片岡英彦のNGOな人々 (Non-Gaman Optimists)女性の経営者や個人事業主をつなぐ
コラボラボ社長、横田響子さん。

(2012.05.25)

「NGOな人々」”Non-GAMAN-Optimistとは「ガマン」していられず、チャレンジをし続け、決して諦めない 「楽観人」。NGOな人々へのインタビュー第18回は、女性の経営者や個人事業主をつなぐハブとして「女性社長.net/colabocafe」を提供する、株式会社コラボラボ社長の横田響子さんです。

■横田響子プロフィール

(よこた・きょうこ)1976年生。お茶の水女子大学卒業後、’99年株式会社リクルート入社。6年間人材部門を中心に営業・新規事業立上げ・事業企画を経験後退社。2006年株式会社コラボラボ設立。女性社長を紹介する「女性社長.net」、女性社長300名が集結するイベント「J300」、女性社長の逸品を販売する「Wooooomen’s!(ウィーミンズ)」を企画運営。大手企業を中心とした新規事業の立ち上げ、販促支援など多数のプロジェクトを運営。女性キャリアデザイン協会理事、内閣府・男女共同参画推進連携会議議員を務める。インタビュアーの片岡とは知人の紹介で数年前から親交がある。片岡にとっては、数少ない個人的な相談ごとができる年下の女性経営者だが、横田の方から片岡に相談をしたことは(たぶん)ない。あるいは片岡が全く聞いていなかったか、聞いたのに忘れたかである。血液型はお互いにB型。

女性の経営者や個人事業主をつなぐ コラボラボ社長、『女性社長が日本を救う!』の著者でもある横田響子さん。Photo by 井澤一憲
『女性社長が日本を救う!』の著者は
本当に日本を救いたい!?

片岡:最初の質問です。よく色々なインタビューやテレビ出演されていますが、「いつも必ず言うこと」って、何か決めています?きょうは、その話以外を聞きたいから。(笑)

横田:まあその時その時のテーマによって、というのはありますけど。きょうは残念ながら何も決めてないです。(笑)

片岡:「事前に質問項目を出して下さい」って、最後まで言わなかったのは横田さんが初めてですよ。

横田:本当ですか? いや、確かに何を聞かれるのか怖いから、「事前に教えて」って言いたくなりますよね。一つだけ決めているのは、ここでエラそうぶったりとか、自分を大きく見せようとかしたら後から痛い目に合うから、その時感じた事を率直に言って、言っちゃいけない事は言わないようにするっていうことです。(笑)

片岡:書籍を読ませて頂きました。『女性社長が日本を救う!』というタイトルだけど、やっぱり本気で日本を救いたいの?

横田:救いたいですよねー!

片岡:今の日本の課題はなんですか?

横田:規律正しくなり過ぎているっていうか、ルールによる「縛り」が厳しいというか。何か新しいことをやろうと思っても、手続きを踏まなきゃいけない事が多すぎます。そういう意味でいうと、ルールの外にいる人が混ざることで、ルールを壊しながら何か新しいことが出来るかもしれない。

私もリクルートを辞めた後に2週間ぐらい京都に座禅を組みに行ったんです。日々の「稼ぐ」っていう活動の中で身に付けちゃったものを一度取っ払って(自分は)「本当に何をやりたいのか」って。折角「ルールなき世界」に出るのだから。大半の本当に優秀な人たちも、力があるはずなのに「思い込み」とかそういうつまらないものに縮こまっちゃっている。

オーストラリア育ち。
国境を超え、世界進出も。

片岡:例えば、大阪市の橋下さんみたいな人って、何でもバッバっとやること速いじゃないですか? ああいうドラスティックなのが自分らしいですか? それとも時代の流れにあわせてジワリジワリ派?

横田:私、せっかちですから、そこはガンガン壊したいですよね。ただ、仕組み上の問題もあってどうにもならないこともあるから、そういう意味では政治家さんには本当にもっと頑張って欲しいなあと思いますけど。

片岡:前から思っていたんだけど、横田さん、政治家になればいいのに、絶対、当選しそうだし、僕だって投票するよ。

横田:ハハハ。「仕組みを変えて欲しい」とはキャンキャン言いたいけれど、多分、そういうの(政治)は他に凄く上手い人がいるし。

片岡:そういえば、オーストラリア育ちでしたよね?

横田:一応は。でも生まれて4歳までなんです。原点ではあるんですけれど。

片岡:向こうの人って、当たり前のように「個性」があって「違い」があるじゃないですか。そういう感性って4歳でも身に付く?

横田:身に付きますねー。違っていて当たり前。例えば「人種」ですよね。もう幼稚園に行っているだけでも「金髪の子からトイレ行ってね」「青い目の子から行ってね」「黒い髪の子から行こうね」とか。別に差別とかでは無く、特徴として分けているだけで。そういうので見た目の違いを意識させられます。

あとは登園して着いた瞬間に、「今日は何のアトラクションで遊ぶのか」を自分で決めるんです。チョイスするっていう事を小さい頃から当然のこととして学ぶので、帰国後、逆にそうじゃない環境(日本)で育ったので、余計「我慢ならぬ女」になってしまったのかも。(笑)

片岡:世界進出はしないの? あまり海外にはこだわらないの?

横田:世界進出、したいですね。事業としてのテーマの1つに「ボーダレス」というのがあります。国を超えてとか、国の中でということは、あえてあまり考えてなくて「そういう機会があったら是非!」って思っています。

好き勝手なコトを言った時に怒られる割合は
女性のほうが低い?

片岡:その時も「女性社長」という現在のビジネスのコンセプトは、事業ドメインとして残るのですか?

横田:うちの本当のキーコンセプトは「コラボレーション」したいっていうのがあって、それこそ多様な人材が絡んで何か新しい物を生み出して行く仕掛け人になりたいと思っています。なので「女性社長」というのがマイノリティーでなくなった瞬間に男性も対象になるのでしょうね。普通にプロジェクトを組む中に女性も普通に入っていたらそれでいい。

片岡:社会起業家っていう意識はある?

横田:周りからは言われることはありますね。でも、やっぱり利益をあげてなんぼというのを、新卒の時から頭で植えつけられているので、そこをバランス良くやりたいと思います。

片岡:課題解決と利益確保が「両輪」だとすると、どっちのウエイトが重い?

横田:「課題解決」の方が強いと思います。というのは、「儲かるからこれをやろう」って始めたことってないのです。これをやりたいからどうやって回る仕組みにしよう? という風に後で考えているので、あくまでも課題解決の路線だと思いますね。

片岡:女性に生まれてきて良かったと思いますか?

横田:すごく良かったと思いますよ。仕事面で言うと、最初の会社(リクルート)で男女関係なく経験を積ませてもらえました。もちろん損することもあったが、得することもありました。得するのは、年配の方、特に決定権を持っている方がお父さん世代だったりしたので、多少、私がムチャなことを言っても「ああ、この娘、なんか言うとるなー」くらいの感じで逆に食い込んでいけました。好き勝手なコトを言った時に怒られる割合は女性のほうが低いんじゃないですかね。でもやっぱり少数だからこそ、ちょっとくらいルールを破っても許されるのかもしれません。

プロと仕事がしたい。

片岡:学生とかも含めて、同い歳くらいの男性(男子生徒)を見ると「弱っちいな」とか感じます?

横田:いや、どっちかというと私の周りには頑張ってる人が多いですから。私は女友達が多いですけど、男友達にも面白い子が多いですよ。「弱っちい」と言うよりも、やっぱり男性は背負っているものがあって大変だなと思う事の方が多いです。優秀な男性でも組織にいると、その能力を発揮しきれるようになるまでに、色々な困難があるから。ストレートにその優秀さを活用しきれていない人とかを、「小っちゃくまとまってんな!」とか、「その優秀な所を、もっとたまにはムチャ言って通しちゃえばいいのにな」とか、そういうヤキモキすることはよくありますね。女性の方がそういう意味で言うと「こうあった方がいい!」という事に一直線のことが多い。男性はもうちょっと長い目で腹黒く(笑)ちゃんと見ていますよね。

片岡:男性の経営者の方って「企業を大きくしたい」と思って、人をどんどん雇ったりするけど、女性の社長さんって「継続」を重視して家庭と両立させていくことを重視する方が多いような気がします。横田さんはビジネスをどんどん大きくしたいと思っていますか?

横田:会社として大きくなりたいかっていうよりも、私はプロと仕事がしたいんです。その時その時そのプロジェクトの「プロ」と組みながらやりたい。だからうちの会社は本当に10人ぐらいの、プロデュースが出来たりだとか、ディレクションが出来る人がいて、1人が年間に10個ぐらいのプロジェクトを回していて、年間100くらいやれたらそれが理想だと思っています。そういう意味でいうと色々なことをやりたい。その色々なことをやるにしても自分の得意なことだけではいけないので、会社の中だけで完結っていうよりも、有機的で小さな会社の方が動きやすいだろうと思います。会社が大きくなると、みんなが効率性を重視するようになります。こじんまりしている方が、面白いことがたくさんできますよね。

***

片岡:新卒でリクルートに入ったのは何で?

横田:女の人も楽しそうに働いていたから。たまたま本当に優秀な人が内定しているのを見て、興味本位でとりあえず受けに行った感じですね。

片岡:入って良かった?

横田:良かったですね。他の会社だったら、私は礼儀がなんだとか、もっとボロボロに文句言われていたと思うんですよ。(笑)6年しかいなかったですけど、やりたい事はやらせてくれたし、金銭感覚も付けてくれました。トッピスピードで走るという、あのスピード感や密度が、今の基準値になっているのはラッキーなことです。

片岡:別に全員が起業するわけではないだろうけど、リクルートにいると起業することに戸惑いとかは感じないの?

横田:いや、私は起業なんかしたいと思ったことはないんですよ。やりたい仕事がやれれば、ずっと会社に残ればいいと思ってリクルートに入ったんです。私は一生自分で稼いで食って行きたいと思っていました。「女が一生食って行ける組織」にいくことが、私が就職活動中に決めていたことでした。でも入社1か月で、それが幻想だったと教えてもらいました。(笑)だって40歳以上の人が男女かかわらずあまりいないんです。30歳ぐらいでどこに行っても通用する自分でないといけないなと思い、一生懸命仕事しました。だから別に「起業しなきゃ」いうのではなくて、30歳ぐらいで、起業も出来るし、転職も出来るという人になっていないといけないと思いました。

12歳で母と死別。
自分の力で生きていく。

片岡:「女性社長」というコンセプトが先にあって独立したわけではなく、自分が結果的に「社長」となって頑張って行かなきゃいけないということになったってことですね。

横田:私は12歳の時に母を亡くし「自分の力で生きていく」って決めました。その後、父も亡くなったので、「自分の力で生きていく」ということは当然のことだと思ってきました。

片岡:どうして自分と同じような女性社長を「コラボ」によって「支援しよう」と思ったの? 横田さんの「利他心」の原点を一度聞きたかった。普通、自分がサポートして欲しいじゃないですか。

横田:私は面白いことがやりたい。女の人たちにも頑張って欲しい。でも面白いことを自分の力だけでやるのって難しいじゃないですか。だから、周りに素敵な人が大勢いて、その人達と一緒に協力してやっていきたい。その中に女性にも大勢混ざっていてほしい。そういう思いの「グルグル」(回転)なんですよ。(笑)

私には、本当に中高から優秀な女友達が多くて、でも一方で、私の親世代を見た時に働いてない女親が多いんです。もちろん働いてなくても全然いいのですが、これだけの優秀な人たちが、社会に出たくても出られないのだとしたら、何てもったいないんだろうって、純粋に思っていました。

だから女性が社会に出にくいのならば、自分が出やすい環境を作りたいって思いました。やる気が無い人をサポートするのはとても大変だから、やる気のある人をサポートしたい。「社長」ってやる気がない人なんて1人もいない(笑)
「女性を応援したい」「やる気のある人を応援したい」・・・そういう人たちが一番多いのが、結局「女性社長」だった。(笑)

WOMEN AND THE ECONOMY SUMMITにて。
「キャラ押し」はあるが、
カリスマではない!?

片岡:初めて300人の女性の社長を集めてイベントを開催した時は、全く実績がないのに、どうやって参加してもらったんですか?

横田:これまで会って来ている方々との蓄積があり、中でも10人のブレーンになって下さる女性社長さんたちからお知恵をもらいながら、1人の女性社長さんには必ず3人のお友達の社長はいるので、その先のネットワークへと「お願いしてもらいやすい様な仕掛け」を一生懸命考えました。あとは地道に声をかける。半分は「熱意」で、残りの半分は「それぐらいだったらやってあげてもイイよ!」というそのギリギリなところ。

片岡:何が女性社長さんたちをその気にさせるの? 善意?

横田:「面白そうな企画やるね!」みたいな所まではカタチを作って、「面白そうだし滅多に無い企画だから一緒にやったげるわよ! あんたアホよねー」って。「あんたアホね」って言われながら、「しょうがないわね」っていう感じで協力してもらった感じですかね。

片岡:それは「作戦」?

横田:イヤ。うーん…ちょっとは「作戦」なのかもしれないですけれど…でも、バカなことをやろうとしたのは事実だからしょうがないですよね。(笑)

片岡:おねだり上手で、お調子者だけど、相双たるメンバーが「この人の為にだったらひと肌脱ごう!」みたいな感じで、大勢の人の協力を得る人ってよくいるじゃないですか。それがその人の「天然」なのか、実はアタマが「キレる」のか、僕はいつも気になるんです。僕自身が相手の「天然」と「作戦」の境目がわからない時がある。決して悪い意味じゃなくて、横田さんは一体どっちなの?

横田:正直、受けてくださっている方と、私の気持ちとはまた別かもしれないですけれど、多分キャラクターで許してもらっている部分があると思います。確かに「提案をする」時には、何らかのメリット(それが本当にギブ&テイクまで持って行けているかどうかは分かりませんけれども)、例えばHP上にその人たちのお名前や会社名などを明らかに出させてもらって、ご紹介させて頂くとか。単純に「お願いします」というだけは決してしてないですね。

私は「キャラ押し」ではあると思うし、「しょうがねえなぁ」と言ってもらうけれども、別にカリスマ性があるわけではないから、「私が動くからこそ人が動く」とかそういうのがないのです。さっきの「政治家」の話なんかは、そういうカリスマ性のある人にやってもらった方が絶対にいいですよね。

***

片岡:いわゆる「マーケッター」の思考なのか?「お笑い芸人」的な“よいしょ”や“キャラ”で勝負なのか?「政治家」的な”カリスマ性”や”関係性”の人なのか、革命家的な“勝負どころのよみ”(ジアタマ)のいい人なのか、だいたい僕は、自分がすごいなとか、好きだなと思う人がいると、この4つの中のどのタイプなのか、初めて会った時に考えるんだけど、横田さんてどのタイプなのか未だに分からないのです。

横田:どこですかね?

片岡:意外に「マーケッター」だったら面白いな(笑)「実は、全部、計算していますよ、ふふ。」的な。そうだと面白い。でもそういう「フリ」をしても、ちょっと話せばバレちゃいますしね。誰にでも多かれ少なかれ全部の側面があるんだと思います。

片岡:最近の活動は「女性300人のイベント」があって「ウィーミンズ」があって、「女性社長.net」があって、もう一つは何でしたっけ?

横田:「女性社長たちで被災地でビジネスを考える合宿」ていうのをやっています。ちょっと復興支援もフェイズが変わってきて、お互いがちゃんと利益に繋がるものじゃないと、やっぱり継続して行かないからというコトで、今はそれを模索しています。まあ、僅々ではありますけど。
4月実施が好評で7月も実施します。

片岡:「女性的な感覚」って言い方は、それ自体が偏見なのかもしれないけれど、「社会的意義」とか「社会的正義」というか、女性の方が、「利益」よりも「社会的」…社会的とは限らないけれど、子供の為とか旦那の為っていうのが、良くも悪くも伝統的に強いじゃないですか。横田さん自身の根っこの部分にもやっぱりあります?

横田:それはあると思います。「情」とか、「目に見えている人を幸せにしたい」っていう思いは常にあります。7月に九州大学 ユヌス&椎木ソーシャル・ビジネス研究センター(SBRC)がムハマド・ユヌス博士を日本へ招聘するのに合わせ、ユヌス博士をお招きするイベントの企画をすすめています。

片岡:「マイクロクレジットグラミン銀行創設者 」でノーベル平和賞を受賞した方ですよね。

横田:ユヌス博士は社会課題をビジネスで解決する「ソーシャル・ビジネス」を提唱されている方で、それは投資家への事業利益の還元はない(代わりとして更なるソーシャル・ビジネス事業拡大へ再投資する)という考え方です。祖国バングラデシュで貧困層への無担保小額融資(マイクロクレジット)を行うグラミン銀行を創設し、された方で、この活動をとおして世界の貧困削減と貧困地域における女性の自立実現へ寄与した功績を受け、グラミン銀行とともに2006年ノーベル平和賞を受賞されました。

片岡:女性中心に融資をしたの?

横田:グラミン銀行のが行う融資は生活支援がを目的とするものではなく起業支援として、経済的自立を実現するために行われます。の起業支援として提供されます。当初、男性、女性双方を対象に行われていましたが、現在は98%が女性です。

***

片岡:どうしてほとんどが女性になったの?

横田:これは男性に比べ女性の方が家族や子どものためにという意識が強く、このためにそのような結果になりました。このような事実からもユヌス博士は女性が社会において果たす役割の重要性を認識されて、世界各地で以降バングラデシュ国内はもとより海外でも女性のリーダーシップ育成に力を入れられています。いまは各国を訪問される際には必ず女性リーダーを対象としたに「ウーマンズ・リーダーズ・ミーティング」というイベントを開催されて、おり、今回の来日に合わせて、わたしたちも九州大学SBRCとともに東京でのイベントを企画することになりました。

片岡:消費ではなくて本当は「投資」なのかもしれない。ある意味これからの新しい「ビジネス感覚」なのかもしれないですね。

横田:ユヌスさんも、女性陣がビジネスを作って行く上で、やっぱりソーシャルな課題解決から入って行くケースが多いので、そこを支援したいとおっしゃっていました。

挫折は忘れてしまう。

片岡:今まで一番の「挫折」は何ですか?

横田:私、意外と色々な経験をしていると思うんです。挫折……けっこう意外と苦しい目には一杯あっている気はするんです。

片岡:忘れちゃうの?

横田:たまには思い出しますけど、やっぱり乗り切るのに必死だったから…というか乗り切る事が日常だから。挫折しても勝手に次のことに「シフト」して、挫折とは認めてないかもしれない。「あ、これは難しかったんだな」「じゃあ次はこれをクリアしなきゃ」みたいに。

正直、人によっては「壮絶な人生だね」っていう人もいるし、「苦労してない」とか「トントン拍子だね」と言われることもあるんです。多分、普通の人の30代、特に20代なんかの時には、事実だけを並べたら「人より大変な人生だね」って言われるとは思うんですけどね。(笑)

いまだに料理がキライなのは、中・高と自分が料理を作らないといけなかったからかもしれない。あれは何だろうなー苦労じゃなかったのかな(笑)

片岡:自分で作ってたんだ。

横田:作ってましたね。

片岡:自分の分?家族の分?

横田:家族の分です。

片岡:お母さんが亡くなられて、それから家族の分のご飯を?

横田:平日だけですけど。週末は父がやってくれたのですが、刺身か鍋しかできなくて。(笑)父親は、とても素敵な頑固オヤジで、本当に視野の狭い人でした。だけど、家族を最期まで大切にしたこととか、そういう点をものすごく尊敬してました。

片岡:父親として家族を大事にするとどうしても「視野」は狭くなるからね。自分が父親になって初めてわかりました。

横田:一番最初の挫折は、もしかしたら、母親を亡くした後の…。自分はその時まだ12歳の反抗期前だったんです。母親のことを「聖人」だと思っているんです。悲しみを処理することに慣れてるから、今でも私は1人泣きが上手ですよ。年に2回ぐらい両親の墓参りに行きますけど、お墓の前でそこに向かってる5mぐらい前から…。

ただ、大変な事があったら、そこから逆にいい事もありますから。「苦労は忘れるべし!」ですよ。苦労だと思うことの中からいい事を見つけないと、やってらんないじゃないですか。でも「挫折した事が無い」と言いきって反感買われたらチョット困るなあー(笑)

***

片岡:最後質問です。尊敬する人って誰ですか?

横田:東大の玄田先生という労働経済の先生。「希望学」というのを世界で初めて研究している方で “ニート”っていう言葉を日本で流行らせた方です。希望学の希望とは…A hope is a wish for something to come true by action with othersっていうのが希望の訳したんですけれど、「A hope is a wish for…」みたいな感じで、身体を使ってみんなの前で踊ってしまうような「ゆるい」方です。でも自分が大切にしている物を絶対にブラさない。そんなふうに生きたいです。今、私は「女性社長」が専門分野なのかもしれないですけど、私はけっこう力を入れ過ぎるんですよ、肩凝り症で。

片岡:ありがとうございました。

横田:えっ!?もう終わりですか?

片岡:そうですよ。大体いつも50分ですから。

横田:大したコト言ってないけど…。

片岡:いえいえ、大したコトになりますから。

■インタビューを終えて

私は昨年9月に務めていた企業を退職し、以来、半分NGO団体の職員として非営利活動を行いつつ、半分、個人事業主として営利活動を行っています。震災直後から考えた結果の決断でした。これは横田さんにも話したことないのですが、自分がその決心をした「最後の一押し」となったのが、彼女の存在でした。彼女に直接相談をしたわけではないのですが、インタビュー中にも使わせてもらった、彼女の「利他心」がキーワードです。

通常、企業の中にいると「滅私奉公」ではないですが、どうしても「組織」のことを優先します。個人で独立し「経営者」となると「経営(金)」のことを優先します。それは当然のことなのですが、「利他心のある経営者」(しかも、自分より若い女性で)が世の中にいるということで、日本も大きな転換点を迎えていると感じたからです。必ずしも「組織」「金」「ルール」に縛られるのではなく、彼女は「面白いこと」「つながり」「お互いさま」を優先する利他心を持った経営者だと思います。そして、ご自身の著書のタイトルにもあるように、一日も早く「日本を救う」女性社長になって頂きたいと本気で思っています。