from ヘルシンキ - 3 - 「60歳になったとき、どんな生活をしていたい?」by Marja

(2010.02.18)

「フィンランド女性に学ぶ 幸せ力」File.02
Marja Saario(65歳)

インタビュー開始時、
お茶目な笑顔で「ハジメマシテ、マリアデス」と、
日本語で挨拶をして驚かせてくれたMarjaさん。
自らの性格を「好奇心のかたまりで、
ポジティブ」と紹介。
働きながら3人のお子さんを育て上げ、
63歳で退職後は、
スポーツや外国語学習に取り組む一方、
8人の孫をお世話する
「おばあちゃん」業も楽しんでいます。
人生の大先輩に学ぶ幸せ力、お届けします。

History:3人の子育てとフィンランド福祉政策発展の歴史。

フィンランドは、今でこそ、子どもを育てやすい国になりましたが、
私が1人目の子どもを出産した頃は、
全くと言っていいほど国の助けはありませんでした。
経済的に育児に専念できる状況ではなく、働き続けなければならなかったので、
あれこれ摸索しながら仕事と育児を両立していました。
地域の人々と協力して互いの子どもを順番でお世話したり、
女性上司が良き理解者で、在宅やフレックスタイムで勤務させてもらえたことが、
大きな助けとなりました。
そうこうしているうちに、女性が積極的に政治に参画することで、
フィンランドの福祉政策は徐々に拡大。
3人の子育てをする過程で、福祉政策発展の歴史を目の当たりにしてきました。
今では、3年間の育児休暇を取得する権利と、育児休暇後に元の仕事に戻る権利が
法律で保障され、自治体の保育サービスも充実。
自分の娘世代の育児を見ていると、ずいぶん子どもを育てやすい国になったと実感します。

 
*Marjaさんの子育てヒストリー

1968年 大学卒業後、就職。
1970年 中学校時代の同級生と結婚。
第1子誕生 当時育児休暇は3ヶ月間しか認められなかった。

その上、地域に保育園はなかったので、
近所の年配女性にベビーシッターを
依頼して、生後3ヶ月で仕事復帰。
第2子誕生 法律が変わり1年間の育児休暇を取得できるようになった。

近所の女性が運営していた「家庭保育」サービスに子ども2人を預け、
第2子生後1年で仕事復帰。
第3子誕生 法律が変わり3年間の育児休暇を取得できるようになった。

育児休暇期間を利用し、自分の子どもを育てながら、

近所の子どもを預かる「家庭保育」サービスも運営した。

仕事復帰する頃には自治体の保育サービスが充実。

地域の保育園に子どもを預けて仕事復帰。

長年、保険組合のカスタマーサービス業務に従事。
報告書や提案書の作成は在宅業務にし、
フレックスタイム勤務も
許可してもらうことで、働きながら3人の子どもを育て上げた。
2007年 63歳で退職。

 

Activity:いくつになっても、学ぶことは冒険!

退職する数年前から、ヘルシンキ市が運営する成人教育センターで
スペイン語とエストニア語を学び始めました。
スペイン語学習に取り組んだきっかけは、スペインのキリスト教の聖地を歩いて訪ねる
「巡礼の旅(「El Camino=道」と呼ばれている)」をしたいと思ったから。
その目標を達成した今も、スペイン語に魅せられて勉強し続けています。
エストニアについてはフィンランドの隣国で、親戚が住んでいることから興味を持ち、
エストニア語を学び始めました。
外国語を学ぶおもしろさは、言葉を通してその国の文化や歴史を
より深く理解できること。学ぶたびに、新しい発見がいっぱい。
いくつになっても、学ぶことは何よりの冒険だと感じます。
体を動かすことも大好きで、スキー、水泳、寒中水泳、カヌーなど楽しみます。
退職して分かったことは、家でソファに座って孫が遊びに来るのを待つだけの生活では、

エネルギーがわいてこないということ。
自然の中で体を動かすことが、私にとっては大事なエネルギー補給になっています。

Marjaさんがスペイン語を学ぶヘルシンキ市の成人教育センター。

 
Happiness:幸せであるために欠かせない3つのこと。

中学校時代の同級生である夫とは、共通の趣味は何一つないけれど、
お互い健康で一緒にテレビを見て笑えることは幸せです。
隣近所に住む孫たちは次々に訪ねてきます。
8人の孫の遊び相手をするのはエネルギーが要りますが、必要とされるのは喜びです。
私は幸せであるために、3つのことが大切だと思っています。
心身ともに健康であるよう心がけること。
1人か2人でいいから本当に信頼できる親友をもち、大事にすること。
自然の中で静かに過ごす自分だけの時間をもつこと。
家族と幸せに生活するためにも、この3つは私にとって欠かせないことです。

お孫さんたちの写真。

 
Dream for next 10 years:世界を旅したい!

日本、中国、南米を旅してみたいと思っています。
特にアジアは私にとって未知の世界。興味津々です。
でも、最近気づいたことは、退職するとお金がすぐなくなってしまうこと!
それでも、夫と船でジブラルタル海峡まで旅行しようと約束しています。

Marjaさんは船の旅が大好き。

 
Message:60歳になったとき、どんな生活をしていたい?

私の時代はワーキングマザーへの国の支援策はほとんどなかったので、
キャリアアップよりも、家庭生活を優先しました。
周りの人に、「給料が減ってもいいの?」と聞かれたこともありましたが、
仕事量を減らして、家庭生活を優先しました。
今は時代が変わり、価値観が多様化し、国のサポートも充実。
色々な生き方、働き方が選べるようになりました。
仕事で自己実現すること、家庭生活を重視すること、両方を求めること。
若い人たちには、好きなことを思いっきりしてほしいと思います。
たくさん学ぶことで、国や社会を変えていくことも可能です。
ただ、1つだけ伝えておきたいのは、
60歳になったときどんな生活をしていたいか、
1度頭のすみで思い描いてみてほしい、ということ。
老婆心かもしれませんが、自分の人生にとって大事なものが何か、
考えるヒントになるかもしれません。

 

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インタビューを終えると、「これからクロスカントリースキーをするのよ!」とMarjaさん。
写真で見たお孫さんたちに負けないくらい、目をきらきら輝かせていました。

Marjaさんがお孫さんたちとつくったムーミン風雪だるま。

※この内容は、2010年2月10日取材当時の情報です。