可欠ですが、最も増やしていきたいのは一般の企業さんや個人の方からのご支援です。出来る限り民間の力で運営を続けていきたいと考えています。

ドナルドが特別に施設内を案内してくれることになり、ご挨拶。靴の形の名刺を頂いた。
世界のドナルド・マクドナルド・ハウスから

片岡:ドナルド・マクドナルド・ハウスが全世界で展開されていることによって、様々な小児医療を取り巻く環境についての世界中からの情報が集まっているかと思いますが、日本と他の国々ではどういった違いや特色がありますか?

島田:例えば、欧米では寄付金文化や寄付金控除も発達していますし、そもそも小児病院の数がかなり多くあります。遠方からやってくる患者も多く居ます。病院の傍に宿泊施設を建てるということは、そもそものニーズがかなり高いわけです。

片岡:日本ではほとんど総合・一般病院の中の小児科として置かれていますね。

島田:そうです。小児病院として独立している専門の病院は、日本国内には実は約30ほどしかありません。これは日本の小児医療行政の問題の一つでもあるんですけれど。総合・一般病院だと行政区という視点では比較的狭いエリアから患者さんが集まって来ます。基本的にはご自宅から通うスタイルになるわけです。一部の重傷・難病患者が東京や大阪などの専門病院へ入院することになり、そこで、はじめて宿泊施設についてご家族のニーズが生まれます。

片岡:となると、施設を沢山増やしていくにしても、そもそもそのエリアや病院に利用ニーズがあるかどうかをしっかり事前に調査しておく必要があるわけですね。

島田:はい。まずは専門の小児病院があるところ。次に総合・一般病院で小児科の比重が高いところで、かつ周辺に宿泊施設がないところ。こういった情報をもとに候補をピックアップします。また、県外からの入院者数、滞在日数、ご家族からのヒアリングなど、医療機関と共に入念な調査を事前に行います。有難いことに全国各地からハウスを建てて欲しいというリクエストは沢山いただいています。しかし、みなさんの寄付金で施設を建てるわけですから、利用者数が少ないと予想されるところには仮にリクエストがあってもオープンすることは残念ながら現実には難しいわけです。

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片岡:驚きました。まるでマクドナルドの出店計画と同じように緻密な調査がなされているのですね。どうしても現状ではハウスが大都市に集まってしまいますが、そのあたりにも理由があるわけですね。ところで各ハウスでのボランティアの方の協力などはいかがですか?

島田:施設の運営側をお手伝いして下さるボランティアスタッフさんの数には実はあまり困ったことがないんです。全国延べで結構な数の方にお手伝い頂いていると思います。

片岡:それは心強いですね。地域ボランティアという概念が、日本にも徐々に浸透しつつあるということでしょうか。

島田:以前に比べればそうですね。社会貢献というものを理解され興味のある方が増えているようにも思います。もっとも、来られる頻度はみなさんそれぞれです。毎週来られる方、毎月来られる方、一度きりの方ももちろんおられます。ただ、それを強制しないということがボランティアとの関係を長続きさせる秘訣でもあるんだと思います。欧米と比べるとやはりこのボランティア活動文化も、まだまだ日本には浸透しきっているものではありません。地道に地域との共生をはかり根付かせていきたいと思います。

片岡:ボクがもし個人サポーターになるとしたら、どのような方法が一番簡単に出来ますか?

島田:もし寄付という形でご検討頂けるのであれば、財団ホームページ内の「寄付をお考えの方」というページに、詳しい情報をアップしているのですが、WEBからのクレジット決済も用意していますし、口座への振込方法もレクチャーしています。ま、もっと敷居の低い募金という形でしたら、マクドナルド店舗にある募金箱へ小銭を入れるスタイルが、一番簡単なサポーターになれる方法です(笑)

片岡:あぁ、そういえば確かにそうでした(笑)

おおさか・すいたハウスを見学!

片岡:最後にせっかくお邪魔しているのでここ「おおさか・すいたハウス」ならではの特長などを教えてください。

島田:ここは隣接している病院が「国立循環器病研究センター」といって、小児病院が独立しているわけでなく、その名の通り“心臓や血液など”に問題を抱えている小児患者が遠方からもやってくるナショナルセンターです。主に心臓などの循環器病疾患を扱う、おそらく国の中でも有数のトップ医療機関です。

片岡:となると、やはり滞在期間も長くなるのでしょうか?

島田:ええ。人工心臓をつけて移植を待つ子供も、病院で長く暮らしているとだんだん笑顔も減って暗くなっていきます。そういったときに、ハウスに親御さんに泊まってもらって、せめて自宅と同じような団欒を愉しめるようにするとか。

片岡:人工心臓をつけているお子さんもここに宿泊出来るんですか?

島田:はい。人工心臓は、実はアース付の電源コンセントが必要だったりするんです。それを各部屋に標準装備しました。そうする事で人工心臓のお子さんもハウスで宿泊する事が出来るように環境を整えたりしました。退院して社会復帰をする前にもリハビリで使っていただく事も可能です。

片岡:医療機関との綿密な連携があって初めて、病気のお子さんと親御さんをバックアップする体制が出来ているというわけですね。全国からドナルド・マクドナルド・ハウスの設立が望まれるのも解かる気がします。

島田:まだまだこれからやらくてはならない事が沢山ありそうです。

片岡:出来る範囲でサポートさせてください!本日はありがとうございました。

島田:ありがとうございました。

とっても落ち着きのある宿泊用の部屋。手作りの置物やベッドカバーが宿泊する方々に安らぎを与える。

各部屋が少しずつ異なるテイストでレイアウトされているのも特徴。
インタビューを終えて

2006年から2009年にかけて、私はマクドナルドのマーケティングPR部門の責任者をしておりました。日々、新発売されるマクドナルドの新メニューや販促キャンペーンを、いかにPRしていくか、チャレンジの連続でした。様々なプロモーションを企画し立案してきましたが、心残りだったことの1つが、ドナルド・マクドナルド・ハウスについてあまりPRできなかったことでした。もちろんこのドナルド・ハウスによる社会貢献活動は、マクドナルドが自社商品の販売宣伝を目的として行っているものではありません。社会貢献活動は社会貢献活動として。販促活動は販促活動としてと当時は思っていました。同時に何かよい形で両者を連動させシナジー(相乗効果)を出せないだろうかとも思っていました。はっきりした答えは未だに自分でも出せていません。しかし、今の自分は当時よりも少しは成長したのかなとも思っています。島田常務理事とドナルドに貴重な機会を頂けたことを改めて感謝致します。

(PHOTO / studio tec 井上昌明)

最後はドナルドを囲んで島田さんと記念ショット。