Par-delà le Pont – 14 - ナシオナル橋(Pont National)東の端で、パリの内と外を眺める
ナシオナル橋。

(2012.01.13)

Bonne année ☆
明けましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
みなさまにとって、幸せいっぱいな一年になりますように。

セーヌ川に架かる、パリ市内30本の橋を追っていくこの連載。今回からはパリの東に移って、「ベルシー/オーステルリッツ駅地区」シリーズを始めます。前回までの、パリの中心部の橋を扱ってきた「マレ/シテ島地区」シリーズより少し落ち着いた、観光名所として目を引くというよりは実用的な印象の橋たちをご紹介することになりそうです。

1回目の今日渡るのは、東の一番端にあるナシオナル橋。どうぞご一緒くださいませ。

左岸、西側のふもとから見たナシオナル橋。中心部の橋とはかなり趣が違います……
パリの東側の玄関

上流からセーヌ川を下ってパリ市内に入った時、一番初めに出会うのがこのナシオナル橋です。

セーヌ川を遊覧する観光船も、もう少し手前で西へ引き返してしまうものばかりで、ナシオナル橋まで来ることはありません。そして、この橋が見える範囲に、観光スポットのようなものはありません。そういう意味では、パリを訪れる人にとってあまり見かける機会のない橋とも言えるかもしれません。

橋には5つのアーチがあって、全長は188メートル。完成した1853年当時はナポレオン3世橋と呼ばれていましたが、1870年に現在の名前になりました。

以前は、橋の脇にプチット・サンチュールという鉄道が走っていました。1990年代に休止されて今は廃線になったんですが、橋の上にはまだ錆びついた線路が残されていて、雑草やらゴミやらと一緒に放置されています。また、橋の下には「gare(駅)」と書かれた建物も見え、かつての貨物列車が行き交っていた橋や周辺の風景を想像させてくれます。

幅を拡張するための工事中で、橋の上にはかなりの車の列が。2011年に工事が終わり、前より渋滞は解消されたかも。
広大な都会の森につながる橋

橋の周り、徒歩数分圏内くらいには、それほど目立った場所はありません。橋の西側、左岸に降りてすぐ見つけられるパリ第七大学くらいでしょうか。ここは理学系に強く、数学では特に有名な大学です。

大学に行ってもなあ……しかも数学かよ……、ということで、少し足を延ばしてみましょうか。右岸に渡って30分と少し歩いてみると、ヴァンセンヌの森に着きます。森の中には4つの湖があって四季の風景を楽しめるだけでなく、競馬場、自転車競技場、それから上野動物園とほぼ同じくらいの大きさの動物園もあり、お散歩するにもデートするにも悪くない場所かもしれません。

ところでヴァンセンヌの森は、995ヘクタール。「ニューヨークのセントラルパークの3倍の広さ」という比較をよく聞きますが、東京で考えると新宿御苑の17倍、日比谷公園の62倍の広さという、ちょっと勝負にならない感じになります。まあ、何の勝負なの?って気もしますが(笑)。

都会の中にある大きな森、というのは何とも不思議な感じがします。ナシオナル橋にいらっしゃる機会があったら、そして気が向かれたら、ヴァンセンヌの森にもぜひ行ってみてくださいね。

トルビアック橋へ

ナシオナル橋、いかがでしたでしょうか。
次回は、ナシオナル橋の西に架かる、トルビアック橋を渡ります。

Pont National
ナシオナル橋

竣工:1853年
長さ:188.5m
幅:39m(2011年までの工事で拡張)
建築家:ウージエーヌ・クシュ
形式:アーチ橋
素材:煉瓦
最寄駅:Porte de Charenton駅(メトロ8号線)、Cour Saint-Émilion駅(メトロ14号線)
付近の観光スポット:ヴァンセンヌの森