from ミュンヘン – 7 - 世界一の尖塔を持つ大聖堂に登ってみた。

(2010.11.01)
上がるにつれ細くなる構造上、階段は後半がきつい。

オクトーバーフェストが終わるとあっという間に11月、ミュンヘンでは日本より一足早い冬がもう近くまでやってきました。さて今回は、先日週末を利用して観光をしてきた人口12万人の小さな街、ウルムを紹介しようと思います。ミュンヘンから西方面に電車で1時間半ほどのその街には、2つの都市が内在しています。この2つの都市というのは、ドナウ川を境に南側はノイウルム市(ミュンヘンが州都のバイエルン州)と北側はウルム市(シュツットガルトが州都のバーデン=ヴュルテンベルク州)で、観光のメインは北側のウルム市にあります。ただ、州が分かれてはいても、徒歩で渡れる橋でつながっているのでミュンヘンから日帰りでこの両都市を気軽に巡ることができます。

橋を渡ってノイウルムからの眺め。周りに高い建物はなのですぐに目に付く。

ぼくがこの街のことを知ったのは、先日友人から「私の出身はウルムで世界一の高さの尖塔を誇る大聖堂がある街」との話しがあったときです。ドイツで大聖堂と言えば、世界遺産にもなっているケルンやアーヘンなどが有名ですが、ミュンヘンからは離れています。一方でウルムの大聖堂は、高さこそ世界一と立派なものですが世界遺産にも登録されておらず、ドイツ人にも実際あまり知られていないです。そこでこの近距離にある世界一の高さの大聖堂とはいかほどのものなのかと行ってきました。

大聖堂の高さは161.53メートル。もちろんエレベーターはありません。足で一歩一歩768段と覚悟はしていましたが、後半は正直しんどいです。階段を上るということ以上に、狭いらせん階段を登っていると目が回るのです。視線をどこに向ければよいか試行錯誤しながら上へ上へと歩を進めました。ぼくの場合は、あまり足元を見ずに少し遠くに視線を置き、外の景色を見つつ登るという方法がよいようでした。やっとの思いで登ること15分ほど、頂上と思しきところに辿り着きました。息を整えてからゆっくり外を眺めようと思っていたのですが、ふと見上げるとまだ上へ続く階段が……。そして登り終えた人が結構降りてきます。ここからは双方向通行、そしてさらに細くなるらせん階段、すれ違う際には壁に張り付くような姿勢をとりながら登らざるをえません。もくもくと登っても一向に頂上らしき気配は感じられず、おかしいなと思っていましたが、後になり、その理由が判明。実は頂上だと思っていた場所は560段目のところだったようです。

尖塔の先から見えるドナウ河。ドイツは山が少ないのでどこまでも平地が広がります。

それでもようやく頂上に到着し、下界に広がる360度のパノラマを見るころにはそんな疲れも吹き飛んでしまいます。この日はあいにく霧が晴れた直後でしたが、視界がよければ遠くアルプスも見渡すことができるようです。ドバイのブルジュ・ハリファを筆頭に世界中では500m以上の超高層ビルの建設ラッシュ、それらと比べると見る影もありませんが、それでもエレベーターがない昔ながらの大聖堂は、個人的評価だと一度登る価値はあります。

街の至るところで目にするスズメのオブジェはどれも個性的。

 
ウルムの大聖堂以外の見所というと、あちこちで見かけるスズメのオブジェとギネス登録されている建物でしょうか。まずスズメのオブジェは数が多くてびっくりします。普通の市内観光のつもりが、途中から「スズメを探せ!」という指令のもと観光している気分になってきます。

このスズメたちとウルムの関係、ウルム出身の友人の話によると……、その昔、大聖堂を作るために職人が材木を横向きにして運び入れようとしたところ、材木が長いため門にぶつかってしまい通り抜けることができません。どうしたものかと思案しつつ空を見上げたところ、小枝をくちばしにはさんだスズメが飛んで行くのに気付きました。そのスズメを見ていると、木々を通り抜ける際、横向きにしていた小枝を縦向きにくわえ直したのでした。そこでひらめいた職人は、材木を横ではなく縦にしたことで門を通り抜けられたとさ。それ以降、スズメに感謝するという意味を込めてオブジェを作ったそうです。

じっくり見てください。傾いているのがお分かりになりますか?

もう一つの見所である世界一傾いたホテルとしてギネスブックに登録されている家は、現在も現役で普通に宿泊ができるようです。外観は確かに傾いていましたが、室内もビー玉が勢いよく転がっていくのでしょうか? これだけ傾いても立っていられるのは、もちろんしっかりとした枠組みのせいでしょうが、日本のように地震がないのも理由の一つのように思いました。もっとも、枠組みがしっかりしていれば、傾くことなどなかったのでしょうが……(笑)。

小さな街なので見所はさほど多くはないですが、ミュンヘンから日帰りできる街としておすすめです。

 
世界一傾いたホテル: http://www.hotelschiefeshausulm.de/index.html