音楽レーベル「SCHOLE」が作り出す
生活に寄り添う音楽、その集大成。

(2013.03.15)

今、「JOY」と掲げる想い。

レーベル発足から5年。SCHOLE(スコーレ)は、古代ギリシャ語で余暇という意味を表す言葉だそうだ。転じて余韻、余白といったイメージが広がる。僕が『雨と休日』というお店を開く前、大手CDショップで働いていた頃にその誕生を知り、そのリリース作品を見て、聴き、当時彼らが発行していたフリー・マガジンを読み、いち音楽ファンとして何か新しい動きが起こり始めたと感じたのがもう五年前のこととなると感慨深い。SCHOLEが届けてくれる音楽は、いつも生活に寄り添っている。毎回新譜が届く度に、どんな人にどんな場所で聴かれ、どんなプラスアルファをその人の生活に与えるのだろうと僕は勝手に思いを巡らせる。

5周年を記念して発売された、レーベル・コンピレーション・アルバムとしては3枚目となるこのCD、『Joy – schole compilation vol.3 -』。“JOY”をテーマに、レーベルゆかりのアーティストらが書き下ろした楽曲が収録されている。今の日本で、“JOY”と言い放つことは簡単なことではない。SCHOLEは東日本大震災に対しても、フリー・ダウンロードの楽曲を提供することで義援金を募る「SCHOLE HOPE PROJECT」を立ち上げ、レーベルとして真摯な行動をとっている。だからこそ今敢えて“JOY”と掲げたい、皆と喜びを分かち合いたい、そんな思いがうかがえるタイトルだ。

SCHOLEの作品に聴く、ライフ・デザインと音楽の在り方。

はじまることの喜び。出会うことの喜び。続いていくことの喜び。人の喜びを横から入って祝福するなんて無粋なことはしたくないけれど、その人の喜びがより一層輝かしいものになるのなら協力したい、させて欲しい。『Joy – schole compilation vol.3 -』を聴いて僕がイメージしたのはそんなささやかな気持ちだ。SCHOLEの作品を聴くと、いつもこのような「音楽の在り方」を考える。在り方を左右するものは作り手の考えでもあれば、今の人々の生活様式でもある。SCHOLEというレーベルが作る音楽は、今この時代を生きている日本、アジア、欧米…世界中の人々の生活様式の中に溶け込んでいく音楽なのだ。

音はきらきらと輝き、ゆったりと進み、静かな波のようにうねり、優しさが滲み出てくる。コンピレーションでありながら統一感があるのは、レーベルとしての確かな成熟を遂げている証拠だ。そこには何か特別なことがあるわけではない。普段の生活で、ちょっと幸せなことがあるときのようなささやかな変化だ。でもそのちょっとの幸せが重なっていくうちに、大きな幸せになっていくことを僕たちは知っている。暗闇があることだって知っている。毎日が冒険であればいい。ひとつずつ越えて行けばいい。音の連なりが音楽になるように、幸せの連なりがずうっと続いて行ったらいいのにとみんな願っているはずだ。


左・Akira Kosemura Photo by Ippei Okuda
右・[.que]

左・Quentin Sirjacq
右・haruka nakamura Photo by April Lee
レーベルが持つ力。

今は個人でいくらでも作品を作り、届けることができる時代だ。しかし種々雑多、玉石混淆は否めないうえに、星の数ほどある音楽から自分の好みを選ぶこと自体が至難の業だ。そこでレーベルの役割は今まで以上に重要なものになるべきだと僕は思っている。SCHOLEだからこそ作り上げられる音楽があり、SCHOLEしか作り上げることのできないフィーリングがある。そしてその結果SCHOLEに共感する人々が集まってくる。自然で美しい連鎖。熱意を持つ限りその輪は広がっていく。

SCHOLEはもともと音楽だけを活動の柱としているグループではない。SCHOLE INC.というひとつの会社として豊かな日常をデザインしていこうとするグループである。その魅力は何と言ってもトータルなアートワークにおける卓越したセンスであり、音楽、CDジャケット、ウェブサイト、書籍など多岐にわたり精彩を放っている。「ジャケットは飾って欲しいですよね」とレーベル・オーナーである小瀬村晶氏は言う。その言葉には、彼自身が考えるパッケージ商品としてのCDの価値、存在意義、そしてSCHOLEが生み出すデザインに対する自信と意気込みがうかがえる。『Joy – schole compilation vol.3 -』のジャケット。光溢れる雲上の景色は、サウンドとともにリスナーにどんな風景を思い起こさせるのだろう。飽きもせず、僕は何度もそんなことを考える。

Joy – schole compilation vol.3 –
2013年3 月 15 日発売
1,575 円(税込み)
レーベル:スコーレ

【Track List】
01. beginning / mamerico 
02. evergreen / akira kosemura + [.que] feat. lasah
03. irodori / yoshinori takezawa 
04. joy / akira kosemura 
05. welcome to my playground / hummingbert stereo
06. air / [.que] 
07. imagine fun / no.9 
08. short story / quentin sirjacq 
09. day light dream / sawako + daisuke miyatani
10. santiago / ghost and tape 
11. incense / teruyuki nobuchika 
12. light dance – guitar / paniyolo 
13. anne / haruka nakamura