21世紀のビジネス最前線 ゲーム業界 その3通信、流通、販売手法の変化を
総合するソーシャルゲーム。
(2011.11.14)
グリー 代表取締役社長
田中 良和
GREEは全世界会員数は1億ユーザーを超えるSNS。近年中国最大のインターネットグループTencentやmig33とプラットフォームの仕様を共通化することで、ソーシャル・ゲーミング・ネットワークを拡大した。世界的なネットワークが引き起こすパラダイムシフトと今後の戦略について語った。
ソーシャルゲームと言われるものは3つの部分があって、それぞれちがうけれども、それを総合するものがソーシャルゲームだと思ってます。
まず1つ目が、通信環境の変化、スマートフォンになって通信環境が標準になったということ。
2番目が流通手段が変わり、いつでもどこでもゲームが出来る反面、アイテムフリーなゲームであるということ。常々、ソーシャルゲームの普及はスマートフォンの普及による通信環境が大きいなと思っています。僕らがスマートフォンで実現できる事は常時接続の出来るコンテンツの作成だと考えていて、接続環境にないユーザーと全員がその環境にあるユーザーに対してでは、作れるゲームデザインが変わります。そういった意味でこの新しい通信に即したソーシャルゲームの特徴かなと思います。
また好きな時にできて好きな時に買えるという点も大きい。物理的に買うとか送るしかできなかったことが電子的になることで、いつでもどこでも始められるというメリットがあります。今までだと、「ゲームやりたいな」と思っても買いに行くのが面倒くさく、そのうち忘れてしまう人がいた。やりたいと思えばやりたい時にできるという流通の方法が変化したという事が大きいと思っています。
3つ目が販売手法の革新、アイテム課金です。これは普通のビジネスでも当たり前のこと。例えば、世の中のレストランでもコース料理しか選べないレストランもありますし、自分が食べた分にお金を払うというように業態が幾つもあります。ゲーム業界にも普通の世の中と同じように様々な販売手法が出てきたと言えるでしょう。
この販売手法・流通環境・通信環境が大きく同時に変わってきている事がゲーム業界に激震を走らせているんではないかなと僕自身は思っています。
課金決済機能がスマートフォンに搭載。
どのようなサービスを作るか?
ただ、僕は注目していかなければいけないのは次に何が来るのかということです。ゲーム産業はコンピューター業界の一部という考え方が前からあったと思いますが、我々はコンピューター業界はどういう風に変化を起こすべきかを考えています。
コンピューター業界にはダウンサイジングという強烈な波がありまして、より小さいものが、安くより高性能化していて汎用化していくのが今までの歴史です。今、実際にスマートフォンっていう一つの統合的な汎用ができ、ワープロやデジカメを単体で買う必要がなくなってきている。スマートフォンがソフトウェア的に専用機を仮想化していくという流れが出来てきている時代に入ったなと感じています。
しかし、これは必ずしも専用機対汎用機という構図ではないと思っています。やはりこういう大きな流れの中で、専用機は専用機の価値を作っていくことで大きなマーケットを生み出すと思っていますし、汎用機は汎用機でそういったマーケットを産み出していければいいと思います。今、まさに起きているのが、電話機という物がスマートフォンに吸収されつつあるということです。iOSとかAndroidなどが大きく取りざたされていますが、必ずしもこの環境がプラットフォームの中心になるとは思いません。
けれどもどちらにせよ、スマートフォン中心とした環境が専用機の機能を取り込んでいくのではないかと思っています。例えばiPhoneに直接クレジットのカードリーダーが付いている場合がありますが、課金がすぐ出来る決済機能がスマートフォンのような汎用機に搭載され、ソフトウェアでリレーションされているということが起きている。このような事が全分野で起きてくる。私としては、そういった時代の中どういうサービスを作っていくかべきかが今、求められていることだと思っています。
垂直統合型のモバイルビジネスを
いかに展開していくか、がGREEの命題。
技術革新によって低価格で高性能なものがどんどん登場してマーケット全体が広がっています。
例えばファッションにおいてだと今までだと何万円もするものでないとお洒落できなかったのに、数千円ですぐにファッションが楽しめるファストファッションが浸透している。
ゲーム産業も同じで、これまで何万円もするハードウェアを買わないとゲームが出来ないということがあった。そこまでして遊ぶ必要はないなと思っていた人もいたと思います。
スマートフォンというみんなが持っているものでゲームをするっていう環境になり、ゲームをする人口が爆発的に広がった。スマートフォンっていうのはこれから多分我々が生きていく中では、1番普及する端末だと思っています。この端末でゲームが出来るのは大きなビジネスになるのかなと思います。
そんな中でGREEとしてどうしていくか。我々がやっているのは普通のSNSのコミュニティーサービスに加え、プラットフォームビジネスでサードパーティの中にゲームを出していくというビジネスです。そして自らファーストパーティーとしてゲームも出す。
その3つのビジネスを垂直統合で行なっており、さらにこれをスマートフォン中心で行なっているのが特徴です。ゲーム業界においてプラットフォームを持ちつつ、ゲームを作るっていうのは普通なんですが、世界的に観るとモバイルの中でプラットフォームはプラットフォーム、ゲームはゲームという風にやっている会社が多いわけです。だから、我々の垂直統合型のモバイル中心のビジネスは世界に通用するユニークなモデルであると思っています。我々としてはこのモデルをいかに展開していくかという事が大きな命題であると考えています。