Another Quiet Corner Vol. 34ノーマ・ウィンストン&ヒルデ・ヘフテの企画盤リリース。隠れた名曲たち。ふたりのアーティストにフォーカスした新しい試み。

(2014.06.19)

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ノーマ・ウィンストンとヒルデ・ヘフテとコアポート。
「ひとりのアーティストの作品のみをコンパイルする」というクワイエット・コーナーの新シリーズを紹介します。第1作はノーマ・ウィンストン、2作目はヒルデ・ヘフテ。熱心な音楽ファンからとても信頼が厚いヴォーカリストたち。もしかするとあまり馴染みがない名前かもしれませんが、自信をもっておすすめできる素晴らしいアーティストです。

この企画がスタートしたきっかけは、元ヤマハ・ミュージックのディレクター高木さんと一緒に制作した『寄り添う音、重なる想い』というコンピレーション・アルバム。高木さんとはそれ以前にも『In The Sunshine』、『Saravah For Quiet Corner』、『Pastoral Tone』といくつものアルバムを一緒に制作していて、昨年コンピレーションをつくったとき、「次回は単体のアーティストにもスポットを当てたいですね」と意気投合しました。

大好きなジャズ・ヴォーカリストの大好きな曲だけを集めて、クワイエット・コーナーらしい作品になれば…と。そんなことを考えているうちに、『寄り添う音、重なる想い』の中で重要な一曲となったノーマ・ウィンストンが、まさしくそれに相応しいのでは!と思い始めました。さらにノーマだけではなく、同時にほかのヴォーカリストを紹介することで、よりクワイエット・コーナーの世界観を深く伝えられると思い、姉妹作としてヒルデ・ヘフテを選びました。

このアイデアをカタチにしようというまさにそのとき、高木さんから新たに「コアポート」というレーベルを設立するお知らせが届きました。こうしてふたりで考えたアイデアは、レーベル第一弾として発売されることになったのです。

  • ノーマ・ウィンストン
    ノーマ・ウィンストン
  • ヒルデ・ヘフテ
    ヒルデ・ヘフテ
ノーマ・ウィンストンはイギリス出身のジャズ・ヴォーカリストで、70年代からジャズ・ロック・シーンのセッション・ヴォーカリストとして名を馳せましたが、それ以降はドイツのECMレーベルを中心に名作を残しています。歌うというよりは声を発する(スキャット的)ような表現力の持ち主で、実際にCDのクレジットを見ても、「Vocal」ではなく「Voice」と書かれています。そのため技巧派なイメージが強く、ヴォーカルものを好むリスナーは手に取りにくかったようです。けれど彼女の魅力はそれだけはなかったのです。実は90年代に入ってから自身のレーベルに、地味ではあるけれど、とても人間味が溢れる、優しい雰囲気の作品を録音していたのです。しかしこれらは輸入盤でしか発売しておらず、店頭に並ぶこともほとんどありませんでした。それならクワイエット・コーナーの視点を通して、新たに彼女の音楽を再発見できればと思い、この『London In The Rain』を選曲しました。タイトルを見てもわかるように、“雨”をイメージした、この時期に聴きたくなるような穏やかな曲が並んでいます。
ヒルデ・ヘフテはノルウェイ出身のジャズ・ヴォーカリストで、北欧ジャズ・シーンではよく知られている存在です。2012年に、僕もメンバーの一員であるbar buenos airesのコンピレーション『bar buenos aires – Viento, Luz, Agua』の中に、彼女がカヴァーしたビル・エヴァンスの「Children’s Playsong」が収録されたので、もしかしてご存知の方も多いかもしれません。ヒルデも「Children’s Playsong」以外にたくさんおすすめしたい曲があったので、ノーマの次は彼女だとすぐに決まりました。タイトルは『Memory Suite』。今では入手困難である、ビル・エヴァンスのカヴァー集『The Music Of Bill Evans』の曲を中心に、軽やかなボサノヴァや、気品が漂うストリング・アレンジを施した曲、チェット・ベイカーのレパートリーを歌った曲など、ノーマよりバラエティに富んだ内容ですが、まるで一篇の短編小説をめくるように、色とりどりな場面が思い浮かんできます。ヒルデ本人も、ジャケットとタイトルを気に入ってくれて、この企画にとても共感してくれました。

『London In The Rain』と『Memory Suite』は、先に書いたように言わば姉妹作のような関係です。それぞれ国は違いますが、メランコリックな内省感と柔らかな音の風合いに、不思議と同じ手触りや空気を感じます。そして単なる編集盤にならないように、彼女たちの親密な表情を切りとって、一枚のオリジナル・アルバムを手掛けるような気持ちで制作しました。一口にジャズ・ヴォーカルといってもさまざまですが、クワイエット・コーナーではこういった、叙情的というか、“わびさび”のあるヴォーカリストをいつも紹介しています。あなたがもしアン・バートンのような、静かな語り口が似合うヴォーカリストが好きなら、ぜひ聴いていただきたい連作です。ノーマもヒルデも、このようなまとまった形になり日本で紹介されることは初めてです。一人でも多くの音楽ファンに届くことを願っています。

London In The Rain
Norma Winstone(ノーマ・ウィンストン)
2014年5月29日発売 2,000円(税込) レーベル:コアポート

【Track List】

01. The Music That Makes Me Dance
02. Everybody’s Song But My Own
03. I Dream Too Much
04. Two Kites
05. Prelude To A Kiss
06. A Wish
07. Alice In Wonderland
08. I Have Dreamed
09. Remind Me
10. The Heather On The Hikk
11. Manhattan In The Rain
12. Come Sunday
13. Celeste

Memory Suite
Hilde Hefte(ヒルデ・ヘフテ)
2014年6月27日発売 2,000円(税込) レーベル:コアポート

【Track List】

01. Memory Suite : Prologue/Storyline
02. Waltz For Debby
03. Children’s Playsong
04. Tea For Two
05. For Monica : At Angora En Brygga
06. Peri’s Scope
07. Liten Fugl
08. Telefonsangen
09. Gostoso
10. Gutten Og Ballen
11. Just Friends
12. Summer Wishes, Winter Dreams
13. The Shining Sea
14. I Do It For Your Love
15. If You Could See Me Now
16. Answer Me
17. My Bells