土屋孝元のお洒落奇譚。翡翠、山頭火、有一、
水を感じる趣向にての茶会でした。

(2012.09.14)

井上有一はサイ・トゥオンブリーに
似てる!?

師匠の茶室、『阿曽美術』にて納涼茶会参加しました。

参加者全員の揃うのを待つ、『阿曽美術』画廊内には「滝に翡翠(かわせみ)」の絵、江戸中期の四条派の松村景文作と前に伺ったことがあります。滝の水が涼やかで余白を活かした構成で翡翠の色味や詳細な描写にも清涼感があります。

もう一面には、井上有一作のカエルの詩を書にした作品です。罫線のような太い線や書き直しの言葉や、書き足しまで作品の一部になっており、個人的にはサイ・トゥオンブリーのギリシャ哲学を鉛筆や、赤い絵の具やチョークで白いキャンバスに書いた作品にも通じるかと思います。その奥には麻生三郎の鉛筆画、東京湾を描いたもの。

そうこうしているうちに、皆さん揃い師匠より挨拶がありました。

「お暑いところ皆様 ありがとうございました。」

おしのぎの白湯をいただき、食事の席へ正客を決めて席次に従い座ります。

本日は師匠のお茶の弟子でもある、『東屋』さんの会席弁当です。この『東屋』さんは『銀座古十』さんより独立したばかり、師匠のプロデュース、デザインにより店内の設計、テーブルや椅子にいたるまで行き届いいています。まるで師匠の茶室のように阿波和紙を貼ってあります。普段はお昼一組、夜一組のお店です。

季節の先取りで美しい秋を感じる料理の数々。

さて、お料理に目を移しましょう。季節の先取りで美しい秋を感じるようなお料理の数々で、何処からいただこうかと迷うほどです。まずは一献と師匠よりお酒を瓢箪徳利からいただきます。

裏千家では盃が重ねてある場合 一番下から取り、両手を添えていただきます。次の人もまた、一番下から取り順番に続きます。表千家の場合は上から順番に取るようですね。

先付の芋がらのぬた和え、牛肉の時雨煮、海老芋のように見える湯葉巻の白身魚の揚げ物、おからの和え物、出汁巻きの卵焼き、冬瓜や人参、芋の煮物、鯖寿司。中でも松茸を鯛?白身魚で巻き焼いたものは、その香りといい食感といい申し分のないお料理でした。もちろん僕にとっても今年の初物の松茸です。

盃。裏千家では重ねた盃を一番下からじゅんに取ります。

最後に水羊羹をいただきましたが、この水羊羹も甘さにキレがあり嫌味もなく、スッキリとした後味で最後の口直しには最適でした。

以前、東屋さんから聞いたのですが和三盆に加え氷砂糖を隠し味にも使うとか、詳しくは教えていただけませんでしたが、きちんと聞いておけば良かったなと後悔しています。

水羊羹。東屋さんの水羊羹は甘さに切れがあり、大変美味しい。
山頭火の最晩年の句
「濁れる水の奈かれつつ澄む」

さあ、正客より茶室へ躙りながら席入りです。

まずは床の間の軸を、茶扇子を自分の前におき結界を作り拝見、山頭火の句で晩年の自作作品で、

「濁れる水の奈かれつつ澄む」

文字にもくせがあり読みにくいのですが、こう書いてあると確かに読めます。

山頭火の最晩年の句とのことです。山頭火のいろいろあった人生を振り返ったものでしょう。水指は加守田章二作の大皿を見たてたものか? 蓋が大きく盆のようなサイズです、直径45cmはあるかな。

師匠が茶室へ入り濃茶を点てます、正客、次客、三客、末客の順に濃茶をいただきます。今日は末客を僕が担当します。まだ濃茶がついた飲み終わりの茶碗を正客へ躙りながら戻し拝見。見たところ、師匠のコレクションより李朝の玉子手と言われる茶碗で形といい、高台といい、飲み口の優しさといい、いい茶碗です。玉子手と言われるくらいですから、独特の色味で優しい質感です。

続き、薄の点前に入り、正客より氷菓子をいただき、薄茶茶碗にて薄茶をいただきます。この薄茶茶碗は李朝三島手です。少し緑がかった色が冷水仕立ての薄茶と良く合います。真夏には水指に氷を浮かべて水を冷やして、その水で冷水仕立てにて薄茶をいただくこともありますが夏ならではの趣向でしょうか。

棗、お茶杓、茶入、仕覆の拝見です、棗は利久型大棗で江戸中期、琳派の作品で流水文に螺鈿で葵文様、茶杓は池田巌さんのシャープな漆茶杓、茶入は古瀬戸肩衝茶入(こせとかたつきちゃいれ)銘はなんでしょうか、聞いたのに忘れてしまいました。仕覆は何の文様か濃い青の緞子でした。

拝見を終わると正客より順番に茶室を後にします。

この後、後日に師((亭主)へお礼の手紙を送って茶事の終了となります。