『bar buenos aires -flor-』リリース。昼下がりの窓辺に佇む小さな花のような、儚い音を束ねて。

(2016.01.23)

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bar buenos aires 第5集のコンピレーション・アルバムがリリースされました。
「花」をテーマに自然の中に優しく響く美しい音楽を集めた作品。淡い色合いの花を集めたリースが、このアルバムの印象を物語っています。企画監修と選曲を手掛けた吉本宏さんに紹介していただきます。

“愛と微笑みと花”があれば心穏やかに。 

“愛と微笑みと花”。これは、アントニオ・カルロス・ジョビンとニュウトン・メンドンサが共作した「Meditação」(邦題:瞑想)の歌の中に登場する言葉です。この言葉は、ボサノヴァという美しい音楽がもつ世界観を象徴していると思います。人を愛し、微笑み、花を想う。どんなに気持ちがざわついていても、“愛と微笑みと花”という心もちがあれば、諍いもなく、誰もが心穏やかに過ごすことができるのではないでしょうか。

bar buenos airesの今作のテーマは「flor」。スペイン語の“花”という言葉をテーマに、世界の繊細で余韻のある音楽を集めました。花というと、花畑に咲きみだれる色とりどりの花や、きらびやかに飾られた大ぶりの生け花などのように色彩豊かで鮮やかな印象がありますが、bar buenos airesの音のイメージの源泉は、清らかで凛とした一輪挿しの花の佇まいや、野に咲く小さな可憐な花の表情や、緑を寄せ集めたリースの淡い色合いなど、例えるなら、英国のシンガー・ソングライターのヴァージニア・アストレイのファースト・アルバムのジャケットに描かれた草花の趣といったところでしょうか。

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アルゼンチンからの書き下ろし作品「Flor」。

フランスのギタリストのミジャ・フィッツジェラルド・マイケルは、夭折したシンガー、ニック・ドレイクの歌を透明感のあるギターの音色で繊細にカヴァーしています。その聡明な剣士のように音を響かせる演奏には、真っ白な紙に一筆書きで描かれた草花の線画のような美が宿っています。野に咲く小さな草花がそよ風にゆられるような優しいアンサンブルを聴かせるのは、ブラジルのギターの4重奏クアルテート・マオガニ。ヴィニシウス・ヂ・モラエスのワルツ作品を、風の中でゆれる4枚の小さな花びらが折り重なるように、異なる種類のギターを巧みに響き合わせます。西アフリカの民族楽器を鳴らすコラ奏者のバラケ・シソコから、親指ピアノのムビラを演奏するアルゼンチンのアレハンドロ・フラノフ、南米の弦楽器チャランゴを奏でるダミアン・ベルドゥンへのつながりは、様々な国のめずらしい花や蝶を集めた艶やかな画集を眺めるような趣です。インドネシアの奇才インドラ・レスマナが手掛けた映画のサウンドトラック『アドリアナ』からのソロ・ピアノ作品には、草花が時を経ながら美しく枯れてゆくような切なさを感じさせます。

今回のエンディングには、ルス・デ・アグアのピアニスト、セバスティアン・マッキがbar buenos airesのアルバム収録のために新たに書いた楽曲「flor」を収めました。bar buenos airesの3作目『星の輝き』に収録したカルロス・ギーレの「estrella」にも通じる、名もない花に向けた愁いを帯びた美しい楽曲です。

 
  • flowers from ririnono
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部屋に花を飾るように、音楽をかける。

今作は、これまでのbar buenos airesの4作のコンピレーションの音のエッセンスもちりばめられています。アルゼンチンの広大な大地に響くようなアコースティックな楽器の音色、風や光や水を集めたような透明感のある音の広がり、静かな星空のような澄みきった空気、繊細なピアノが奏でる切ない情感。さらに、これまでbar buenos airesレーベルからリリースした何組かのアーティースト作品からのダイジェスト的な楽曲を織り交ぜ、bar buenos airesの音の世界を描きます。

部屋に花を飾るだけで、暮らしにはちょっとした潤いや彩りが感じられるようになります。昼下がりの窓辺に佇む小さな花のような儚い音を、優しいそよ風が静かに運いでいきます。

 

V.A.『bar buenos aires flor(バー・ブエノスアイレス 〜フロール〜)』
2016年1月21日発売 ¥2,300(税別)
レーベル:bar buenos aires

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【Track List】
01. Time Of No Reply / Misja Fitzgerald Michel
02. Valsa de Eurídice / Quarteto Maogani
03. Turn Out The Stars / Riccardo Fioravanti Trio
04. Asa Branca / Ballaké Sissoko
05. Gandanga / Alejandro Franov
06. Jú Y Las Mariposas / Damian Verdún
07. Hommage / Riccardo Zegna
08. Tudo Por Um Ocaso / Rogério Botter Maio
09. Maria e il Mare / Daniele di Bonaventura – Giovanni Ceccarelli
10. Ciranda de Sonhos / Duo Taufic
11. Mayo / Sebastián Macchi – Claudio Bolzani – Fernando Silva
12. São Paulo / Lucas Nikotian & Sebastián Macchi
13. Come São Lindos Os Yougius (Waltz For Bebel) / David Gordon Trio
14. Clue / Indra Lesmana
15. Flor / Sebastián Macchim(新曲・完全独占収録)