片岡英彦のNGOな人々 (Non-Gaman Optimists)「普通のオジさんの味方」
男性美容研究家 藤村岳さん

(2012.08.31)

「NGOな人々」”Non-GAMAN-Optimistとは「ガマン」していられず、チャレンジをし続け、決して諦めない 「楽観人」。NGOな人々へのインタビュー第20回目は “オジサンが清潔になるためのお手伝いをしたい”と言う男性美容研究家・コンサルタントの藤村岳さんです。

■ 藤村岳プロフィール

(ふじむら・がく)1973年、東京生まれ。大学卒業後、植物関連の雑誌・書籍の編集を行う。その後、料理、健康などの生活情報誌に携わる。男性が読む美容記事を毎日、ヒゲを剃らない女性が書くことに違和感を覚え、独立。シェービングを中心に据えた独自の男性美容を打ち立てる。国内外のスパを訪れ、男性が楽しめるスパ・エステについても日夜研究。男性美容のパイオニアとしてテレビ・ラジオ・講演・イベント等への出演のほか、スキンケアに迷う男性向けのパーソナルカウンセリング、男性コスメ商品の企画開発、ブランドへのコンサルティングなども行っている。
DANBIKEN主宰
オールアバウト メンズコスメ・男のボディケアガイド


photo / 井澤一憲

“男性向けの美容カウンセリング”とは?

片岡:さっそくですが、藤村さんが手がけられる“男性向けの美容カウンセリング”とはどういうものなのか、教えて頂けますか?…僕は、生まれてこの方“美容”のことなど考えたこともなく、普段のシェービングにも無頓着なのでお恥ずかしいのですが(苦笑)

藤村:いえいえ。おそらく、多くの男性がそうだと思うのです。例えばですが(事前に回答済みのカウンセリングシートを見ながら)普段のシェービングは剃刀と電気シェーバー、どちらが多いですか?

片岡:土日は剃らずに伸ばしたままです。月曜の朝「T字」の剃刀で剃ってスッキリさせてから出勤します。火・水・木・金は電気カミソリで軽く剃ります。

藤村:あれ?…その方法はまさに、僕がお勧めしている“完璧な剃り方”のスタイルです(笑)

片岡:え~!? そうなんですか?

藤村:はい。どちらかといえば、電気シェーバーよりも深剃り出来る「T字」の剃刀をここぞという日にもってきて、髭剃りにも“休肝日”のようなお休みの日(ヒゲ日?)を作るんです。そうすることで、肌を傷めずにしっかり深く剃れるようになります。電気シェーバーを使う際には、基本的にはドライな状態で剃ってらっしゃいますか?あるいは電気シェーバー用ローションを用いるか。

片岡:ドライな状態、というと石鹸も水も何も付けない状態で…?

藤村:はい。洗顔後や石鹸や水をつけた方が、肌の当たりもよく優しい気がしますが…元々電気シェーバーの原理は“ハサミ”ですから、ドライな状態で最高のパフォーマンスをあげられる設計なんです。電気シェーバー用ローションで洗顔前の皮脂のベタつきを抑え、滑りを良くして、髭を剃って、次に顔を洗って、最後スキンケアをするというのが正しいケアの順番なんです。

片岡:へぇ~。なるほど。

男の人のケア、結局は女の人次第。

藤村:今日、片岡さんのためにシェービングオイルとシェービングクリームを用意しました。これは電気シェーバー用ではなく、「T字」の剃刀をお使いになる時におススメのものです。つまり、片岡さんの“月曜日剃り”用ですね。ちょっと使ってみますか。

片岡:ぜひ。(実際に触感を確かめながら)…思っていたのと違って、柔らかいですね。匂いが強いワケでもない。

藤村:これはクローブという植物で、髭の成長を抑制する作用があるんです。毎日これをつけていると髭が成長しにくくなります。たとえば他にはペッパーの香りや杏仁豆腐(アーモンド)の香りがするような商品もあるんですよ。最近、甘い香りが好きだという男性は結構いらっしゃいますね。

片岡:杏仁豆腐みたいな香りですか…面白いですね。

藤村:男の人のケアって、結局は女の人次第なんですよ。「いい香りですね」と言ってもらえるとそれが嬉しい。女の人が好きな薔薇の香りを纏う“ローズ男子”も増えています。イギリスの『ジョー マローン』という世界的に有名な香水があるんですが、そこの「レッド ローズ」というピンク色の薔薇の香りはイギリスのビジネスマンに非常に人気があります。たとえばこのシェービングオイルは8千円くらいです、1か月以上はもつと思います。でも20万円くらいのスーツを買うことに比べたら、この投資は全然高くはないはずです……


藤村さんがオススメしてくれた『貝印』の「iFIT」という5枚刃のカミソリ。刃体が上下以外にも自由に動く。

自分を気遣うことの出来ない人は、
他人や仕事を気遣えるのか?

片岡:この“男性向けの美容カウンセリング”を始められたキッカケというのは?

藤村:そうですね、片岡さんがおっしゃられたように日本人の男性で特に30代の後半以上って、自身の美容には無頓着な方が殆どだと思うんですね。むしろ旧来型の「男らしい」とか「女らしい」といった価値観に囚われているとうか…“自分をケアする事に罪悪感”を持っている人が非常に多いと思うんですよ。これは勿体ないな、と思っていまして。

それに…「自分を気遣うことの出来ない人は、他人や仕事を気遣えるのか?」という思いもあります。試してみれば気楽に出来るのに、そもそも関係ないモノとして頭に無い方が多い。だからその“罪悪感”からまず解放されて自分をケアする事の啓蒙活動をしてみよう、と考えたのがキッカケですね。

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片岡:なるほど。実際のカウンセリングではどのような流れになるんでしょうか?先ほどは「シェービング」の話題をまず出されていましたが。

藤村:はい。先ほどは「髭を剃る」という男の人ならではの習慣が解かりやすいと思って例に出させて頂きましたが、大きく分けて「髭を剃る」「顔を洗う」の2つをよくお話しさせて頂きます。「剃り方」「洗い方」も少し気を付けるだけで、随分老化の進度が違います。普段の習慣をヒアリングしながら、理想とされている「剃り方」「洗い方」それぞれをお伝えし、必要であればケア用品などもご紹介して行くとう流れです。具体的な進行はそんな感じですが、実際はもっと内面のヒアリングをさせて頂くことも多いです。

片岡:といいますと?

藤村:…実は、普段何気なくやってらっしゃることですが、片岡さんぐらいから上の世代の方は「髭を剃る」「顔を洗う」という一連の流れが、自分の内面を見つめることにも繋がるんですよ。毎日意識的に鏡を見る、というのは自己を振り返るための最適な習慣になり得ると思うんですよね。

片岡:あぁ…いわんとする所はわかりますね…

藤村:「髭を生やす」ということが、ステイタスを表す時代もありました。髭をきちんとたくわえるという事が、男性として権威の象徴だったわけですね。それをメンテナンスするのは、実はすごく面倒臭いことだったはずなんです。ちゃんとしないと、無精髭よろしく、だらしない印象になってしまう。英国の紳士が、鏡の前でハサミで髭をチョンチョンチョンってやってるシーンを映画で観たことありませんか? 彼らがやっている身だしなみは、見る人が見れば、「女々しい」行為に映ったのかもしれませんよね。

第二次世界大戦後の時代は「まず経済を復興させて軌道に乗せる」というのが非常に重要視されて、「男たるもの、家族の為・社会の為に仕事をし、額に汗して、なりふり構わず働くのが美徳」でした。勿論その時代あってこその現代ですから否定することはありませんが、「男らしさ」の価値観が20代と30代の中盤辺りを境目にガラッと変わってる印象もあります。

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片岡:草食男子系、とかですか?

藤村:わかりやすい1つとしてはそうですね。今の若い世代なんかは「自分を犠牲にしてまで、体張ってなりふり構わず働いたって、全然幸せでも男らしくもないよね」という事に気づき始めた。それで「自分を大事にする」……自分の見た目も中身も充実させる為に、自分のために努力するって、そんなに悪い事じゃないよね、それが自然に出来るともっとイイよね、といふうに…多分それがマスコミで言う「草食化」とかに繋がってるんじゃないかって思うんですが。

僕は別に彼らはちっとも草食じゃないって思ってるんですよ。中性的になっているとかそういう話でもなくて、自分に対する関心が高まってそれが非常に自然であるのが、旧来の価値観から判断すると「草食」に見えるっていうだけなんじゃないかなと思うんですよ。「モテ」というのが一時的に流行りましたけど、まあ結局あれはブームでしかなく、他人に不快な気持ちを与えることをものすごく恐れてるんですよ。「嫌われたくない」というのが特に強いなあというふうに感じますね。

毎日自分を、定期観測する事って実は大事。

片岡:例えば「男性にも女性にも好かれる清潔感をもつ」ためには、どんなカウンセリングがありますか?

藤村:どちらにせよ「髭剃り」「洗顔」の基本は男性にとっては必須です。あと「眉毛」でしょうか。人の眉って左右対称ではなので、どちらかに合わせて行くんですね。どういう風に表情を作りたいか、どういう印象で人に見られたいか、とかイメージを決めてから作って行くんですが、それが分からずにただ左右対称に揃えようとするとドンドン細眉になって行って……なんだか昔の高校生のヤンキーみたいになってる方いらっしゃいませんか?ビジネスマンでそんな方にお会いすると少々引いてしまうというか…“やりすぎ”が見えると人ってヤッパリ人って引くんですよ。身だしなみのセンスで大体予想出来てしまうというか……

片岡:それは頼もしい(笑)実際、この美容カウンセリングを受けに来られる人達には、どんなきっかけが多いのですか?

藤村:まずこのような“男性の美容カウンセリング”と聞いて受けに来てくださる方というのは、基本的には“何事にも意識の高い人”が多いです。自分に何が足りないか分かっているので、カウンセリングもしやすいです。これはスキンケアに限らず仕事でも何でも、問題意識がある人はちゃんと俯瞰で眺めて更に意志的な事も見られるという事だと思います。

そういう方って、やはり自分なりにスキンケアや健康管理を真面目にやられてます。多分、ケアに投資をするメリットを非常に分かってらっしゃるんですよね。逆にときどきいらっしゃるのですが、とにかく問題意識はあるものの、何を質問して良いのかも分からない漠然とした状態で来られる方には、「毎日意識的に鏡を見てください」とだけお伝えすることもあります。

片岡:毎日鏡を見る、ですか…?

藤村:はい。毎日、定期観測する事って実は大事なんですよ。そうするとさっき「毎日意識的に鏡を見てください」と言ったんですけれども、「アレ?!昨日よりちょっと疲れてるな」とか、「ここに何か出来ちゃった」とか、「食べ過ぎたかな」とか、「飲み過ぎたかな」とか、そういう自分の生活を肌の微妙な変化で知る事が出来るようになるんですよ。「疲れてるつもりはないけど、少し免疫が落ちてるからニキビが出来たのか」とか、「そう言えば最近野菜摂ってないぞ」とか、そういう自分の細かい変化に気付くと、些細なことでも問題意識が出てくると思います。

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片岡:ちなみに年齢層や職業は?

藤村:今は30代後半から40代ぐらいが一番多いですね。会社を経営してる方やトップセールスの方など、人前に出る機会が多い人はさすが、周りからの「第一印象」や「見られ方」にもケアに非常に意識が高い方ばかりです。人を敢えて不快にさせない。大人の男性の場合は「嫌われないための美容」ですね。自分のハンデを作らない為の物です。

藤村:女性の社会進出も珍しいことではないですし、「男らしさ・女らしさ」の定義も変わって来ています。自分の部下にも上司にも同僚にも女性が居る。「上手くやって行く」とか「モテ」じゃなくて、「人として上手く付き合っていく」のには、“小汚い”と損なのですよ。

段々…やっぱり30代後半ぐらいからは、加齢に勝てなくなって行きますよね。男性の場合は特に、若い頃に何もしてなくても、下手な女の人より肌がキレイだったりするもんなんですが。いわゆる30代後半の「肌の曲がり角」を迎えると、ストーンと落っこっちゃうんですよね…。男の人ってイキナリ老けません?

片岡:わかります。わかります。

藤村:久しぶりにお会いした時に「あれ?!暫くお会いしてないうちに何か小汚くなってしまわれたのでは…?」みたいな印象の方って、失礼ですけど、時々いらっしゃいませんか?何が悪いとかじゃなくてイキナリどんっと老けられた感じがするんですよ。こう、指摘しづらいような……。

「小汚い」っていうと語弊があるかもしれないですが、そう表現せざるを得ない衝撃はありますよね。なので、歳をとるのはしょうがないことですが、「無駄に老けるのはやめましょう」とお伝えしたいんですね。そうなってから慌てるより、段取りを始めておけば、老化カーブはすごく緩やかになるはずなんです。


photo / 井澤一憲

独立するなら“勝てる領域”を選ぶ。

片岡:たしかにそうですね。ところで話は変わりますが、もともと藤村さんがこの世界に入られたきっかけというのは?

藤村:元々は雑誌の仕事をしていました。でも、ある程度齢をとると管理の方に回されて行くんです。僕は現場に出て人に会ったりだとか、面白いものを見たりとかしたいなあと思って。

片岡:へぇ。ふつうはライターとかに行きますよね。

藤村:もちろん原稿を書くのが好きなので、原稿は書こうと思っていました。でも、「何でも出来ます」はいいけど、「何でもやります」のライターにはなりたくなかったんです。何かスペシャリティを持とうと。その時に色々進路を探しはじめて……もう17~8年前の話になりますが、「植物」「花やガーデニング」などに興味があって「匂いで人の健康がどうこう変わるなんて有り得ない」という当時に、「植物の図鑑」「花やガーデニングの本」を作ったんです。アロマテラピーやハーブというのじゃ今は普通に生活に取り入れられていますが、当時はまだ海の物とも山の物とも知られていない頃でした。その時に学んだ植物の効用などがある程度頭に入っていまして…あれって意外と論理的で面白いんですよ。

片岡:へぇ~。そこで、アロマテラピーやハーブを極めたわけではなく…?

藤村:はい。32歳で会社員を辞めて、35歳までには芽を出さないとイヤだから、独立するなら“勝てる領域”を選びたかったんですね。なので…興味がある分野を選ぶとしたら、ガーデニングでもよかったし、他に大好きなコト…ファッションでも良かったんですよ。靴もやりたかったし。でも、先人は沢山いる。業界で張り合って果たして芽が出るのだろうか?と考えてしまって。やっぱり「人と同じことをどうしてもやりたくない」という思いもあり、その時「勝てるも何も僕が一番になればいいんだ!」と、割と打算的に戦略的に思い切ってしまった感じです。やるとなったら意外とワーッと夢中になって、今に至ります。

お肌のケア、実践!

藤村:先ほどうっかりカウンセリングし始めてしまいましたが、せっかくなので、お顔洗ってみられますか?

片岡:はい、せっかくなので受けてみたいと思います(笑)先ほどのシェービングオイルやクリームもそうなんですが、何かを塗るという経験が無いのでちょっと緊張します。

藤村:顔の洗い方って実はいろいろあるんですけれど。これは泡が出てくるタイプですが…普段使う石鹸もそれくらい泡立てた方が良いです。

片岡:普段は板石鹸を使っていますが、全然泡立ててないですね。

藤村:では、泡をよくすすいだら次のケアは化粧水です。手の平全体に化粧水を伸ばして両手で顔を包んでください。乾燥しやすい頬からアゴのあたりを重点的に手でしばらく押さえます。軽く押さえて手の熱を感じて「入れ、入れ」と色んな所を押さえて行くんです。これで染み込みます。面倒臭いって人にはスプレータイプの化粧水もありますから、それでやっちゃってもいいんですよ。そして、次に皮脂の代わりになるものを少し塗っておくと、染み込んだ水分の乾燥が防げて安心です。

片岡:それは乳液みたいなものですか。

藤村:そうですね。乳液でもいいですし、今の季節だとジェルの物がいいかもしれないですね。手の平じゃなくって指の腹を使って、細かいところを塗っていくんです。あと、みんな顔はやるんですけれども、首はすっかり忘れるんですよ。首って非常に年齢が出やすい所ですし、特に男の人は顎下の髭を剃りますからね。だからそこもちゃんとケアをしておいた方が良いです。どうですか?ベタベタしますか?

片岡:いえ、潤いって感じでベタベタはしないです。

藤村:たとえば…一番高級なもので、化粧水も乳液も1本で済んじゃうタイプだと、2万5千円ぐらい。大体30日で2万ですね(笑)ただ、毎日使っていただくものですから、手に取りやすい価格帯のものを使って頂いて構わないと思います。…でもこれ、いい香りでしょ?

片岡:ああ、やっぱり全然匂いが違いますね。

藤村:アンチエイジングに特化した製品などもあります。1日2回使ってたら、まあ1回450円くらいですね。塗り方も最初はぎこちないですけれど、段々慣れると上手くなって行きますから。歯磨きとか自転車とかと一緒です。


photo / 井澤一憲

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片岡:ちなみにこれらの製品はどこで売っているんですか?専門店ですか?

藤村:主に百貨店ですね。例えば阪急とか伊勢丹とかのメンズコーナーなどにコーナーが設けられていたりします。おそらく、そこに行ける人はすでに意識が高い人なんだと思うんですよ…。さっき20万のスーツって言いましたけど、じゃあそれって一体何回着られるの?って考えると、2万5千円のクリームを買ってきちんとケアしたら、5年分の老化を1年分に留められるかもしれない。

片岡:思いのほか、投資効率が高いですね。

藤村:ええ。肌は投資です。意識が高い人は、高価な服を買い替えるより毎日の肌ケアをした方が自分の為にいい、と気付いてくれるんです。

片岡:うん、やっぱりちょっとやってみるだけで気分が違いますね。シャキっとするというか、凛々しくなった感が。

藤村:スキンケアのことを昔、基礎化粧品と言っていたんですけど、その呼び方も男性を遠ざけた一因ではあるんです。俺たち化粧したいワケじゃないんだよね…って。でも、肌は正直ですから、特に何もやってなかった男性はやればやっただけすぐ効果が出るんです。「全然違う!」って思えるはずです。

片岡:まずはやってみろ、ということで(笑)

藤村:ええ(笑)最初からあれもやってこれもやって、だと、今までやってなかった人にとっては凄い負担になるんですよね。せめてこれだけはやってみようと思うもの1つだけでも取り入れてみて欲しいですね。

片岡:生活コースに入れちゃえばいいわけですね。

藤村:はい。ぜひやってみてください。

片岡:意外と感化されるので、やってみます(笑)ありがとうございました。

藤村:ありがとうございました。


コンサルティング前に記入した簡単なアンケートシート。

■インタビューを終えて

「美容」と言えば女性がするものという、概念を覆されたのはインタビューを開始してすぐのことでした。「嫌われないための美容」という男性の「美容」についてのキーワードを聞いた時です。「自分のハンデを作らない為」に行う。確かに、この感覚は、日頃、全く「美容」には興味のない私にとっても分かりやすいニュアンスでした。

一方で、これまであまり「主流」とは言えなかった男性美容の世界で新たな「需要」を創りだしていこうとする藤村さんのチャレンジ精神には頭が下がります。確かに、現代の男性には「スイーツ好き」を公言したりする既成の「男性像」に必ずしも当てはまらない「男子」も多くいます。彼らは自分で納得さえすれば「そこ」(男性的なるものや女性的なるものといった区別)にこだわらず、また、自分がこだわるものには惜しみなく金銭を投じます。そんな新しい「男子」たちのメンタリティーに私は「草食化」というよりも「多様化」という言葉が当てはまるような気がしました。

特に「モノ」へのこだわりから、「モノ」を媒介にした他社との「関係性」を重視しているような気がします。生まれてはじめてカメラの前で写真を撮られながら洗顔しながら、私はそんなことを考えていたのであります。