もし就活学生がマーケティングを勉強したら 55 差別化戦略、先発の優勢性は
本当に効くでしょうか?

(2013.07.01)

ライバルと差別化するための方策で先発の優位性ということがよく言われています。新製品や新サービスをどこよりも早く立ち上げることが出来れば後発に比べて有利なポジションを占めることが可能になります。ライバルに先んじることで参入障壁を築くことが可能になる訳です。

環: ウサギとカメの話もあるわよ。
樹: そうそう。メーカーの中には他社が先行して開発した製品でもそれをうまく真似して圧倒的な販売力を活かしてナンバーワンシェアを獲得してしまう企業もあるっていうじゃん。

もちろん競争は総合力での勝負ですから先んずればすべてうまくいくという訳ではありません。また昨今は特許などの知的財産権に関する意識も高まってきています。

それでは就活にも先発の優位性は有効でしょうか?企業の採用活動は優秀な人材をゲットしたいと思えば思うほど早まる傾向があります。しかし、あまり前倒しされてしまうと大学教育が軽視されてしまうことになるので時期については大学の声や世論などにも気を配りながら毎年企業は足並みを揃えようとしています。また先んじていい学生を見つけることが出来たとしても、入社するまでには大分時間がある訳で、その間に心変わりしてしまったり、別の会社に奪われてしまったりすることもありえます。企業にとっては先んじることは必ずしもいいことばかりとは言えないでしょう。

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一方学生にとっては就活に早く取りかかることはメリットがあるでしょうか?

環: うちの大学、最近1年生にも就活セミナーやってるよね。
樹: それだけ大学も必死っていうことでしょう。

就活には面接のやり方とか筆記試験対策、スーツの着こなし方、化粧の仕方、といったテクニカルな部分と、そもそも自分はどのような性格で、どんな能力を持っているのか、そしてどんな適性があって、将来何をやりたいのか、どんな人生を送りたいという夢を持っているのか、を見極めるといった本質的な部分とがあります。大学で勉強することは自分の能力を開発していく手段のひとつの訳ですが、こうした本質的な部分の対策は早ければ早いほどいいと思います。

子供の頃に弱者を救済する弁護士の仕事に感動し、その頃からその職業に憧れ、法律書を読むなどの勉強をして準備してきた人は、何となく法学部に入学してなんとなく弁護士になろうかと考える人よりも司法試験に合格する可能性も、その後の弁護士人生の充実度も変わってくることは容易に想像がつくでしょう。しかし、前者のテクニカルな部分にばかりに早くから時間を掛けることが生産的だとは思えません。こうしたトレーニングはもちろんやらないよりはやった方がいいのですが、そんなにだらだらやっていても効果は実感できません。短期間に集中的にやった方が効果的です。


樹: お先に失礼~
環: あっ、ずる~い!
イラスト / たかはし たまき