ピエール・バルーと日本、
アミティエ 30周年イベント。
(2012.04.20)
5月12日 (土) 、13日(日)渋谷・サラヴァ東京にて、
ピエール・バルーがパーティを開きます。
ムーンライダーズ、高橋幸宏、清水靖晃、大貫妙子、坂本龍一、加藤和彦……
豪華メンバーを迎え、日本で制作したアルバム『ル・ポレン(Le Pollen)』から30年。
くしくもピエールが主宰する、世界初の完全インディペンデント音楽出版社
『サラヴァ(SARAVAH)』は日本での発売元をYAMAHAに移籍、
『SARAVAH』の名盤の再発、
新たなる解釈のコンピレーションをリリース。
それでは、『Le Pollen』にまつわるお話を少々……。
民族の交差点、フランスから
不思議の国、ニッポンへ。
1982年春、不思議の国ニッポンに降り立ったピエール・バルー。迎えに来たプロデューサー立川直樹がさっそく連れて行った蕎麦屋で、人々が大きな音をたててそばを啜るのに怯え、借りたスクーターに鍵をつけたままでも盗まれない安全さに感動し、民族の交差点、フランスから来た彼は、日本にはなんと外国人が少ないのか。と驚愕した。
バブル寸前の豊かな日本。音楽の世界では『イエロー・マジック・オーケストラ』(YMO)の誕生が新しい世界を示唆し、日本の音楽好きの若者たちはアメリカ音楽を一回り。次にひと癖ある大人の国、フランスの映画や音楽にアメリカにない味や、ひとひねりした面白さを発見して夢中になっていった。同時にそれはアメリカ離れだけではなく、西欧の良い生徒であることをとっくに卒業して独自の創造への機運とシンクロしていた。
赤坂のコロムビアレコード内の豪華なスタジオで彼を待っていたのは高橋幸宏。猛烈に忙しかったYMOの活動を1年間休止した、奇跡的に時間ができた時であった。
「ずっとあなたのファンでした、僕の最初のレコードはサラヴァと名付けたくらいなのですよ。」
7000キロ離れた東洋の島国で『SARAVAH』の音楽が愛されていたことを知り大感激したピエールだった。しかし高橋幸宏に渡されたレコードを聴いた彼は困惑して言った。
「あなたの音楽はあまりに新しく整然として、完成している。私のような者の出る幕はないように思われる。」
「いいえ、反対です。『ça va, ça vien. (サヴァ・サヴィアン)』にあるような、また、他のサラヴァの音楽にあるような混沌を僕たちは求めているのです。」
「混沌ならばあまるほどあるよ、それでいいなら僕らはわかりあえる。」とバルー。
ジョイントした加藤和彦は柔和な顔で、「僕も妻の(安井)かずみもあなたの音楽が大好きなんですよ。」と、バルーを和ませた。
●SARAVAH レーベル 再発&コンピレーション ラインナップ
ピエール・バルーと日本の才能たちとの
熱いコラボレート。
自らを音楽家とは言わず、散歩人というバルーにとって音楽はまず人間関係の構築から始まる。彼にとって言葉によらないで最も早く密接に関係を結べるのはスポーツである。さっそくフランス大使館のテニスコートを拝借して加藤和彦、安井和美、高橋幸宏とその兄でテニスの試合のシリーズが始まった。昼はテニスコートで汗をかき、夜はスタジオ、今から思えば信じられない贅沢な音楽作りが、未知の国で一人、バルーと日本の才能たちとの、信じられない豪華なメンバーでスリリングかつ熱いコラボレーションが始まった。
ムーンライダーズはすでにその頃打ち込みによる音作りをしていた。フュージョンの世界から映画音楽、ルイ・マルやヌーベルバーグのフランス映画の面白さにのめりこんで行った彼らはバルーの音楽やブリジットフォンテーヌ、ルイス・フューレイを発見して夢中になっている時であった。マライヤですでにジャズから離れ独自の道を開拓していた清水靖晃、がそれぞれバルーのために作曲し、編曲をした。坂本龍一やJAPANのデヴィッド・シルビアン、立花ハジメ、大貫妙子らが次々とアドベンチャーに参加した。
バルーはスクーターで東京の街を発見しながら寿司屋のカウンターで、屋台の焼き鳥やで、ジャズクラブで言葉を編んでいった。それはバルーにとってまさに陶酔の日々であった。当時まだ日本に観光で行くヨーロッパ人はまれで、日本に対してはエコノミックアニマル、という侮蔑的な意見が大勢を占めていた時代である、ゆえにバルーの発見したクールジャパンはあまりに新鮮で、まるで月の世界に迷い込んだ詩人のように眠ることを忘れて街を歩いた。歩きながらユキヒロやカズヒコの書いてくれた美しいメロディにフランス語の詩で命を吹き込むための言葉を探し続けた。
おかげで、一週間ばかり不眠が続いたある晩、六本木の真ん中で失神するというハプニングになってしまったほどだ。
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1982年「月の国の美しい楽師たち」との友情に囲まれてできたのが『 Le Pollen』という名盤。そして2年後の『Ciela(シエラ)』。今回、30周年を記念して仲間が駆けつけます。マジシャン ピエール・バルーと共に、大変近い距離で、まるでバルー家のホームパーティに招かれた感じで楽しめる本当にスペシャルなイベントです。
会場は渋谷、文化村のお隣に2011年にできたライブハウス『SARAVAH 東京』。そこに、ヨーロッパ最古のインディレーベル『SARAVAH 』のピエール・バルーが、燃やしてきた、才能の実験ファクトリーの口火をフランスから持ってきました。ジャンルにとらわれず「一期一会」を大切にする文化発信の地です。
5月12日(土)は、ピエールのライブです。おなじみの曲からフレンチボッサ、新曲をたくさん披露します、1984年の簡易保険ホールで感動のデュエットをした大貫妙子が再びゲストで出演。あれからますます成熟した2人のビッグアーチストの共演が見られます。ル・ポレン以来、近しい友人となった清水靖晃も駆けつけて2人で書いた曲を演奏します。ピアノにシャンソンの伴奏ではベテランの中上香代子。ベースは西村直樹(from 上々颱風)、パーカッションはナナ・ヴァスコンセロスの弟子、渡辺亮。通訳は私アツコ・バルーが30年前と同じように務めます。
13日(日)は、『 Le Pollen』に参加したムーンライダーズのメンバー かしぶち哲郎、鈴木慶一、武川雅寛らが集まり、同窓会のノリで当時の映像を一緒に見たり、話をしたり一緒に作った曲をアドリブ演奏したり、うちとけた仲間の集まりです。まだまだサプライズゲストが出てくる可能性ありです。
そのほか5月2日(水)にはムーンライダーズのメンバー 岡田徹の企画イベント、5月27日(日)には同じくムーンライダーズの武川雅寛 のソロライブと続きます。
5月はサラヴァ、ピエール・バルーの関連ライブが4つ続きます。新しい才能があり、ずっと続く友情があります。音楽の底流にはフランスやブラジル、日本の昔から流れる音や香り。それらが入り混じり、新しい表現が加えられて行く。そんな醍醐味をぜひ味わってください。
ピエール・バルー スペシャルライブ2012
2012年5月12日 (土) 18:00open 19:00 start
前売り 5,500円(1drink付)、当日 6,000円(1drink付)
ピアノ:中上香代子
ベース:西村直樹(from 上々颱風)
パーカッション:渡辺亮
ゲスト:大貫妙子 清水靖晃
ピエール・バルー ル・ポレン30thAnniversary 同窓会~トーク&ライブ
2012年5月13日 (日) 14:00 open 15:00 start 18:00 end(予定)
前売り 5,000円(1drink付)当日 5,500円(1drink付)
出演:ピエール・バルー、かしぶち哲郎、鈴木慶一、武川雅寛ほか
いずれも
会場:Saravah 東京 東京都渋谷区松濤1丁目29-1 渋谷クロスロードビル B1
Tel.03-6427-8886