「心の森」を描く、Rayonsの記念すべきファースト・アルバム

(2015.10.01)

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不安と安堵が同時に押し寄せる

森の中で目を閉じ耳を澄ますと、川のせせらぎや鳥のさえずり、澄みきった空気の振動、そして野生動物の警告音や不穏な天候の兆しまでもが、この静かな世界の中で調和していることに気づく。

Rayonsの記念すべきファースト・アルバム『The World Left Behind』を聴いていると、そんな人里離れた森の中に迷い込んでしまったような、不安と安堵が同時に押し寄せてくる。前作『After The Noise Is Gone』は、彼女の内面世界を表したような密室的な音作りが印象的だったが、今作ではピアノを中心とする音像に、まるで森のような奥行きや広がりが加わっている。そして森の中へと一歩踏み出した彼女の不安や安堵に、気づけばこちらも深く共鳴してしまうのだ。

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天使の歌声を持つPredawnも参加

4曲で参加したPredawnの声に導かれ、森の奥深くへと分け入ってみる。するとそこには、クラシックや現代音楽、ジャズ、ソウル、そしてポップミュージックまでをも取り込んだ、Rayonsの芳醇な音楽性が広がっている。軽快に跳ねる鳥の足音のような「Playground For Birds」。凍てついた森に差し込む陽光を思わせる「Frozen Forest」。バルザックの「谷間のゆり」にインスパイアされた歌詞がユニークな、「Atarashii Hito (A Letter From Nowhere)」。敢えてビートを外すなど一貫したトーンを保ちつつも、様々な表情を持った楽曲たち。触れた瞬間、崩れ落ちてしまいそうなほど張り詰めた緊張感と、どこか懐かしく大らかな雰囲気が不思議と調和しているのも、本作が深い森を想起させる要因の一つだろう。

そうしたイメージは、2011年の台湾映画『セデック・バレ』からもきているという。発展していく社会とは距離を取り、自然の中で小さな群れで暮らす人々を描いた作品だ。

他者の存在を感じながら、完全に閉じるのでもなく、無理に開くのでもなく。「取り残された世界」という意味を持つ本作が描くのは、この息苦しい現実世界で私たちが自身と向き合い、本来の姿を取り戻すために、必要な場所(心の森)なのかもしれない。

『The World Left Behind』
Rayons

2015年9月2日発売 2,484円(税込) レーベル:flau

4_album

【Track list】

01 Playground For Birds
02 Frozen Forest
03 Dancing Under The Filtered Sun
04 Waxing Moon
05 From Paradise Past
06 Can’t See Through The Fog
07 It Was You
08 Impression
09 Immortal Island
10 あたらしい ひと (a letter from nowhere)

Predawnの自主レーベルからリリースされたミニアルバム「After The Noise Is Gone」が話題を呼んだ現代音楽家・中井雅子のソロプロジェクトRayonsが記念すべきファースト・アルバムをリリースします。フルート、クラリネット、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロなど様々な楽器をエレガントにまとめ上げ、70年代のフランス映画のサウンドトラックを現行のポスト・クラシカル・マナーで発展させたかのような、鋭い美しさを讃える全10曲。盟友Predawnが4曲で参加し、すでに彼女のライブでも披露されている「Waxing Moon」や「It Was You」ではドラマティックなピアノ四重奏でPredawnのボーカルの新たな魅力を引き出しています。感情をダイレクトに揺さぶる情熱的なピアノソロ、 気品に満ちたストリングスの調べ。閉じられた世界をテーマに、そこに生きる少女のピュアネスを女性らしい繊細さと凛とした力強さで表現したファースト・アルバムです。

Rayons
現代音楽家・中井雅子のソロプロジェクト。音大にて現代音楽、クラシック等、様々な作曲を学び、卒業後、音源製作を中心に据えた活動を開始。作曲、ストリングスアレンジ、ピアノ演奏等を行う。彼女が紡ぎ織りなす世界は、ファンタジーとダークネスな感情が重なり共鳴し特有の美しさとノイズを生み出している。これまでにSylvain Chauveau、James Blackshaw、Ulises Contiらと共演。今秋ファースト・フルアルバム『The World Left Behind』をflauよりリリース。

Rayons with Predawn ‘The World Left Behind’ Tour

10/4 (日) 東京・北とぴあドームホール(北区王子1-11-1)
open/start 17:00/17:30 adv./door 3,500 / 4,000yen
共演: Predawn、Radicalfashion
visual: TANGRAM 空間演出:Nomena 照明:渡辺敬之
PA: 福岡功訓(Fly sound)

11/10 (火) 神戸・旧グッゲンハイム邸
open/start 19:00/ 20:00 adv./door 3,000 / 3,500yen (+1D)

11/11 (水) 愛媛・和光会館(旧和光幼稚園)
open 19:30 / start 20:00 adv. 3,000 / door 3,500yen

11/13 (金) 北九州・BRICK HALL 
open/start 19:30 / 20:00 adv./door 3,000 / 3.500yen (+1D)

11/14 (土) 松江・清光院下のギャラリー
open/start 18:00 / 19:00 adv./door 3,000 / 3.500yen (+1D)

11/15 (日) 広島・LOG
open/start 17:00 / 18:00 adv./door 3,000 / 3.500yen (+1D)

12/6 (日) 浜松・鴨江アートセンター301
open/start 18:00 / 18:30 adv./door 3,000 / 3,500yen(+1D)