– トミ・レブレロ、11月の再来日に寄せて –ブエノスアイレス、音楽の街で体感
シンガー・ソングライターたちの輪

(2011.10.21)

RONDA DE COMPOSITORES

2011年5〜6月、アルゼンチン文化見本市への招待を受けてブエノスアイレスを訪れました。東京・神楽坂でセレクトCD店を営む私には、店に陳列しているCD作品を作ったミュージシャンたちの素顔をより良く知るための絶好の機会。一方でティーンエイジャーの頃より自作の唄をバンドで、デュオでと披露して来て、言葉の通じない場所でどういった受け止められ方をするのかという表現活動上の興味も多大にありました。

2010年末に初来日を果たしたトミ・レブレロとニコラス・ファルコフ。滞在中はこの2人とその家族の絶大なるサポートを得て、『フリオズ・バー』という知る人ぞのみ知るお店でのアンプラグド・ライヴや、そこに遊びに来ていたバイオリン弾きとしても活躍するシンガー・ソングライターのパブロ・グリンホトが自身のショーに前座で起用してくれたり、と楽しい日々が続きました。

その中で「これは!」と思ったイベント企画がひとつ。これが「RONDA DE COMPOSITORES (作曲者たちの輪)」なるものです。ブエノスアイレスのインディペンデントな音楽シーンには、フォルクローレなどのルーツ音楽のリズムを使いながら、いまの若者の言葉で自作の曲を作り演奏するというシンガー・ソングライターが本当に数多く存在します。

あるミュージシャンが隣国ブラジルを訪れた時に、テーブルを囲んでサンバを演奏するパゴーヂを観てひらめいたのが、この企画。テーブル・パゴーヂではサンバの有名曲をメドレーで繋いで皆で唄うというものですが、ブエノスアイレス編ではシンガー・ソングライターたちの自前のレパートリーでこれをやろうというのです。SONIDO AMBIENTE TVというwebでミュージシャンのパフォーマンス映像を公開するプロジェクトの中心、カルラ・サンギネッティという女性が中心となってイベントを企画、会場は決まってコルドバ通り4379 にある『VUELA EL PEZ (=魚の飛翔)』というアート・クラブです。

 

RONDA LEBRERO 1st Stage

6月10日。この日は今秋11月に再来日ソロ・ツアーを敢行する予定のトミ・レブレロがホストを務める RONDA LEBREROの日。ステージとなる場所にもソファを置き、徐々に集まって来るお客さんたちの中心で輪を作り、ノン・マイクの演奏をしてゆきます。まずは、トミ・レブレロともうひとりのバンドネオン仲間がデュオでインストゥルメンタルを一曲、そして後は時計回りに一曲ずつお披露目をしてゆきます。

スチール弦のギターでフォーキーに演ったのが、マルティン・レズニック、アルヴィ・シンガー、そしてナイロン弦のギターでパブロ・グリンホト、フアナ・モリーナのバックで来日したこともあるエセキエル・ボーラのギターはさすがの腕前で、フォルクローレのトラッドに則った演奏を見せたパブロ・エチャニス共々、聴衆を唸らせていました。トミ・レブレロやリサンドロ・アリスティムーニョのバックで良い味のEギターを弾いているカルリ・アリスティーデは、コンガなど様々な楽器を手にセッションを盛り立てます。

セッションといえばパーカッションで様々なアルバムに参加しているファクンド・フローレスのカホンも見事でした。彼は出来上がったばかりというソロ・アルバムから、レキント・ギターで弾き語りも。

いよいよ私の番ですが、日本語で唄っているにも関わらず、ミュージシャンの輪が極当たり前のように演奏に参加してきてくれます。この時ほど感激したことはありませんでした。トミ・レブレロの友人である女性シンガー・ソングライター、フリエタ・アロンソも飛び入りでフェミニンな雰囲気の楽曲を披露、男だらけのRONDA LEBRERO に華を添えてくれました。


 

RONDA LEBRERO 2nd Stage

テーブルには赤ワインのボトルと本場イタリアに匹敵するといわれるピッツァ。1時間半ほど続けて演奏した後、休憩を挟んで第二部へ。ラジオ番組の収録を終えたニコラス・ファルコフや、本来は鍵盤を弾き歌うシンガー・ソングライターのマルセロ・エスキアーガが加わり、再度演奏が始まると、おろしたての曲を始めようとしたこの日のホスト、トミ・レブレロに皆からリクエストが飛び交います。

「Cuando a Caballo!」「Siete Dias !」、皆が唄えるまでに愛されるトミ・レブレロのオリジナル楽曲たち。聴き入るものもあれば、満ち足りた顔をして共に唄う多くの仲間たち。演奏の輪からその外郭へ、場の空気は幸福感に包まれてゆきます。今回ひとりで来日するトミ・レブレロ、メランコリアを充分に含んだ音楽で、ユーモアあるパフォーマンスで、観るものを満ち足りた笑顔にしてくれることでしょう。こうして夢のような一夜は更けていきました。

RONDA DE COMPOSITORES は月に一度、定期開催されていますので、ブエノスアイレスを訪れる機会があれば、VUELA EL PEZ のページをチェックして訪れてみて下さい。

VUELA EL PEZ club de arte
AV. Cordoba 4379, 1414 Buenos Aires, Argentina


TOMI LEBRERO JAPAN TOUR 2011
11月04日 (金)福岡 カフェ&ギャラリー・キューブリック
11月06日 (日)大阪 afu (会ふ) 心斎橋アメリカ村
11月11日 (金)京都 Cafe Bibliotic Hello!
11月12日 (土)姫路 Hummock Cafe
11月13日 (日)名古屋 Cafe Dufi
11月15日 (火)東京 原宿 Vacant  「FOUNDLAND」出演
11月20日 (日)東京 神楽坂 毘沙門天善國寺書院


主催:大洋レコード 
協力:ラティーナ、bar buenos aires、modest launch 、publik 
後援:アルゼンチン共和国大使館
お問い合わせ:大洋レコード http://taiyorecord.com/
Tel.03-3235-8825